「ハイネ全詩集 Ⅲ」
角川書店、1972年・刊。井上正蔵・完訳。
今年8月7日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「Ⅱ 新詩集」に継ぐ本である。
この「Ⅲ」には、「アッタ・トロル」と「ドイツ 冬物語」が収められる。
「アッタ・トロル」は、大道で踊りをさせられていたが、逃げ出した熊の物語である。
以前に文庫本でか読んでいたが、今回も読んだ。
何かの寓意である事は明らかだが、社会情勢が実感できないので、誰のどういう所を揶揄しているのか、よく判らない。
「ドイツ 冬物語」には、期待していた。故国の季節の冬と、時代の冬を重ね合せた、荘重な物語を期待したのだ。
しかしこの篇には、フランスより13年ぶりに帰国した詩人の、故国への愛着と嫌悪が並んでいるようだ。詩人の胸中が、冬の状態だった。
まだこのあと、「ロマンツェーロ」と「最後の詩集」の2大冊が待っている。
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