カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2012年11月18日 (日)

小島和子「雪ふる音」

Cimg6593 小島和子さんの歌集、「雪ふる音」を読みおえる。

 昭和50年8月、柏葉書院・刊。

 箱、本体にビニールカバー、口絵1枚、宮柊二氏・題簽。

 昭和32年~48年に、「コスモス」へ発表した作品より、田谷鋭氏・選の367首を収める。

 彼女は「コスモス短歌会」F支部の草分けらしく、実弟の現・支部長よりエピソードを伺う事がある。

 彼女は医師と結婚しひとり息子を得るが、彼女25歳の時に夫が結核で逝き、彼女は教壇に復帰、しかも彼女も結核と闘病する事態となった。

 彼女のひとり息子が婚約して、親の責任の大半を終えたと感じ、歌集出版の運びとなった。

 僕がF支部歌会に参加した平成6年には、もういらっしゃらなかった(昭和56年に亡くなられた)。

 以下に7首を引く。

費えせぬ一日なりしを喜べる心もあはれひとり夕餉す

レモン削ぐ手許を友の褒めくれき長き独りに馴れてわがする

わが編みし黄のネクタイを翻し樟の木下を夫かへり来ぬ

来む世にもをみなと生れ添ひたしと言ふに臨終(いまは)の夫頷きし

手放しに歔(な)くも覚えつ床に嗅ぐコテイ香水は亡夫がくれし

部屋隅に吹き寄せられし花びらも吸はせつつ押す掃除機重し

古毛糸編みつつテレビ見るわれの独り笑ひてやがて寂しき

2012年11月17日 (土)

歌誌2冊

Cimg6590














 結社歌誌「コスモス」2012年12月号が、今日の午後に届いた。

 僕の歌は、(10首提出のうち)4首選だった。

 「本年度後期の歌集批評特集」があり、14冊が紹介されている。

 また今日午後、書店「Super KaBoS ワッセ店」へ行き、総合歌誌「歌壇」2012年12月号を買った。

 年末のせわしさが迫って来るようだ。

2012年11月 7日 (水)

中山礼治「黄蜀葵」

Cimg6565 「コスモス」の先達歌人、中山礼治氏の第2歌集「黄蜀葵」を読みおえる。

 伊麻書房、1978年・刊。603首。

 箱、宮柊二・題簽、本体にパラフィン紙カバー。

 黄蜀葵(オウショッキ)とは、とろろあおい(1年草)で、和紙の糊料、漢方薬に用いる。

 中山礼治氏(1912~1998)は、中学校卒業後に一旦就職するが、23歳で国学院大学師範部に入学、教職の道を歩んだ。

 師範部の頃に「多磨」入会、1953年の「コスモス」創刊に参加。

 「自己を誠実に詠んだ」(三省堂「現代短歌大事典」より)とされる。

 以下に7首を引く。

午後着ける上州仁田の葱の泥雪降る日ゆゑ少し濡れたり

義仲寺の墓立ちめぐる生垣のかの山茶花や咲きつつあらむ

山腹にそよりともせぬ葛の葉に暑き時間はすでに来てをり

散りそめて萼の赤みの目にしるし山木にまぎれ行かむ桜は

邪魔として薊四五本を切り払ひ日暮れの妻が生き生きとをり

根元より掘りしすすきの株跡に今朝つくばふはぬくもる鳩か

いつのまかとろろあふひのつぼみたる夕べの庭におどろきて佇つ

2012年11月 2日 (金)

田谷鋭「母恋」

Cimg6544 田谷鋭氏の歌集「母恋」を読みおえる。

 1978年、白玉書房・刊。718首。

 箱、宮柊二・題簽、本体にパラフィン紙カバー。

 田谷鋭氏(1917~)は、生まれて3年で父を失い、8年で母を失った。

 「香蘭」「多磨」を経て、1953年の「コスモス」創刊に参加。

 1958年「乳鏡」で第2回「現代歌人賞」、1973年「水晶の座」で第8回「迢空賞」第1回「日本歌人クラブ賞」、それにこの「母恋」で1979年の第30回「読売文学賞」を、それぞれ受賞した。

