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2012年5月の31件の記事

2012年5月10日 (木)

太田鴻村「穂国」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第4巻(昭和56年・刊)より、14番め、最後の句集、太田鴻村(おおた・こうそん)「穂国(ほのくに)」を読みおえる。

 原著は、昭和16年、新土社・刊。

 臼田亜浪の序文、596句、後記を収める。

 敗戦前に俳誌「石楠」で活躍したとされる。

 昭和10年までの作より、5句を引く。

川船の月暗ければ水匂ふ

朝焼が胸につめたし夾竹桃

ひさびさの旅路草家の干布団

夜や冷ゆと下り鰻を待ちてけり

姫百合の灯になじめるを妻もとめ

Phm10_0105
写真は、記事と無関係。

ダウンロード・フォト集より。

2012年5月 9日 (水)

ミニ薔薇と満天星

Cimg5984Cimg5985









 今年1月に買い、1月24日~3月31日に、4回にわたり開花を紹介してきた、黄花ミニ薔薇が2期め(?)の8つの莟をつけた。

 そのうち2輪が咲いたので、1輪の写真を公開する。

 昨年3月~9月に、5度の花を咲かせた赤花ミニ薔薇が冬を越し、強剪定をしたところ、10個の莟が上がっている。

 「ひょっとして俺、グリーンフィンガー?」と思ってしまう。

 しかし右の写真の紅更紗満天星(ベニサラサドウダン)は、4、5種類の満天星の苗を2度買って、唯一残ったものである。

 最後に残った種は、大事である。

 花は嘘をつかないし、世話をしただけ応えてくれる、と思うが僕は、人間嫌いという訳ではない。

2012年5月 8日 (火)

永井陽子「ふしぎな楽器」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、4冊めの「ふしぎな楽器」を読みおえる。

 原著は、1986年、沖積舎・刊。

 138首とエッセイ5編を収録。粟津則雄・解説。

 名古屋、京都でのシンポジウムに参加するなど、歌壇的には行動した時期だが、個人的には孤独な作歌生活だったろうと思われる。

 エッセイ「魔笛」で全身が音楽となった体験を、「あとがき」で「うたはふしぎな楽器であると、…」と述べて、音楽との親密性を語っている。

 以下に6首を引く。

今宵ぎちぎち星が燃えはて落ちぬかと大熊星座たしかめに出づ

高麗人は装ひをとき韻を解きほのかにひとをおもひそめにき

くわつと照る陽をまたくわつと押し戻し都会は熱き方形のつらなり

秋天の藍のましたに円座成し縄文人ももの食ふころぞ

ただ一挺の天与の楽器短歌といふ人体に似てやはらかな楽器

振りむけば官位のことを気に病める定家もゐたり秋の陽のなか

Phm02_0062
写真は、記事と無関係。

ダウンロード・フォト集より。

2012年5月 7日 (月)

阪本越郎「暮春詩集」

Cimg5980 彌生書房「阪本越郎全詩集」(昭和46年・刊)より、第3期めの「暮春詩集」及び「暮春詩集 拾遺」を読みおえる。

 原著は、昭和9年、金星堂・刊。

 写真は、全詩集の本体の表紙である。イラストは、藤田嗣治・筆。

 「暮春詩集」は、散文詩詩集として、モダニズム詩の1つの達成であろう。

 天使より、少女が多く出てくるようになったが、楽天的な人生感だ。

 彼の詩に暗さがあるとしたら、「このような安楽な月日がいつまでも続く筈はない」という確信と、「いつかは『生活』を知るだろう」という予感だと、僕には思われる。たとえ「倦怠」を装っていても。

2012年5月 6日 (日)

ツツジ

Cimg5975Cimg5977









 庭でツツジ(躑躅)の花が咲いている。

 左の写真は、引き込み沿いに咲く3種で、手前より白花、赤花、ピンク花の大株である。

 右の写真は、それらより僕が殖やした幾株ものうち、ピンク花のたくさん咲いているところ。

2012年5月 5日 (土)

川上弘美「蛇を踏む」

Cimg5970 川上弘美(1958~)の小説集「蛇を踏む」を読みおえる。

 文春文庫、2007年、15刷。

 1996年の芥川賞受賞作「蛇を踏む」の他、「消える」「惜夜記(あたらよき)」を収める。

 僕は、話題作が文庫本になり、古本となった頃に買い、棚に何年か寝かせてから、取り出して読む、というのが好きである。

 実際の女性にこんな仕打ちをしたら、すぐさま去られてしまうだろう。本は、黙って待ってくれる、時に少し古びたりしながら。

 彼女はSF出身であって、「あとがき」で、「自分の頭の中であれこれ想像して考えたことなら、いくらでもつるつると出てくるのですが。」と述べている。

 蛇を踏むと、それが母親となって(実母は別にいる)蛇の世界へ誘う表題作など、シュールだけれど、結婚、主婦の経験が生かされていると、僕は思う。

 他に気になっていた小説、「ニシノユキヒコの恋と冒険」、「古道具中野商店」も彼女の作品とわかったので、文庫本で読みたい。

 

