カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2012年12月26日 (水)

「歌壇」1月号

Cimg6671 12月19日の記事で紹介した歌誌2冊のうち、「歌壇」(本阿弥書店)2013年1月号を読みおえる。

 ただし散文のうち、読まなかったものもある。

 「新春巻頭16首」では、トップの馬場あき子さん「吹割りの滝ほか」が興深く惹かれた。

 「吹割りの滝」をめぐる作品の他、ホームレスの人や、米空軍の厚木基地まで、心に掛けている。

 僕は「馬場あき子全集」の歌集篇までの歌集は読んでいるが、その後の歌集を読んでいない。

 「コスモス」「棧橋」所属の田宮朋子さんが、「短歌と随想十二か月①あんぎん」で、7首とエッセイを載せている。

 彼女の短歌とエッセイの12回を、楽しみにしている。

2012年12月24日 (月)

川辺古一「北枝」

Cimg6669 川辺古一氏の第4歌集「北枝」(ほくし)を読みおえる。

 1981年、石川書房・刊。

 箱、題簽(本体の)・宮柊二、501首。

 1975年(49歳)~1980年(54歳)の作品である。

 氏の経歴については、第3歌集「駅家」を紹介した、このブログの2012年11月27日の記事を、参照されたい。

 自然、社寺への旅行詠に氏は、平静というより沈潜した心境を見せる。

 心の騒がしい僕は、畏怖さえ感じる。

 以下に8首を引く。

紀三井寺急階段に息喘ぐわれを笑ひて老婆は立てり

松本の石仏群を見にゆきて三日も経つに子は帰り来ず

冷害を嘆く農夫と白河の関あといでて東へ向ふ

水槽の底に葛粉の固まるを鉄槌もちて人は割りゆく

乾きつつ白く光りて縁側に張子の馬の数頭ならぶ

弟の葬儀を見むとあつまりし少年達にキャラメル配る

七重八重石の仏にからみつき花咲かせをり定家かづらは

渓谷に秋の光の及ぶとき影のごとくに虹鱒泳ぐ

 なお漢字の1部を、正字より略字に替えてある。

2012年12月22日 (土)

「コスモス」2013年1月号

 結社歌誌「コスモス」2013年1月号を読みおえる。

 ただし初めより、「その一集」特選欄までと、「COSMOS集」、「新・扇状地」、第59回O先生賞受賞作「時は返らず」「白蝶貝」、他。

 僕が今回、付箋を貼ったのは、32ページ上段、「その一集」特選欄のHのりこさんの5首のうち、次の作品である。

おろしたての長袖シャツにGパンでやや秋めける原宿に来つ

 東京の方だが、やや改まった気持ちで、原宿(地理オンチの僕は、生涯、訪れる事はないだろうな)に来た思いを述べている。

 同誌はこれからも、読み続ける予定である。

2012年12月20日 (木)

伊藤麟「蛍まつり」

Cimg6667_2 伊藤麟氏の歌集「蛍まつり」を読みおえる。

 1980年(昭和55年)、伊麻書房・刊。

 僕と氏との関わりは、「コスモス」2008-2月号の氏の追悼特集について書いた、このブログの2008年1月26日の記事を読んでいただきたい。

 その誌も残っていないが、代表歌、年譜なども載っていたと記憶する。

 「コスモス」では「螢」の字を用いる人が多い中、当時でも「蛍」の字を用いる、或は箱の歌集名を横書きにするなど、先進的な考えの歌人だったようだ。

 また詩的な表現の短歌も多い。

 写真は、箱の表である。染みが多くある。

 以下に5首を引く。

つばらかに想ひ出せねど悔恨のわれのくれなゐ柘榴(ざくろ)咲きたり

前肢を揃へて水を舐(な)むる虎、年逝かむここ日本の園に

あはれなる絵島の墓に来て屈みさて立ち上がり四方(よも)の寂けさ

峰移る霧の微粒は顔を打ち押し黙りたり山上の九人

船と岸テープ投げ合ふ喚声の露語を解せず吾は異邦人

2012年12月19日 (水)

「コスモス」と「歌壇」

Cimg6666














 1昨日の12月17日(月曜日)に、結社歌誌「コスモス」2013-1月号が届いた。

 僕の歌は、(10首出詠のうち)久しぶりに特選で、5首掲載だった。

 いつもの所まで読んだなら、また報告する。

 昨日・18日(火曜日、指定休日)に、書店「SuperKaBoSワッセ店」へ行き、総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2013-1月号を買った。その他の本は買わなかった。

 同誌の新春巻頭作品に、「コスモス」編集兼発行人の宮英子さんが、「週間日録」8首を寄せていられる。

2012年12月12日 (水)