 この歌集に「うち深く恚(いか)るのみなるあけくれを」とあるが、作歌としては「ひそけく・しづか・さやさやし」等の語彙を用いるなど、寂光の境地を目指したようだ。

 以下に6首を引く。

帰らざる子のため荒るるわが心歌読みさして忽ちに飽く

山口の駅舎静けく朝空におびただしくも舞ふ燕あり

青年の一つ力におもおもと大き筏はいま橋くぐる

寂しさもわが餌食なれ雨の日の植物園の木暗(こぐれ)ゆきつつ

はじめより知らざる父とそのみ面(おも)忘れし母とわが胸に生く

雨を待つ東日本と思ふにぞ吾妻は嘆く青ものの値を

 正字を略字に替えてある。

2012年10月29日 (月)

初井しづ枝「夏木立」

Cimg6538 結社誌「コスモス」の、先達歌人の歌集を何冊か持っているので、おいおい、拙いながら紹介してゆきたい。

 まず初井しづ枝氏の、最終となった第5歌集「夏木立」である。

 昭和50年、白玉書房・刊。704首。

 写真は、箱の表である。当時の歌集は、箱、題簽、口絵等、豪華である。

 初井しづ枝氏(1900~1976)は、「日光」→「短歌民族」「香蘭」→「多磨」を経て、1953年の「コスモス」創刊に参加。

 生涯の5歌集の外、「初井しづ枝全歌集」(1976、立風書房・刊)外がある。

 評価が高く、「第22回読売文学賞」を受賞した第4歌集「冬至梅」を、僕は読んでいなくて残念である。

 「夏木立」より、6首を引く。

裏山の清水落ちきて門川に水車のめぐる冬の音あり

沙羅の木の幹のおもてに紅淡く紫淡くさしまじるかな

冬池の濁りのなかにゐる鯉の鱗の金の淡きしづまり

病棟の涼しき露地にたち出でて心素直に洗ひ髪乾す

ゆらゆらと翳の如くに舞ひ入りし揚羽が羽ぶり強く出でゆく

はなやぎしけふの茜も消えゆくか一つ冬雲燃え残しつつ

 一部、正字を略字に変えて、書いてある。

2012年10月25日 (木)

「歌壇」11月号

Cimg6530 総合歌誌「歌壇」2012年11月号を読みおえる。

 ただし短歌作品をおもに読んで、散文では飛ばしたものも多い。

 巻頭20首では、蒔田さくら子さんの「晩節」に惹かれた。自分の生涯と、国の危機と、自然の季節とを見据え、多様に詠んでいる。

 川野里子「空間の短歌史⑪」、武下奈々子「働く女性たちの風景⑤」などの評論に勢いがある。

 女性短歌の評価を、更に高めよう、という機運がみえる。

 実作では、大御所といえば、馬場あき子さんが残るくらい(多くの先達が亡くなり)という、現状を背後に持ちながら。

2012年10月21日 (日)

春日井建「朝の水」

Cimg6520 砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、最後の第9歌集、「朝の水」を読みおえる。

 原著は、2004年、短歌研究社・刊。411首。

 2004年5月15日に歌集発行、その1週間後の5月22日、中咽頭癌により65歳で逝いた。

 この歌集では、闘病の中で、食事やスポーツ観戦など、生を惜しんだ。

 華々しい青年時代の出発、歌の別れ、けじめをつけての歌壇復帰、自己の作品の発展と共に、短歌結社を営んだ。

 61歳で癌が発見され、65歳で惜しまれてなくなった。

 彼の性的偏向、一時的な短歌との別離がありながら、品格を保って歌人の生を徹した事は、称賛されるべきである。

 以下に7首を引く。

細幹よりさらなる細枝葉ごもりに紋白のやうな花とびかひつ

先発メンバー表にまづ見る三都主(サントス)の風切羽もつ脚をよろこぶ

一刻の長さ一日の短さを体感しつつ湯浴みしてゐる

帰らざる時知らしめて庭隅の白まんじゆしやげ咲き足りて消ゆ

流動食といへども喉に障る日は茶をのみて足る日向の椅子に

文鳥はひとりし遊びわれは書く性格の応(かな)ふ生きものを得つ

神託はつひに降(くだ)れり 日に三たび麻薬をのみて痛みを払へ

2012年10月18日 (木)

