安部洋子「西方の湖」
島根県にお住まいの歌人・安部洋子さんの第4歌集「西方の湖」を読みおえる。
2011年11月、砂子屋書房・刊。
彼女は、「湖笛」「未来」会員。
花山多佳子、池本一郎、山田富士郎、3氏の評を収めた栞を付す。
周囲に人間の気配が薄い気がする。
独居しているらしい事、街にも知る人の少なくなった事、それらではなく、本人の関心の向かい方に因るのだろう。
「西方の湖」こと、近く住む宍道湖は、水の匂いが感じられるまで、深く描かれているのに。
以下に6首を引く。
矛盾してると呟きながらゆく岸辺北西の風に波しぶき上がる。
バス停に話しかけくる一人の言葉を散らす三月の雪
遠まわりして来しことも幸とせむ夕ぐれの湖透き通るまで
裏切りを責めたることもはるかなり今年の花びら踏みてゆくなり
真闇短きバンフの夜に流星のしたたりに合ふひとつまたひとつ
棕櫚の葉を吹きぬけてゆく風の音あの世の夫がもの申すらし
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