カテゴリ「詩集」の190件の記事 Feed

2014年2月17日 (月)

北原白秋「思ひ出」

Cimg7527 岩波文庫「北原白秋詩集(上)」(安藤元雄・編、2007年・刊)より、「思ひ出」を読みおえる。

 今月4日の記事(←リンクしてある)に書いた、「邪宗門」に継ぐ詩集である。

 第1詩集「邪宗門」は顧みられなかったが、「思ひ出」は上田敏の激賞を受け、また版を重ねた。

 しかし僕は、「邪宗門」」から「思ひ出」の移行は、後退ではなかったかと思っている。

 異国情緒から日本情緒へ、青年の覇気から幼年追憶へ。

 その長い自序「わが生ひたち」の末尾近く、「畢竟私はこの『思ひ出』に依て、故郷と幼年時代とに潔く訣別しやうと思ふ。」と自ら書いて、前進の意を表している。

2014年2月10日 (月)

広部英一「はがき詩集『邂逅以前』」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、5番めの詩集「はがき詩集『邂逅以前』」を読みおえる。

 原著は、1985年、山東郵趣会・刊。

 片面に詩を印刷した、正式な葉書20枚と、それを包む紙ケース、外箱より成る。

 うち2編は、のちに詩集「愛染」に収められたので、全詩集には18編を挙げる。

 何らかの理由でこれまでの詩集に収められなかった20編である。かけがえのない者の魂を見る詩人として、感性の上昇する途次の作品であろうか。

 僕はこの原著を持っているけれど、帯、箱などが傷んでいるので、写真を挙げない。1枚を実際に使ったように思っていたが、今数えてみると、20枚揃いだった。

2無料写真素材集サイト「足成」より、雪吊り(冬の季語)の1枚。

2014年2月 4日 (火)

北原白秋「邪宗門」

Cimg7527 岩波文庫「北原白秋詩集(上)」より、「邪宗門」を読みおえる。

 安藤元雄・編、2007年1月・刊。

 初版発行時に買った筈だから、7年待たせて読み始めた事になる。

 「邪宗門」はこれまでに、日本文学全集の詩歌句集(1ページ2段組)で読んで来たように記憶する。文庫本とはいえ、1段組は余白が多くて、ゆったりしている。

 室生犀星が「我が愛する詩人の伝記」の冒頭で、「邪宗門」を「ちんぷんかんぷん何を表象してあるのか解らなかった」と書いている。僕も雰囲気しかわからなかった。

 何度めかに「邪宗門」を読んでみて、今度はわかったような気がする。

 外来語を取り入れ、音数律を実験し、文法を守り、いわゆる南蛮情緒を醸す。まさに天才である。

 (下)巻の解説に、初版は1909年とあるから、僕の脳力からすると、100余年先を行っていた事になる。

2014年2月 2日 (日)

広部英一「わが山 ふくいの詩」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、4番めの詩集「わが山 ふくいの詩」を読みおえる。

 先月26日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「邂逅」に続く詩集である。

 原著は、1982年、福井新聞社・刊。ソネット20編を収める。

 広部さんのこの詩集は、山岳エッセイストの増永迪男さんとの対談、増永さんのエッセイ、詩編に付した「ノートから」、7氏による散文「集音マイク」、と共に収載されて(初出は福井新聞)上梓されたためか、あまり注目を集めていないようだが、僕はとても優れた詩集だと思う。

 対談の中で広部さんは、「最近は、その見えないものが、つまり死者の魂が僕には見えるわけですね。」「『母』と書いていますが、僕にとって『母』はかけがいのない人間の魂の象徴となって来ました。」等、創造の秘密を明かしている。

 また各編に付された「ノートから」では、着想を得た場面などを明かしている。

 詩想の純粋さ、表現の高度において、この詩集は優れている。ソネットという詩型によって、作品が引きしめられてもいるのだろう。

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚。

2014年1月26日 (日)

広部英一「邂逅」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年10月・刊)より、3番めの詩集「邂逅」を読み終える。

 今月20日の記事(←リンクしてある)に書いた、「鷺」に続く詩集である。

 原著は、1977年、紫陽社・刊。5章、20編を収める。第2回「地球賞」受賞。

 逝いた人たちの魂を、感覚できるもの(蜻蛉や、小鳥らしいもの)、気配として描いている。

 宗教への信仰がなく、死後の魂を信じない僕にも、親しみを感じる詩編がある。それは逝いた人たちを、僕も懐かしく思う時があるからである。

 この5章の分け方の由来もわからない僕は、良い読者ではない。

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚。

2014年1月20日 (月)