春日井建「井泉」

 砂子屋書房「春日井建全歌集」より、第8歌集「井泉」を読みおえる。

 原著は、2002年、砂子屋書房・刊。370首。

 1999年(61歳)、咽頭癌が見つけられ、入院、いったん退院する。2000年には、癌が再発、余命1年と告げられる。

 癌の闘病短歌というと、死を覚悟した者の、この世へ残すメッセージという思い込みが僕にある。ジャンルは違うが、作家・高見順の詩集「死の淵より」がそうだった。

 この歌集では、ラジウム岩盤浴の「雪とラヂウム」26首、放射線湯浴の「井泉」50首等があるが、叙景歌もあるなど、「歌空間を顕在化していく」歌人の自覚があっただろう。

 巻末に、歌人であった母の死を悼む、「朱唇」26首が載る。

 以下に7首を引く。

扁桃(あーもんど)ふくらむのどかさしあたり襟巻をして春雪を浴ぶ

天使的午睡と言はむのどを通るもの少なければ疲れ易くて

書きあまし見のこせしまま純青(ひたさを)に過ぎなむ時を肯はむとす

枇杷の葉をそれぞれ患(や)める個所にあて岩に伏しをり遊びのごとし

湯に首を打たせてラドン吸ひながら屋根の雪おろす人を見てゐつ

眠る前に母が蔵(しま)ふはわたくしの耳とぞ言へる二つの莟

うなだれゐし薔薇(さうび)二輪を水切りしいくばくもなく逝きたり母は

2012年10月16日 (火)

歌誌とエッセイ集

Cimg6505Cimg6508















 今日午前、商店集合地「ワッセ」にある、書店「SuperKaBoS ワッセ店」へ行った。

 お目当ての総合歌誌、「歌壇」11月号はすぐ見つけた。

 パソコン本の棚で、「できるExcelデータベース」の2010版があった(2002~2007版は持っている)が、買わなかった。

 またAmazon内のマーケットプレイス「駿河屋」より、古本「’97年版ベストエッセイ集 司馬さんの大阪弁」(文春文庫、日本エッセイスト・クラブ編、2000年・刊)が届いた。この年刊エッセイ集のシリーズを読み続けているが、この巻(他にも)が手許に無いからである。

 この本の値段は1円である。送料が250円と一定なので、実際の送料との差額が店の儲けになる。ただしAmazonも一定額の手数料を差し引いて、利益とする。細ごまと、せちがらい世である。

2012年10月12日 (金)

春日井建「白雨」

 砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、第7歌集「白雨」を読みおえる。

 原著は、1999年、短歌研究社・刊。359首。

 今月3日のこのブログで紹介した、「友の書」に次ぐ歌集である。 

 歌集名の「白雨」は、自然現象の白雨(夕立、にわか雨、の意)の他に、「思いがけなくやってくる運命」を意識したもの。作品は、癌告知以前だが、編集は告知以後なので、その感慨もあるだろう。

 「短歌研究」誌上に発表された、30首連載8回の内の「白雨」30首と、角川「短歌」に発表された「高原抄」21首により、第34回短歌研究賞受賞(この歌集に収録)、また先の「友の書」と、この「白雨」を合わせて、第27回日本歌人クラブ賞、第34回迢空賞を受賞して、栄誉の多い歌集である。

 以下に7首を引く。

(ことわり)の外とも見えて訃の報がとどきぬ妹は寡婦となりたり

これは樫あれは榛(はしばみ)おもむろに夕暮れはきてひと色となる

発語とは思はざれども樅の木が風に揺らぎてさはさは音す

山小屋の部屋の灯明りそのしじま見咎めたるか青葉木菟啼く

いづこにて死すとも客死カプチーノとシャンパンの日々過ぎて帰らな

ひんやりと秋は到れりこの朝の幸福の木に水をやるべし

操りし白帆の日々は杳かなれ吹きすぎてゆく風の脚見ゆ

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