斎藤史「暦年」
大和書房「斎藤史全歌集」(1998年5刷)より、2番めの歌集、「暦年」を読みおえる。
原著は、1940年、甲鳥書林・刊。
7月27日の記事(←リンクしてある)、「魚歌」に継ぐ歌集である。
1940年の作品・111首(この全歌集版では、「紀元二千六百年頌歌」等を削除)、1928年~1931年の作品・71首(1部を削除)、「魚歌」より268首(すべて削除)より成る。
なぜ「魚歌」の3ヶ月後、前歌集の作品、初期作品も合わせて、歌集「暦年」を出版しなければならなかったか。
同年7月、歌集「新風十人」に参加して、歌人としての評価も高かったのだろうが、出版元がシリーズ「昭和歌人叢書」全10巻の1冊としたい意向もあったのだろう。
以下に6首を引く。
1940年作品
北に向く我の歩みのいちづにて驕(おご)れるごとく見ゆるをあはれ
ききおぼえ子が歌ふなるうたふしのお嫁にゆきますといふたび恐縮す
物言はず樹(き)は生きたりといふ事をことあたらしくいひもいづるよ
御いくさはすでに仏印におし進めり生きざらめやも今日の日を越え
初期作品
眼(め)を閉ぢてねむるとすれやこの宿のふとんのよごれ匂ひ来るなり
死んだふりまざまざとする昆虫は腐蝕土の底に埋(うづ)めてもやれ
(注:漢字の旧字を新字に替えた所があります)。
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