カテゴリ「詩集」の190件の記事 Feed

2014年3月30日 (日)

白秋「水墨集」「海豹と雲」

 岩波文庫「北原白秋詩集」(下)」(2007年・刊)より、「水墨集」「海豹と雲」を読みおえる。いずれも抄出である。

 今月21日の記事、「畑の祭」に継ぐ。

 「水墨集」の序文にあたる「芸術の円光」で白秋は、「詩の香気と品位」「気韻」を主張している。

 また「海豹と雲」(1929年・刊)において、「蛍に」では蛍に、「月光の谿」では月に、「鋼鉄風景」では鋼鉄の構造物に、神を視ている。

 後記では「日本古神道の精神を此の近代に新に再造する」(孫引き)と述べるなど、かなり国粋的になっていたようである。

 最後の詩集「新頌」(1940年・刊)は、編者・安藤元雄の判断で、この文庫本詩集に収められていない。

A「フリー素材タウン」より、椿の1枚。

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2014年3月26日 (水)

「アナクレオンテア」10編

 平凡社「世界名詩集大成 (1) 古代・中世編」(1960年・刊)より、「アナクレオンテア」10編(呉茂一・訳)を読みおえる。いずれも短詩である。

 3月14日の記事、テオクリトス「詩集(抄)」に続く。

 「アナクレオンテア」とは「アナクレオン風」(歌謡)という意味で、アナクレオンの真作はないとされる。前2世紀~後1世紀、2世紀~6世紀の作品とみられる。

 このような古詩を日本語訳で読める事は尊い。しかし歌謡風だからといって、音数律、俗語にこだわった点は、今となっては傷のように思える。

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚。

2014年3月21日 (金)

白秋「畑の祭」

 岩波文庫「北原白秋詩集(下)」(2007年・刊)より、「畑の祭」を読みおえる。

 これは単行の詩集ではなく、1920年版「白秋詩集」(アルス・刊)に、未刊行詩集として収録された。

 この詩集を収めたのは、編者・安藤元雄のこだわりがある。白秋が口語自由詩を拒否して、文語定型詩を貫いた、という定説に対して、口語の語りを採った作品もあるという例として挙げている。

 僕は文語・口語の論に興味はない。ただ、この集の終わりに収められている、歌謡としても名高い「城ケ島の雨」に感嘆するばかりだ。

Photo「フリー素材タウン」より、夕日の1枚。

2014年3月17日 (月)

白秋「真珠抄」「白金之独楽」

 岩波文庫「北原白秋詩集(下)」(2007年・刊)より、「真珠抄」「白金之独楽」(共に選集)を読みおえる。

 今月10日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「東京景物詩 及其他」に続く。

 この時期、白秋は生家の破産と家族の扶養、また隣家の人妻との交際による告訴と収監に遭い、精神的にも経済的にも苦しい状態だった。

 「真珠抄」では、中世歌謡にも通じる1行詩を重ねて1編とし、1編1行の作品もある。

 「白金之独楽」は、漢字とカタカナより成り、法悦状態の3昼夜に書き上げられた。

 共にのちに、白秋を国民詩人たらしめる、契機となったとされる。

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、白花沈丁花の1枚。

2014年3月16日 (日)

広部英一「畝間」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、8番めの詩集、「畝間」を読みおえる。生前最後に上梓した詩集である。6章62編。

 この詩集には、大きな特徴がある。1連5行、2連で1編とし、1編の行の長さはきれいに揃えられている。

 「あとがき」では、「強いていえば推敲の過程で気紛れな遊び心が起きたからかもしれません」と述べている。

 謹厳実直に見えた広部さんが、内に秘めたユーモアかも知れない。

 新しい定型詩の提示かも知れない。

 この世での心のありよう、彼岸此岸の魂の交流を、詩に書き留めてやまなかった。

B無料写真素材集サイト「足成」より、椿の1枚。

2014年3月14日 (金)

