田中愛子「傘に添ふ」
埼玉県にお住まいの田中愛子さん(「コスモス」会員、「棧橋」同人)が、第2歌集「傘に添ふ」を送って下さった。
2013年1月、柊書房・刊、511首。
「桟橋」の宿泊批評会で彼女とお会いした事がある(言い古された言葉だが、笑顔の爽やかなかた、という印象だった)が、僕は「棧橋」を退会してしまったので、それ以上のつながりはない。短歌上の後輩への励ましだろうか。
あるいは出版社のご配慮だろうか。
家庭裁判所というお堅い職場にお勤めであるが、帯文の通り、「柔らかな心と他者への愛がつねにその身に宿っている」歌人である。
以下に7首を引く。
まちがひの留守電わが家に入れし人はたして彼と会へただらうか
青信号つづけば妙に不安きざす気の小さき性(さが)もちて生きをり
目をあけて明日を思ふ目をとぢて昨日を思ふ風さわぐ夜
ディーでなくデーと言ふ時全身に力みなぎる「リポビタンD」
なづきにて漢字変換してをりぬ「ジュリア」「セリア」と呼ばれゐる名を
ぼくの犬あたくしの猫わしの山羊あたいの兎それがしの馬
春の日の電車あるいは講義室みらいあるものよく眠りたり
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