カテゴリ「詩集」の190件の記事 Feed

2014年5月18日 (日)

オウィディウス「名婦の書簡」

 平凡社「世界名詩集大成(1) 古代・中世篇」(1960年・刊)より、古代ローマ詩人、オウィディウスの「名婦の書簡」の抄訳を読みおえる。

 今月7日の記事(←リンクしてある)、ティブッルス「詩集」より、に継ぐ。

 オウィディウス(BC43?~AD17?)は、初期の恋愛詩集「恋の歌」「名婦の書簡」「女の化粧法」「恋の技法」「恋の療治」、円熟期の「変身物語」「祭暦」、黒海の僻地・トミスへ追放された後の「哀しみの歌」「黒海からの便り」「イービス」、他の作品を執筆したとされる。

 この「名婦の書簡」21編より、ここでは3編を訳している。原文の1編で約200行程あるせいか、散文形式で訳されている。「オエノーネーよりパリスへ」「アリアドネーよりテーセウスへ」「サッポーよりパオーンへ」である。

 神話の女性(サッフォーは歴史上の人物とされる)が、背いて去った夫や恋人へ送った書簡、という想定の詩である。神話には男女差別はなく、手紙を書く必要も無かった筈だが、という思いが、この詩の興趣を薄めている。

 このあと「黒海からの便り」より6編が訳載されている。

Photo「フリー素材タウン」より、黄薔薇の1枚。

2014年5月 7日 (水)

ティブッルス「詩集」より

 平凡社「世界名詩集大成(1) 古代・中世篇」(1960年・刊)より、ティブッルス「詩集」(ほぼ16編)の抄訳を読む。

 「詩人の願い」「旅先で病める詩人」「田園の祓祭」「友の誕生を祝う」の4編である。

 先月29日の記事、プロペルティウス「哀歌」に継ぐ。

 アルビウス・ティブッルス(BC48?~BC19?)は、忠実な恋人と共に暮らす牧歌的な田園生活に憧れた(「詩人の願い」)が、現実には戦闘に従い(「旅先で病める詩人」)、不幸な恋を重ね、30歳くらいで夭折した。

 裕福な家に生まれて没落した詩人らしく、鷹揚な心が厳しい環境に耐え得なかったようだ。

Photoフリー写真素材集サイト「足成」より、君子蘭の1枚。

 

2014年5月 6日 (火)

広部英一「『畝間』以後」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、未刊詩集・編の「『畝間』以後」10編を読む。

 解題に拠れば、詩集「畝間」に収録されなかった作品、または「畝間」刊行後に書きためていた作品ではないかと、推測されている。

 晩年の広部さんがなぜ、2連10行(1連5行ずつ)、行の長さを揃えた詩作に執着したのか、今もって謎であるが、新しい定型詩を提示する、という積極的な意図があったのでは、と僕は推測する。

 また詩誌「木立ち」の盟友、南信雄さんを1997年に57歳で亡くしており、悼む思いは強く、その後に「彼」「友」と詩中で呼ばれる魂は、南さんを指すと、僕は思っている。

Photo「フリー素材タウン」より、チューリップの花の1枚。

2014年4月29日 (火)

プロペルティウス「哀歌」

 平凡社「世界名詩集大成(1) 古代・中世篇」(1960年・刊)より、プロペルティウス「哀歌」の抄訳、「相聞歌」4編を読みおえる。

 この本では、今月8日の記事、ホラーティウス「カルミナ」に続く詩集である。

 「相聞歌」では、不実な娘と恋をして、誠実になれと訴えたり、思いは変わらぬと誓ったり、苦しい心中を表している。

 詩人の没年は詳らかではないが、若くして亡くなったようである。

Photo写真素材集サイト「足成」より、ハナミズキの赤花の1枚。

2014年4月27日 (日)

大杉スミ子「萌し」

Photo 県内にお住いの詩人・大杉スミ子さんが、詩集「萌(きざ)し」(2014年、紫陽社・刊)を送って下さった。

 「休息詩抄」に続く、第5詩集である。

 清い水、樹の緑などを、素材とし続けている。

 詩語を文法的に完結させない場合があって、詩意を汲み取りにくくさせている。

 あるいは彼女は、簡明な思いを伝えたいのかも知れない。

 簡明な思いが、簡明な言葉によって表し得るとは限らないので、彼女の苦闘は続くのだろう。

2014年4月17日 (木)

