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2010年8月 6日 (金)

前川明人「空間」

002  長崎県に在住の歌人、前川明人さんの歌集「空間」を読みおえる。

 2002年、六法出版社・刊。

 著者は、「未来」「幻桃」所属。

 「空間」は彼の、「明るい驟雨」「褐色山脈」「黄砂の周囲」に続く、第4歌集である。

 著者は、長崎被爆を体験していて、被爆の語り部や反戦の活動を詠う歌も散見される。

 戦争体験や、戦後事情の風化などの体験から、狷介な心情を持つようで、一風変わった詠いぶりの作品もある。

 以下に6首を引く。

戦国の世に生きあらば磔の空より見たき蒼穹の果て

両手にてしかと握りし捧銃(ささげつつ)なにを希いて青春ありき

騎馬戦にわれの帽子を摑みたる男が空中戦で散りたり

手を離れ大空を舞う竹トンボ失速するまで茜見ていよ

たたみたる日傘を木蔭の石に置く妻の仕草の少し老いたり

くす玉の中より出でし鳩たちが五彩の紙片をけ散らして去る

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