テオクリトス「詩集(抄)」

 平凡社「世界名詩集大成 (1) 古代・中世」(1960年・刊)より、テオクリトス「詩集(抄)」(呉茂一・訳)を読みおえる。

 4編の内、「第一曲 テュルシス」は、山羊飼いに所望された羊飼いテュルシスが、ダフニスの実らない恋を唄い上げ、礼を貰う、というストーリーである。

 「第二曲 禁厭(まじない)をする女」は、薄情な男を取り戻そうと、女が様々呪いをする話である。

 「第十三曲 ヒュラース」では、ヘラクレスに大事にされた少年ヒュラースが、泉のニンフらに取り込められる。

 「第十八曲 ヘレネーの婚礼」は、省略か欠落か、1部分しか載っていないので、ストーリーが今ひとつ判らない。

 ギリシア神話と世俗が、並列する世界である。

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、湖の1枚。

2014年3月12日 (水)

カリマコス「讃歌」

 平凡社「世界名詩集大成 (1) 古代・中世」より、カリマコス「讃歌」第3編、第5編(松平千秋・訳)を読みおえる。

 この本は、10数年前、読みかけのまま本の山に紛れ込み、最近の整理の中で見つけ出したものである。

 古代ギリシア・ローマ、中世の詩篇を収める。

 この本では、カリマコス「讃歌」は、上記の2編しか載せていない。

 第3編では、女神アルテミス(ゼウスとレトとの子、アポロンの双生の妹)が讃えられる。第5編では、女神パラス(アテナ)の水浴の1場面が描かれる。

 2編で85項目の訳注が付き、8ページ(3段)だけれども、根気が要る。

 古代ギリシア・ローマの詩の翻訳を読める事は、大きな喜びである。

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚。

2014年3月10日 (月)

白秋「東京景物詩 及其他」

Cimg7586 岩波文庫「北原白秋詩集(下)」(2007年・刊)より、初めの詩集「東京景物詩 及其他」を読みおえる。作品は抜粋選択されている。

 2月17日の記事で取り上げた、「思ひ出」に継ぐ。

 制作時期は、「邪宗門」「思ひ出」にも1部、重なるようだ。

 都会趣味と懐旧との合わさった、芳醇な世界である。

 のちの童謡、歌謡につながる作品もある。

 未分化か総合かわからないけれども、優れた作品群だと思う。

 「白秋全集」の詩集編5巻を持っているので、最終的にはそれで詩編を読みたい。

2014年2月26日 (水)

広部英一「苜蓿」

 思潮社「広部英一全詩集」より、7番めの詩集「苜蓿」を読みおえる。

 原著は、1997年、詩学社・刊。第9回「富田砕花賞」受賞。

 今月19日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「愛染」に続く詩集である。

 広部さんは、母親の早逝によって、詩の方向を定めた。詩を書く事によって、心の傷の癒し、罪障感の浄化をはかって来た。

 そして、地域のトラウマを持つ後輩文学者たちを、文学創作による回復の契機を分かとうと、支援したのではないか。

 日常生活を愛惜する思いはあっても、形而上の「逝いた魂」に深く関わって、生活詩を書くいとまが無かったのだろう。

 1997年1月には、詩の盟友・南信雄さんを57歳の若さで亡くし、いよいよ亡き魂との交流の思いは、深まっただろう。

Photo「フリー素材タウン」より、白梅の1枚。

2014年2月19日 (水)

広部英一「愛染」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、6番めの詩集、「愛染」を読みおえる。

 今月10日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「はがき詩集『邂逅以前』」に継ぐ詩集である。

 原著は、1990年、紫陽社・刊。第31回「中日詩賞」受賞。

 6章、27編より成る。

 作品を論ずる前に、確認して置きたい事がある。

 広部さんが、公務員として実直な生を遂げた事。無頼派・破滅型の詩人ではなかった。

 詩の後輩を支援した事。多くの詩集の跋文を書き、地元文学者の多くの本を雑誌等の批評で好意的に取り上げた。また多くの読書会を主営した。

 3つめに、生活詩を越えた、形而上の詩を書いたこと。これについては、次回までの宿題としたい。

Photo「フリー素材タウン」より、白梅の1枚。

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