岡井隆「旅のあとさき、詩歌のあれこれ」
「岡井隆全歌集」(全4巻)の第Ⅳ巻より、最終編の「旅のあとさき、詩歌のあれこれ」を読みおえる。
表題のあとの添え書きに、「本書は三部構成の歌文集である。…旅の歌をまとめた第一章のみ収録した。」とある。
NHKBSテレビに出演する、オーストリア・ドイツの旅に生まれた作品である。斎藤茂吉の留学地にこだわる意味もある。
これで僕は、岡井隆の22歌集と、詩集などを読みおえたことになる。岡井隆のそれ以後の歌集について、僕がどうするか、今はわからない。
本編より、5首を引く。
懐石が進み小さな貝が出たうつむいたままなら聞き易く
戦争が近いといふかクリムトの美女がわたしから遠い程度に
ゼウス今し寂かに牛になるところくれなゐの角が角ぐんで、額(ぬか)
小羊の甘ゆるところ大天使うなだれ佇てり吾(われ)も吾(あ)も吾(あれ)も
降りるべき駅が近づく外套(ぐわいたう)が翼であつたことにおどろく
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