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花神社「石原吉郎全詩集」(1976年・刊)より、「未刊詩篇」を読みおえる。
「Ⅰ 文章倶楽部・ロシナンテから(8編)」と「Ⅱ シベリヤ詩篇から(4編)」の2つに分かれる。
「文章倶楽部」は投稿文芸誌だったらしく、「ロシナンテ」は1955年創刊の同人詩誌である。初出が彼の第1詩集「サンチョ・パンサの帰郷」の詩と重なる作品があるが、篩い分けの基準は僕にはわからない。
「古い近衛兵」の末4行を引く。
古い近衛兵(前略)
われらはたえまなく
雨によごれたひげをひねり
はみだした勇気をおしこんでは
不発の衝動をひきよせる
「シベリヤ詩篇」は、抑留時代に創って記憶していた作品を、書き残したものである。文語調の詩である。
「裸火」全5行を引く。
裸火( 一九五二年 ハバロフスク)
われやはらかき
手のひらもて
風に裸火をふせがん
またたける
いのちを掩はん
生前の全詩集だったので、このあと2詩集がある。「足利」は所有しており、最後の詩集「満月をしも」は取寄せ中である。
岡部文夫(1908~1990)の歌集、「石の上の霜」を読みおえる。
短歌新聞社、1977年・刊。683首。
写真は、箱の表。
岡部文夫はこののち、日本歌人クラブ賞、短歌研究賞、迢空賞、各賞受賞。
当時の彼は、福井県坂井郡(現・坂井市)に住んだ。僕の「コスモス」入会が1993年だから、彼の亡くなったあとである。
郷里の能登、福井の漁村の、厳しい環境に生きる老たちを描いて、情感がある。
以下に7首を引く。
寺ふたつ養ふに足る谷の村漆に冨みて今にゆたけし
北潟の水の寒鮒を煮むといふ聞きてゆふべを待つはたのしき
原電に潤ふ海の村といへど心けはしく荒(すさ)びゆくらし
隠すなき貧を互みに貶めて一つ入江には一つ村あり
生きるだけ生きて用なき媼らの熱き銭湯をただに楽しむ
日の長くなりしを言ひてしろたへの清き豆腐を掌(て)の上に切る
長く生きし二人の今日のよろこびに蒲生の海の皮剥を煮る
角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第5巻(昭和56年・刊)より、11番めの句集、京極杞陽「くくたち 下巻」を読みおえる。
原著は、昭和22年、菁柿堂・刊。
先の11月30日に紹介の、上巻に継ぐ。
高浜虚子・序文(上巻と同文)、266句、後記を収める。
この「くくたち」上下巻の内容は、敗戦前にほぼ定まっていたが、混乱の中でそのままになっていたものを、菁柿堂が出版したとの事である(上巻の自筆後記に拠る)。
下巻の昭和17年~20年(敗戦直後を含む)の句にも、全く戦争吟がなく、僕には驚きである。
以下に5句を引く。
秤置き駄菓子を売れる支那夜店
名刀ををさめし蔵に虫時雨
秋の夜を昼の如くに画きしゴホ
春空へ砂なげ上げてあそぶ子ら
若き画家雪の但馬の景をほめ
本文とは無関係。
花神社「石原吉郎全詩集」(1976年・刊)より、6番めの詩集「北條」を読みおえる。
原著は、1975年、花神社・刊。
先の11月29日に紹介した、「禮節」に続く詩集である。
石原吉郎(1915~1977)にはこのあと、「足利」「満月をしも」の2詩集がある。
全詩集に載る、最後の詩集である。このあと、句集と未刊詩篇等を収める。
「北條」では、「一條」「北條」から始まる散文詩で、語感に頼りながら、詩を成り立たせている。
彼の郷愁が満たされた(彼の思いと、戦後日本の心情・風土には違和があったようだ)時期か。しかし言葉の上でだけの事かも知れない。
「痛み」という散文詩で彼は、「 最後に痛みは ついに癒されねばならぬ」と書く。最後まで癒されぬ痛みもあるだろうに。
本文とは無関係。
東谷節子(ひがしたに・せつこ)さんの第1歌集、「明日の神話」を読みおえる。
2006年、短歌研究社・刊。青井史・帯文。
彼女は、1938年・生れ、1990年「雁来紅(かまつか)短歌会」参加、1995年「かりうど」(青井史・創刊)の創刊に参加、現在に至る。
夫の両親の老齢等により、西宮市で同居。娘の結婚、出産があり、舅の逝去、阪神大震災にも遭った。
それらを経るには、短歌の力も大きかっただろう。
イタリア・フランス・旧東独を訪う旅、風の盆への旅、9・11、イラク戦反戦運動なども、詠われている。
古典文法、新かな遣いを用いる。
以下に8首を引く。
嫁ぐ日の迫りて寡黙になりし娘は微笑むこと多し吾に対いて
「嫁からの義理チョコですが」と差出せば舅ははつかに笑み給うなり
父母と共に老いゆく明け暮れの夫の寡黙は病にも似る
面伏せて胎児を庇う娘には母なる仕草のすでに身につく
ローソクの芯の如くに病み細り舅は風熱き七月に果つ
舅という支柱失くせし姑の蔓宙に揺れいる如き危うさ
「しんどい」と言いつつ夫は足軽く二度目の勤めの朝を出でゆく
全身の骨の疼きに喘ぎつつ「もう死なして」と姉は言いにき(急性白血病)
今年9月23日に、一応の完成をみた(記事あり)「蔵書文庫本データベース」(3,374件に数件追加)に続き、新書のデータベースをExcel2010で作成しており、先日にようやく100件に達した。数百件で終わるだろうと予測している。
ガイド本というか、「できるExcelデータベース」(インプレスジャパン、2010年・刊)を参考に、また文庫本での経験を生かして、わかりやすくした積もりである。
新書は、時事的な内容が多くあり、すぐに内容が(社会的、科学的、を含め)古びてしまう。
100件めは、小林直樹「憲法第九条」(岩波新書、1982年・初刷、1993年・27刷)であった。
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