栗生純夫「科野路」
角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、15番めの句集、栗生純夫「科野路(しなのじ)」を読みおえる。
先行する原子公平「浚渫船」は、今年6月8日の記事(←リンクしてある)にアップした。
原著は、1955年、長谷川書房・刊。536句。
1945年~1955年の句を収め、敗戦を区切りにしたのは潔い。
ただし「科野路」は、栗生純夫(くりゅう・すみお、1904年~1961年)の第5句集であり、敗戦までの句を「山路笛」(1946年、信濃郷土誌出版社)にまとめられる、自身と周囲の状況が、あったからの事である。
根源俳句、社会性俳句の盛んな中で、穏やかな句風は、今となって価値が高い。
以下に5句を引く。
鷹の嘴朽枝光らせ巣を工む
刃のあとを粗くのこして橇つくり
木の蛙もつとも高き辺に喚べり
減り減りしきやうだいすするとろろ汁
颱風の山野眼鏡の枠にあふれ
コメント