近藤芳美「営為」
岩波書店「近藤芳美集」第4巻(2000年・刊)より、3番めの第16歌集「営為」を読みおえる。
先の11月25日の記事(←リンクしてある)にアップした、「磔刑」に継ぐ。
原著は、1990年、六法出版社・刊。551首。
国内の旅、外国(トルコ等、中国、イタリア)への旅の歌に挟まれて、日常の歌があるようだ。
晦渋な詠みぶりも、推敲を重ねての作品と言われる。
以下に7首を引く。
ヒッタイト廃墟の岩の塁をたどるひとつひかりと風と曝るるかた
砂嵐ときなく地平にめぐるまを塩湖のたたえ蒼く氷(ひ)のごと
痛々しき病苦ののちの死のねむり君をめぐりて時のひそかなる
小さき劇ありて雨過ぐる街帰る今日生きてゆく若者を見て
明けにかけむ踊りのむれに妻も入る郡上の盆の軒濡れながら
よろこびに満ちたる笑みはこの世のもの莫高窟の闇に浮かびて
アッシジを目指す道にして遭う雷雨空裂く稲妻はオリーブの野に
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