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2010年6月の29件の記事

2010年6月 9日 (水)

小池圭子「プロティアの花」

002  埼玉県に在住の歌人・小池圭子さん(「未来」会員)の歌集、「プロティアの花」を読みおえる。

 文芸社、2003年・刊。

 この歌集は、「夕空のゴンドラ」「ガンジスの人魚」に続く、彼女の第3歌集である。

 これまでの歌集に続き、海外旅行詠が多い。

 アメリカ(2章)、南インド、シルクロード、ベトナム、マレーシア、南アフリカ、と多くの国・地域を旅し、積極的に短歌を詠んでいる。

また夫との国内旅行、日常での歌作にも秀でた作品が多い。

 以下に5首を引く。

老医師のべっ甲眼鏡にほこり浮くことしの春の定期健診

垂直に切り立つ岩に若者ら甲虫となり登りゆくなり

駅ひとつ歩く通勤の習慣をおとうと三人その父を継ぐ

計りくれ包みくれ言葉かけくるるわが下町の肉屋の店主

舐められて立ちあがりたる麒麟の仔サバンナの大き虹の輪の下

2010年6月 8日 (火)

グレイス・ペイリー「人生のちょっとした煩い」

003  アメリカの女性作家、グレイス・ペイリー(1922~2007、享年・84)の短編小説集、「人生のちょっとした煩い(わずらい)」を読みおえる。

 文春文庫、2009年・刊。

 村上春樹・訳、帯。

 この本には、10編の短編小説と、19ページにわたる「訳者あとがき」、作家本人の短いエッセイが、収められる。

 悲惨な事態を、軽い文体で描いているようだ。

 レイモンド・カーヴァーに通うところがあるとされるけれど、彼は悲惨な事態を明るく描いたようだ(村上春樹・訳の「CARVER'S DOZEN」に拠る)。

 村上春樹が翻訳する最近の小説(僕の蔵書で)は、詩を書く(書いた)作家のものが多いようだ。

2010年6月 7日 (月)

ハイネ「ルテーチア」

001  松籟社のホームページより注文していた、ハイネ「ルテーチア」が届く。

 松籟社、1999年・刊。

 木庭宏・責任編集、498ページ、帯。

 このブログの5月13日の記事に書いたように、松籟社のホームページより「ハイネ散文作品集」第6巻を買ったのだけれど、そのページにこの本の紹介があって、少し高価なのだけれども、ほしくなって買ってしまった。

 「ルテーチア」とはドイツ語で「パリ」を指し、2月革命、7月革命当時のパリの様子を、ハイネがドイツの新聞にルポルタージュした記事と補遺を、集めた本である。

 世界史に詳しくないので、山川出版社の「世界史小辞典」で調べると、パリ・コミューンとは関わりないようである。

 ハイネの散文を読んだことがないので、どのようなものか、全くわからない。

2010年6月 6日 (日)

「群青」編集会議

001  午後2時より、「喫茶コケッティ」にて、同人詩誌「群青」第18号の編集会議を持った。

 集まったのは同人のうち、僕、こぐま星座さん、AUさんの3名である。

 同人のKMさんは、都合により欠席。ただし以前に、彼女のゲラは郵送し、校正を済ませて、僕の手に戻っていた。

 僕が、パソコンのワードで打って用意した誌面稿は、「群青」第18号の、目次、詩4編、エッセイ1編、奥付けの7枚である。

 会議はすぐ済んで、あとはよもやま話である。僕はこぐま星座さんに、借りていた「寝ながら学べる構造主義」を返す。

 AUさんが、詩と小説をガンガン書いているそうで、圧倒される。

2010年6月 5日 (土)

DVD「大地のパノラマ」

Dvd_003_2  DVDセット「ユネスコ 世界遺産」より、第8巻「大地のパノラマ」を観おえる。

 カラー映像、55分。

 アメリカ「ハワイ火山国立公園」、アメリカ「グランドキャニオン国立公園」、中国「黄山」、ブルガリア「ピリン国立公園」、カナダ「カナディアン・ロッキー山脈公園群」の5編である。

