尾崎迷堂「孤輪」
角川書店「増補 現代俳句大系」第4巻(昭和56年・刊)より、11番めの句集、尾崎迷堂「孤輪」を読みおえる。
原著は、昭和16年、泰文堂・刊。
自序、1000句、水原秋櫻子の「跋」を収める。
彼は天台宗の僧侶である。
このあたりの巻には、僧侶、結核患者、男勝りの女流、等の句集が多い。
なぜ労働者の句集がないか。当時、句作が大衆化していなかったのか、戦時下の句集で戦争吟の無い(あっても僅かな)句集を、後世に拾い上げようとすると、めぼしい本はそれらしか無かったのか。監修者の拘りもあるようだ。
この句集の著者は、密教・禅の僧であって、月並みな句はない。以下に5句を引く。
元日やたゞ世の常の筧音
文机は経机かな西行忌
夏の雲の移り易きを好みけり
秋風に衰へも無き大樹かな
湯を汲みて濡れし茶杓の冴えにけり
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