間島定義「鋼と杉」

Cimg6649_3
 間島定義氏の第2歌集「鋼と杉」を読みおえる。

 昭和55年、白玉書房・刊。

 箱、宮柊二・題簽、口絵1葉。

 昭和38年~46年までの作品、508首を収める。

 手許には、この歌集の外に資料がない。

 新潟県より埼玉県に移住し、「コスモス」の編集に加わった。

 作品に「草木盡心」といった境に近づくものを加えてみたいと願ったようだ。

 以下に7首を引く。

ゆたかなる夏迎へをり野の先の青さうるめる麦の畑は

利根川の瀬鳴りとよむにひびきあひ寂しも空のまほら逝(ゆ)く風

木馬道(きうまみち)を黒く素早く走り去り山むささびは谷にひそみつ

うつうつと心沈む日雨後(うご)の山登りてくれば韮白く咲く

水走る這松の下黒百合のしづけき花の逝(ゆ)く春を咲く

樅の葉に結びし霧氷(むひょう)かすかなる輝き放つ尾根の樹海に

歌選ぶ仕事より立ち先生のふとなにごとか呟きますを

 なお1部、正字より略字に変えてある。

2012年12月 5日 (水)

岡部文夫「石の上の霜」

Cimg6637 岡部文夫(1908~1990)の歌集、「石の上の霜」を読みおえる。

 短歌新聞社、1977年・刊。683首。

 写真は、箱の表。

 岡部文夫はこののち、日本歌人クラブ賞、短歌研究賞、迢空賞、各賞受賞。

 当時の彼は、福井県坂井郡(現・坂井市)に住んだ。僕の「コスモス」入会が1993年だから、彼の亡くなったあとである。

 郷里の能登、福井の漁村の、厳しい環境に生きる老たちを描いて、情感がある。

 以下に7首を引く。

寺ふたつ養ふに足る谷の村漆に冨みて今にゆたけし

北潟の水の寒鮒を煮むといふ聞きてゆふべを待つはたのしき

原電に潤ふ海の村といへど心けはしく荒(すさ)びゆくらし

隠すなき貧を互みに貶めて一つ入江には一つ村あり

生きるだけ生きて用なき媼らの熱き銭湯をただに楽しむ

日の長くなりしを言ひてしろたへの清き豆腐を掌(て)の上に切る

長く生きし二人の今日のよろこびに蒲生の海の皮剥を煮る

2012年12月 2日 (日)

東谷節子「明日の神話」

Cimg6626 東谷節子(ひがしたに・せつこ)さんの第1歌集、「明日の神話」を読みおえる。

 2006年、短歌研究社・刊。青井史・帯文。

 彼女は、1938年・生れ、1990年「雁来紅(かまつか)短歌会」参加、1995年「かりうど」(青井史・創刊)の創刊に参加、現在に至る。

 夫の両親の老齢等により、西宮市で同居。娘の結婚、出産があり、舅の逝去、阪神大震災にも遭った。

 それらを経るには、短歌の力も大きかっただろう。

 イタリア・フランス・旧東独を訪う旅、風の盆への旅、9・11、イラク戦反戦運動なども、詠われている。

 古典文法、新かな遣いを用いる。

 以下に8首を引く。

嫁ぐ日の迫りて寡黙になりし娘は微笑むこと多し吾に対いて

「嫁からの義理チョコですが」と差出せば舅ははつかに笑み給うなり

父母と共に老いゆく明け暮れの夫の寡黙は病にも似る

面伏せて胎児を庇う娘には母なる仕草のすでに身につく

ローソクの芯の如くに病み細り舅は風熱き七月に果つ

舅という支柱失くせし姑の蔓宙に揺れいる如き危うさ

「しんどい」と言いつつ夫は足軽く二度目の勤めの朝を出でゆく

全身の骨の疼きに喘ぎつつ「もう死なして」と姉は言いにき(急性白血病)

2012年11月27日 (火)

川辺古一「駅家」

Cimg6604 川辺古一(かわべ・こいち、1926~)氏の第3歌集、「駅家(えきや)」を読みおえる。

 1977年、伊麻書房・刊。

 宮柊二・題簽、箱、本体にパラフィン紙カバー。

 1966年(40歳)~1974年(48歳)の作品より、724首を収める。

 氏は、1945年「多磨」入会、1953年「コスモス」創刊に参加。宮柊二への敬愛が篤かった。

 自然を詠んだ歌が多いが、その中に自己・他者を押し出して、純粋な自然詠にならない。例えば「素枯れたる林の中に頸伸ばし雉一羽いまわが方を見る」のように。

 以下に6首を引く。

これ以上乾く筈なき枯草に風音こもる昼間を歩む

山上の墓前に妻が供へたる牛乳壜に夕陽は当る

いきいきとわれを見給ふ神護寺の虚空菩薩の腕太しも

自動車の風圧の音いさぎよし校正終へて帰る夜道に

汗ひきてゆくを待ちつつ立ちをれば山畑の紫蘇焼く匂ひする

会議故今日も遅しと告げしとき妻よりも子は寂しき顔す

 

2012年11月26日 (月)

「歌壇」12月号

Cimg6602 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2012年12月号を読みおえる。

 短歌作品をおもに読み、散文では飛ばした作も多い。

 巻頭20首では、俵万智「秋の入り口」が懐かしい。僕は「俵万智・以後」に作歌を始めた者だから。

 特集は、「身体感覚の短歌」であるが、観念的である。「仕事は体で覚えよ」と言われて覚えた、作業の身体感覚や、老いの不自由な手足が論じられていない。

 田中槐さんの年間時評は、「震災後一年と短歌のこれから」と題する。まっとうな感覚である。

 また12月号という事で、幾つかの連載がおわる。武下奈々子さんの「働く女性たちの風景」を始め、惜しい事である。

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