新潮文庫、2冊、平成21年・刊。
異性関係に乱脈なテレビ記者の主人公が、インドで取材中にライオンに左手を食われるものの、その手の移植手術(結果的には失敗する)を縁に、ある未亡人とのほんものの愛に目覚める、というストーリーである。
テレビ局の人間や医師など、庶民の感覚(金銭感覚でなく、倫理感)とずれているように思う。
ジョン・アーヴィングの小説を、僕はずっと読んできたが、「熊を放つ」での鮮鋭なデビューは別として、「オウエンのために祈りを」が今は最も優れた作品のように思う。
宗教感を誉めるのではなく、すべてに意義があるという、予定調和的な(ハッピーエンドでなくとも)主張に惹かれる。
三浦哲郎(2010年9月8日の、逝去を惜しむ記事 、他の記事あり)の小説、「はまなす物語」を読みおえる。
講談社文庫、1989年・刊。
読売新聞の連載小説だったとの事。
彼の長編小説として、優れていると僕は思う。
嫁いで東京に暮らす姉(夫に愛人ができて、離婚する)、主人公の青年(ある社長の娘に好かれながら、今は拒んでいる)、地元の青年と好かれあう妹、3姉弟妹が、はまなすの花のように、けなげに生き抜くさまが描かれる。
イメージ豊かな描写が多く、すぐ映画になりそうな作品だ。映画化されたかどうかは、知らないけれど。
僕の庭に、はまなすが1株あって、さわやかな花を咲かすが、樹勢が強く、近くの株を食い尽くして(比喩的に)、大株になっている。
ティム・オブライエンの小説、「世界のすべての七月」を読みおえる。
村上春樹・訳、文春文庫、2009年6月・刊。
僕は彼の小説、「本当の戦争の話をしよう」「ニュークリア・エイジ」「カチアートを追跡して」を、ともに文庫本で読んでいる。
この小説は、1969年に大学を卒業した者の11人が、31年後の2000年に大学に集まって、同窓会を催すストーリーである。過去の場面もしばしば現れる。
ベトナム戦争で片足を失った者、再発癌を病む者など、それぞれトラブルを抱えながら、人生のハッピーエンドを求めて、藻掻いている。
年齢は少し違うが、フラワー・チルドレンの一員だった(?)者として、共感するエピソードも多い。
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