鈴江幸太郎「鶴」
初音書房「鈴江幸太郎全歌集」(1981年・刊)より、13番めの歌集「鶴」を読みおえる。
先の8月19日の記事(←リンクしてある)、「花筵」に継ぐ歌集である。
原著は、1977年、初音書房・刊。
370首、後記を収める。
吟行の歌の他、次男の自死を嘆く「悲歌」「餘涙雑唱」の連がある。
著者78歳だが、後記では「まだ何かが開けないにも限るまい」と、将来に希望を持っている。
以下に7首を引く。
祖父の字を軸とし舅(ちち)の字を額とせり我より若く逝きて惑はず
荒磯を高くおほへる潮けぶり吹かれてうごく中に降りゆく
社務所にて妻が買ふ小さき土鈴の鳴る音にだに安らふらしも
ゆるやかに空めぐり來て群のなかにくだり立つ鶴こゑも立たなく
伏兵の出でし如くにうろたへて思はぬ怒もてあましをり
木群のなかすこし窪みて坑口のあとといふとも葛の覆へる
守る如く我につづけるわが友ら坂の上には寺門(じもん)見え來ぬ
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