 僕は、自然か街かと問われれば自然派だし(はっきり言って百姓の次男坊)、山と川の子(海や湖にはなじまなかった)で、少年時代は川で泳ぎ、山へは毎年「杉起こし」に行った。元気な頃の祖父の、炭作り(山の中で)を見た時代もある。

 空からの撮影を含む、自然の映像は美しく、心を澄ませる。

2010年6月 4日 (金)

福田章二「喪失」

002  福田章二の短編小説集「喪失」を読みおえる。

 中公文庫、昭和48年・刊。

 この本には、「蝶をちぎった男の話」、「喪失」、「封印は花やかに」の、3編の小説が収められている。作者の19歳~21歳の作品である。

 うち「喪失」は、第3回中央公論新人賞を受賞している。

 これは、時間とお金と才能をもてあました、ブルジョア青年の物語である。

 近親者との心理的駆け引き、自己分析に、多大なエネルギーを費やす。お金のかからない、時間を費消する、ゲームである。繊細さは認めるけれど。

 この3作のあと、彼は沈黙した。10年後に、庄司薫・名の「赤頭巾ちゃんシリーズ」4作がベストセラーになって(僕も読んだ)、注目を集めたが、そのしばらくあとから再び沈黙し、現在に至っている。

2010年6月 3日 (木)

内田樹「寝ながら学べる構造主義」

001  内田樹(うちだ・たつる)の「寝ながら学べる構造主義」を読みおえる。

 文春新書、平成14年・4刷。

 この本は、5月22日の「詩の研究会」5月例会(ブログ記事にアップ済み)で、こぐま星座さんから哲学史のレクチュアを受けたおり、彼から借りたものである。

 構造主義について、概説的にわかりやすく説かれているのは良い。

 構造主義の四銃士とされる、フーコー、バルト、レヴィ・ストロース、ラカンの著作を1冊も読んでいない。

 フーコー、ストロースはわずかに、著書を持っているので、読んでみなくては。

 構造主義が倒したとされる、実存主義の本も、ほとんど読んでいないので、それから読まなくてはいけないか?

 世は「ポスト・モダン以後」の思潮らしいのに。

2010年6月 2日 (水)

篠田悌二郎「四季薔薇」

 角川書店「増補 現代俳句大系」の第1巻(昭和56年・刊)より、第10番めの句集、篠田悌二郎「四季薔薇」を読みおえる。

 原著は、昭和8年、馬酔木発行所・刊。

 題名の「四季薔薇」は、今で言うところの「四季咲き薔薇」のことだろう。

 後記には「ホトトギスの客観写生の説に迷はされてゐた」とあって、水原秋桜子の「馬酔木」独立に同人として参加している。

 「短歌的抒情の消化」等の美質があるとされる。

 流されない(流していない)抒情の俳句として、もっと高く評価されてよいのではないか。

 以下に5句を引く。

春寒や畳の上の椅子机

白酒や玻璃さかづきの花模様

籠雲雀ひねもす鳴いて草餅屋

鶏頭や畳に蟻を見ずなりぬ

鳰二つかづき潜きてへだたりぬ

2010年6月 1日 (火)

田江岑子「水のノート」

003  田江岑子さんの歌集、「水のノート」を読みおえる。

 2005年、美研インターナショナル・刊。

 いわゆるビジュアル歌集である。本文の地は、ピントの大きく外れた自然写真のようなものに、木の葉や蝶や鳥のイラストをあしらってある。

 1首2行書き、多くは1ページ2首である。

 帯とそのキャッチコピーはあるけれども、跋文も後書きもない。サンマリノ共和国初代特命全権大使、マンリオ・カデロ氏の短い言葉があるのみである。

 以下に5首を引く。

水流る砕けさばしる落下する青葉隠れに母は見ていむ

木漏れ日のゆれる泉を掬いのむここよりけもの道あゆむべし

鮎一尾描かれてある飾り皿水に沈めて故郷をよびぬ

人間と鬼との間(あわい)川ながれどこで散りしか紅葉ながれ来

一頭の馬おのずから群れと化し地吹雪となり曠野を走る

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