蓮井澄子「ひとつ葉の記」
蓮井澄子(はすい・すみこ)さんの第1歌集、「ひとつ葉の記」を読みおえる。
2005年、青磁社・刊。
彼女は当時、「未来」会員、米田律子の選を受けている。
「未来」では短歌の芸術性を求めるようだけれども、うまくゆかないと奇抜さになる。
「花」とは奇抜さでも豪華さでもない、と今の僕は思う。
僕が思う「花」とは、水彩画(実物どころか、写真集さえ多くは、見ていないが)の鮮やかさを、イメージする。
この歌集には、多くの優れた生活詠もある。
以下に7首を引く。
椅子持ちて空気うすしと家内をさまよう姑よ肺気腫なれば
嫁がざる娘と二人いる平穏をかりそめごとと知りつつ夜半に
香りなき料理楽しむと言いし母テレビのまえに笑うははるけし
使い捨てカイロ敷き詰め避難所に寒夜の暖をとりいると聞く
廃屋となれど故郷父母の起き伏す気配 井戸水温し
幼子を三人連れたる若き日のわがかなしみを今娘(こ)がもたむ
先逝きし子は昼月に似るとあり亡き母の記にこころさわだつ
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