小畑昭八郎「えにし」

Cimg7619 県内にお住まいの詩人、小畑昭八郎さん(1933年・生れ)が、詩集「えにし」を送ってくださった。

 小畑さんは小浜市図書館に長く勤め、館長となり、定年退職している。

 また詩集、エッセイ集等の他、多くの郷土誌を執筆してきた。(「著者略歴」に拠る)。

 「書架の片隅に放置されていた作品をかき集めて作った詩集である。」「一老人のつぶやきである。」と謙遜するけれども、荒廃する状況に抵抗する意を感じる。

 出会った人たち、家族を描いて、リスペクトの思いを伝えている。

 

2014年4月15日 (火)

ウェルギリウス「田園詩」

 平凡社「世界名詩集大成(1) 古代・中世」(1960年・刊)より、ウェルギリウス「田園詩」を読みおえる。

 この本では、今月6日の記事、カトゥルス「詩集(抄)」に続く、詩集である。

 ウェルギリウス(紀元前70年~19年)の「田園詩」全10歌のうち、この本では第1歌、第4歌、第7歌、第10歌の、4歌が翻訳されている。

 解説によると、ウェルギリウスはオクタヴィアヌスの力で土地没収を免れ、「田園詩」第1歌の内容もそれを表わしているという。

 また彼の畢生の大作「アエネイス」も、カエサル(シーザー)やオクタヴィアヌスを讃える意図だったそうだ。

 僕は解説で、幻滅してしまった。思想や芸術が反権力性を失くしたら終りだ。

 筑摩書房「世界古典文学全集」第21巻「ウェルギリウス ルクレティウス」(1965年・刊)を所蔵し、「アエネイス」を読む時を楽しみにし、集英社「20世紀の文学 世界文学全集」第7巻(1966年・刊)で、ヘルマン・ブロッホの長編小説「ウェルギリウスの死」を読む時を楽しみにしていたのに、かの古代ローマ詩人への憧れが失せてしまった。

Photo「フリー素材タウン」より、菜の花の1枚。

2014年4月10日 (木)

広部英一「『木の舟』以前」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、未刊詩集・編中の「『木の舟』以前」を読みおえる。

 巻末の「解題」によると、原稿用紙に清書され、油紙の封筒に収められて、保管されていた。1部、詩誌等に既発表の作品もある。

 モダニズム風の作品、生活詩風の作品もある。

 広部さんが、第1詩集「木の舟」(1959年・刊)で、若くして亡くなった母親を恋う抒情詩人として出港したので、初期詩集として後に上梓しづらくなったのだろうか。

 なお「解題」には、最初の小詩集「花塊」(1953年・刊)が資料として、全編を収められている。

Photo「フリー素材タウン」より、桜の1枚。

2014年4月 6日 (日)

カトゥルス「詩集(抄)」

 平凡社「世界名詩集大成(1)古代・中世」(1960年・刊)より、カトゥルス「詩集(抄)」(呉茂一・坪井光雄・訳)を読みおえる。

 今月3日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「ギリシア詞華集」に継ぐ詩集である。

 カトゥルスは、紀元前85年~54年頃の人と推定され、古代ローマの抒情詩人として評価高く、117編が遺されている。

 恋の詩、身めぐりの人をうたった詩、死者を悼む詩、いずれも詩情豊かである。

 中でも僕は、弟の死を歎く「逢うての別れを」に最も惹かれた。

Photo「フリー素材タウン」より、八重桜の1枚。

2014年4月 3日 (木)

「ギリシア詞華集」

 平凡社「世界名詩集大成(1)古代・中世篇」(1960年・刊)より、「ギリシア詞華集」(呉茂一・訳)を読みおえる。

 扉の写真の中に、同名で紹介されている詩集があるので、アンソロジー原典よりの抄訳であろう。

 10数行までの短詩で、「献詩及び時詠」「恋愛詩」「悼詩及碑銘」「風刺詩」の4章より成る。

 哲学者プラトンの真作、疑問符つきの作品も、幾つかずつ収められている。

 ギリシア神話より遠い、世俗の詩だが、気品のある作品も多い。

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚。

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