カテゴリ「小説」の116件の記事 Feed

2011年10月13日 (木)

深沢七郎「千秋楽」

Cimg5377 深沢七郎の小説、「千秋楽」を読みおえる。

 彼の小説を読んだのは、2009年9月9日の短編小説集「楢山節考」(記事あり)以来である。

 新潮文庫、1974年2刷。

 「深沢七郎集」10冊は高価なので買えず、「深沢七郎傑作小説集」4冊を2009年6月12日に買ってあり(記事あり)、その第3巻にも収まっているのだが、今回も文庫本で読んだ。

 著者によると、「日劇ミュージックホール」に出演していた時の見聞を基にした作品らしい。

 芸人の檜舞台に初出演する主人公、ドンチョーをめぐる人々の物語である。

 さまざまな立場の人々だが、人間関係の軋轢がほとんど無く、あっても苦しげには描かれていない。

2011年9月29日 (木)

江國香織「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」

Cimg5329  江國香織の短編小説集、「泳ぐのに、安全でも適切でもありません」を読みおえる。

 集英社文庫、2005年・刊。

 彼女はこの小説集で2001年、第15回山本周五郎賞を受賞している。

 青年男女の恋、夫婦間の感情を描く、小説10編が収められる。

 テーマは甘い(あるいは苦い)が、描写が浮ついていない。

 また外国での恋を描いても、留学経験があるからか、ストーリーがスムーズである。

 ただしリアリズムというのではなく、感情の表現が豊かなのである。

2011年9月20日 (火)

石田衣良「40」

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 一昨日に購入を報告したものの内、石田衣良の小説、「40 フォーティ 翼ふたたび」を読みおえる。

 講談社文庫、2009年・刊。

 40歳の主人公がやむなく、プロデュース業(個人企業)を起こし、40歳代の顧客の依頼を解決してゆくストーリーである。

 依頼はリアルで、凋落した元IT企業社長、40歳の引き籠り男性をかかえた老両親、フリーター歴20年だが個人起業した男性、など7話であり、主人公はスタッフとともに解決していく。

 人物すべてがある意味で善人で、問題を次々解決して成功を重ねる。

 そんなおいしい話はないよな、と思いながらも、感動する場面の多い小説だった。

2011年9月 3日 (土)

ジョン・アーヴィング「第四の手」

Cimg5278














 ジョン・アーヴィングの小説、「第四の手」を読みおえる。

 新潮文庫、2冊、平成21年・刊。

 異性関係に乱脈なテレビ記者の主人公が、インドで取材中にライオンに左手を食われるものの、その手の移植手術(結果的には失敗する)を縁に、ある未亡人とのほんものの愛に目覚める、というストーリーである。

 テレビ局の人間や医師など、庶民の感覚(金銭感覚でなく、倫理感)とずれているように思う。

 ジョン・アーヴィングの小説を、僕はずっと読んできたが、「熊を放つ」での鮮鋭なデビューは別として、「オウエンのために祈りを」が今は最も優れた作品のように思う。

 宗教感を誉めるのではなく、すべてに意義があるという、予定調和的な(ハッピーエンドでなくとも)主張に惹かれる。

2011年8月31日 (水)

三浦哲郎「はまなす物語」

Cimg5266 三浦哲郎(2010年9月8日の、逝去を惜しむ記事 、他の記事あり)の小説、「はまなす物語」を読みおえる。

 講談社文庫、1989年・刊。

 読売新聞の連載小説だったとの事。

 彼の長編小説として、優れていると僕は思う。

 嫁いで東京に暮らす姉(夫に愛人ができて、離婚する)、主人公の青年(ある社長の娘に好かれながら、今は拒んでいる)、地元の青年と好かれあう妹、3姉弟妹が、はまなすの花のように、けなげに生き抜くさまが描かれる。

 イメージ豊かな描写が多く、すぐ映画になりそうな作品だ。映画化されたかどうかは、知らないけれど。

 僕の庭に、はまなすが1株あって、さわやかな花を咲かすが、樹勢が強く、近くの株を食い尽くして(比喩的に)、大株になっている。

2011年8月17日 (水)

ティム・オブライエン「世界のすべての七月」

Cimg5236 ティム・オブライエンの小説、「世界のすべての七月」を読みおえる。

 村上春樹・訳、文春文庫、2009年6月・刊。

 僕は彼の小説、「本当の戦争の話をしよう」「ニュークリア・エイジ」「カチアートを追跡して」を、ともに文庫本で読んでいる。

 この小説は、1969年に大学を卒業した者の11人が、31年後の2000年に大学に集まって、同窓会を催すストーリーである。過去の場面もしばしば現れる。

 ベトナム戦争で片足を失った者、再発癌を病む者など、それぞれトラブルを抱えながら、人生のハッピーエンドを求めて、藻掻いている。

 年齢は少し違うが、フラワー・チルドレンの一員だった(?)者として、共感するエピソードも多い。

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