広部英一「鷺」

 思潮社「広部英一全詩集」(2013年・刊)より、第2詩集「鷺」を読みおえる。

 今月8日の記事(←リンクしてある)で紹介した、第1詩集「木の舟」に続く詩集である。

 原著は、1963年、北荘文庫・刊。森山啓・序文、20編、あとがきを収める。

 あとがきにもあるように、1963年初めの大雪(地元では38豪雪と呼びならわしている)の時、連日の除雪作業の際、亡くなった母親が娘となって心象にたちあらわれ、詩編を成した作品群である。

 働き者で、可憐、茶目けもある農村の娘として、母親の娘時代が想い描かれている。

 詩集の表題作でもある「鷺」は、お見合いのあと断られた娘の悲しみを描いて、哀憐を誘う。

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、スケートリンクの1枚。

2014年1月11日 (土)

笠原仙一「明日のまほろば」

Cimg7480 越前市にお住まいの笠原仙一さんが、第5詩集「明日のまほろば ~越前武生からの祈り~」を送ってくださった。

 コール・サック社・刊、ソフトカバー、帯、栞。

 彼は、日本詩人クラブ、詩人会議、福井詩人会議「水脈」、福井県詩人懇話会、各会員。

 佐相憲一氏の栞解説文が、よくこの詩集を捉えている。

 「第一章 まほろばの夢」では、険しい世相の中で、「弥勒菩薩半跏像」のように信仰にも心寄せながら、未来を見つめている。

 「第二章 越前武生にて」では、さびれていく地元ながら、安住の里を描く。

 「第三章 三・一一」では、東日本大震災・福島原発事故への心痛を述べる。自分の立つ立場がはっきりしていないと、書けない事だ。

 「第四章 みらいごと」では、退職近い教職など過去を振り返りもしながら、明るくも思えない未来に立ち向かおうとしている。

2014年1月 8日 (水)

広部英一「木の舟」

Cimg7477 昨年10月5日の「第8回苜蓿忌」のあと、夫人より頂いた「広部英一全詩集」(2013年10月、思潮社・刊、774ページ)より、第1詩集「木の舟」を読みおえる。

 夫人と、膨大な詩編と資料を集め組み立てた、関わられた方々に感謝する。

 僕たちは、広部さん(生前に親しかった訳ではないが、僕が若い頃より援けてもらった思いがあるので、「さん」づけで書かせていただく)より受けた恩恵に感謝して、文学に励めば良いので、作品にあれこれ言うことはない。

 ただこのブログは、書評どころか、感想としても未熟で、「こんな本を読んだよ」という報告に過ぎない。

 「木の舟」の初めでは、生前の母や母性をめぐって描かれる。

 「五人兄弟」より、母の急篤と葬儀が描かれる。「みずうみ」などの母恋の作品のあと、「木の舟」で、「おつかさまは木の舟/船の名は観音菩薩号」とうたった。

 観音(観世音)と菩薩は違って、共に仏の次に位する。広部英一さんが仏のように、福井の詩界、文学界に施した慈愛を受けて、僕たちは励むのみである。

2013年12月 9日 (月)

「現代詩年鑑2014」

Cimg7429 そろそろ思潮社の「現代詩年鑑」が発行される時期だと、Amazonで検索すると、「現代詩手帖12月号 現代詩年鑑2014」が出ていた。

 しかしショピングカートに入らない。他にも方法を取ってみるが、購入へ進まない。問い合わせたメールへの返事で、Amazonに不具合があった事を知る。

 そういう訳で、この本は楽天から買った。Amazonの不具合は、復旧したようである。

 この年鑑は、毎年、年末に買ってきた。ネットで注文するようになる以前から、本屋に取寄せ依頼して。

 しかしこの日本の詩の最前線は、僕の思いより、遥かに遠い。

 この本は安くないので、「贅沢」というより、僕の嫌いな「無駄」に入りそうだ。ぱらぱら捲るくらいなら、図書館の紙誌コーナーで見ればよい。

2013年11月29日 (金)

「ハイネ全詩集 Ⅳ」

Cimg7394 全5巻の「ハイネ全詩集」より、「Ⅳ ロマンツェーロ」を読みおえる。

 1973年、角川書店・刊。井上正蔵・完訳。

 今年9月13日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「Ⅲ」に継ぐ本である。

 月日をかけて、こま切れに読んで来たせいもあるだろうが、この詩集の統一したイメージが浮かばない。

 彼は病気でほとんど寝たきりであり、無神論から信仰に復したと、「後記」で述べている。ただし「どんな教会、教派の束縛も受けたことはない」とも。

 この503ページに及ぶ詩集の最後の長詩「宗教論争」でも、キリスト教・僧とユダヤ教・法教師の論争を想像で描いているが、ケリは付けていない。

 数言で表わせる主張は望まないが、詩想の1つの趣意はほしい。

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