「ヘミングウェイ全短編 3 蝶々と戦車 何を見ても何かを思いだす」を、読みおえる。
平成9年、新潮文庫。
生前未発表の7編を含む22編が収められている。
この本は、職場の昼休み時間に、駐車場のマイカーの中で、倒した背凭れに仰臥して読んだ。長い日数がかかったので、帯などが傷んでしまった。
これで「全短篇」全3冊を読みおえた。高見浩の新訳は、好感がもてる。
スペイン内乱、第二次世界大戦に関わる頃より、作家の視線が倫理性を高める。
戦争には大義が必要だし、戦闘は生死を賭けるものだから、作家の心理がわからぬでもない。
今の僕は、仕事にも家庭にも、そう倫理的ではない。
ヘミングウェイの銃による自殺は、やはり悲劇である。
1998年、河出書房新社・刊。カバー、帯。
この歌集篇には、「反歌」「金色の獅子」「瀧の時間」の、3冊の歌集が収められている。
このシリーズの「1 歌集篇」よりも、僕には好感をもてる作品が多い。「瀧の時間」の後記にあるように、主題を軸にした<狩り>の作歌から、日々の生活の中で出会う人物・物事を詠う<待ち>の作歌に移ってきたせいもあるだろう。
俗に言うと、年齢を重ねて歌が穏やかになったとも言えるが、彼の場合、それだけではない気がする。
付箋を貼った6首を、以下に引く。
六本木の街はセピアよきさらぎの刹那の愛に降る雪の量(かさ)
正座して待ち居たりしは何ならん吾が二十代すでに忘れぬ
傘を振り雫はらえば家の奥に父祖たちか低き「おかえり」の声
呆たるを人に知らゆな、教卓のマイクの前に広がる山河
若草はひばりを隠しはつなつの心にわれは鶺鴒を飼う
天の河原を描きし頭脳 ビッグ・バンにはるばる思い至れる頭脳
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