2012年5月 4日 (金)

CD2枚

Cimg5957Cimg5963









 昨日に「BOOK OFF 板垣店」へ久しぶりに行って、音楽CDを2枚買った。

 1枚はEvery Little Thingのミニアルバム(?)の「UNTITLED」(4曲とそのインスツルメンタル)である。

 作編曲が同じ人の3曲は、これまでの自己模倣的だし、違うメンバーが作編曲の1曲は違和感がある。進化するのは難しい事だ。歌詞は優れているのだけれど。

 2枚めはお目当ての、「ショパン・ピアノ名曲集」である。14曲入り。ピアニストは中村紘子である。

 ショパン全集(廉価版)の購入を考えているのだが、僕はクラシック音楽にはとても疎い。それでショパンの曲のCDを1枚、試しに買ったのだ。

 モーツァルトの場合は受け付けなかった(2011年9月19日の記事あり)が、今度のショパンは楽に聴ける。

 機会があれば、廉価版全集を買いたい。

2012年5月 3日 (木)

永井陽子「樟の木のうた」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、3冊めの「樟の木のうた」を読みおえる。

 原著は、1983年、短歌新聞社・刊。

 280首、春日井建・解説。

 彼女の歌は、幻想性、抒情性、音楽性等が高く評価されているようだ(僕が、さしでがましいけれど言うなら、古典と現代性の統合を成している)けれども、僕は作歌では生活短歌(それも人事詠)しか詠めないので、この歌集より、リアルめの8首を以下に引く。これらが歌集の歌風だと思わないで頂きたい。

夕野分だつ法起寺の塔までを草の名花の名あひおぎなへり

大津絵の鬼に背中をたたかれぬ叩かれた背がいつまでもさびし

雨あがるくきやかな尾根山萩のつのぐむころを逢ひにゆきたし

星を結びて天に柄杓を描くこと両親が教へくれし夏の夜

あした行く街があるゆゑかなしみはしづめねむれと葉月のすすき

ブランコを漕ぎいだすとき視野に入る古代の空とオニクルミの木

更科やあふるるほどの冬陽浴みさびしきもののひとつ朴の木

やさしく低く朝けの風に呼ぶこゑとなりて歌はむ樟の木のうた

Phm02_0074
写真は、記事と無関係。ロイヤリティフリーのダウンロード・フォト集より。

2012年5月 2日 (水)

J・アーヴィング「サーカスの息子」下巻

Cimg5955 ジョン・アーヴィングの小説「サーカスの息子」の、下巻を読みおえる。

 新潮文庫、2008年12月・刊。

 この上巻の読了報告が、このブログの2012年1月15日の記事にあるから、下巻1冊を読み了えるのに、とても日数がかかった。

 それは作業場の控え室で、手空きの時に少しずつ読んだからだ。

 カバー裏面のコピーに「猥雑で奇怪な魅力に満ちた長編小説」とあるが、書きながらストーリーを展開したのか、伏線が少なく、着地も決まったと言えない。

 次作の「未亡人の一年」では、文体は締められていた(邦訳によれば)。

 ホームページ「J.アーヴィングによると世界は。」に拠ると、著者にはこのあと、「また会う日まで」(邦訳、新潮社)があり、2009年の新作「あの川のほとりで」(2011年、新潮社、上下巻)がある。

 その前に僕は、手許にある短編小説集「ピギー・スニードを救う話」を、読まなければならない。

2012年5月 1日 (火)

江藤淳エッセイ集

Cimg5950 江藤淳(1932~1999)のエッセイ集「文学と私・戦後と私」を読みおえる。

 新潮文庫、昭和49年2刷。

 本冊にはカラーの紙カバーがあるが、汚れているので、写真では除いた。

 301ページに53編のエッセイ、他を収めたので、1編は短い作品が多く、読みやすい。

 読んでいる感覚は、穏やかなインテリのオジサンかな、と思わせる。

 彼の本を僕は、このエッセイ集しか読んでいないが、本業では保守派論客だったのだろう。この本の「戦後と私」の中に「私の家は『庶民』ではなかった…」と述べて、選ばれた民のプライドだけで彼は戦後を生き抜いたのか、と思わせる。

 しかしエッセイでは、この市民的しみじみ・ほのぼの路線が佳いので、人を世を恨む言葉ばかりでは、読者は楽しめないだろう。

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