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2012年10月の30件の記事

2012年10月21日 (日)

春日井建「朝の水」

Cimg6520 砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、最後の第9歌集、「朝の水」を読みおえる。

 原著は、2004年、短歌研究社・刊。411首。

 2004年5月15日に歌集発行、その1週間後の5月22日、中咽頭癌により65歳で逝いた。

 この歌集では、闘病の中で、食事やスポーツ観戦など、生を惜しんだ。

 華々しい青年時代の出発、歌の別れ、けじめをつけての歌壇復帰、自己の作品の発展と共に、短歌結社を営んだ。

 61歳で癌が発見され、65歳で惜しまれてなくなった。

 彼の性的偏向、一時的な短歌との別離がありながら、品格を保って歌人の生を徹した事は、称賛されるべきである。

 以下に7首を引く。

細幹よりさらなる細枝葉ごもりに紋白のやうな花とびかひつ

先発メンバー表にまづ見る三都主(サントス)の風切羽もつ脚をよろこぶ

一刻の長さ一日の短さを体感しつつ湯浴みしてゐる

帰らざる時知らしめて庭隅の白まんじゆしやげ咲き足りて消ゆ

流動食といへども喉に障る日は茶をのみて足る日向の椅子に

文鳥はひとりし遊びわれは書く性格の応(かな)ふ生きものを得つ

神託はつひに降(くだ)れり 日に三たび麻薬をのみて痛みを払へ

2012年10月20日 (土)

エッセイ集「父と母の昔話」

Cimg6516 日本エッセイスト・クラブ編「’96年版ベスト・エッセイ集 父と母の昔話」を読みおえる。

 文春文庫、1999年・刊。65編。

 先の10月10日の記事で紹介した、「’95年版 お父っつあんの冒険」に次ぐ本である。

 前年の阪神・淡路大震災に関わって、作家・今井美沙子「大震災にまつわる『夢の知らせ虫の知らせ』」、歌人・河野裕子「機会詩としての短歌 ――阪神大震災の歌」、作家・加賀乙彦「小便するな」がある。

 また前年は、戦後50年めという事で、行司・式守与太夫「父の戦死地」、作家・神坂次郎「敗戦五十年目の暑い夏に」、某社代表取締役・松尾文夫「ドレスデンと東京」(戦後のけじめの付け方が、日独で異なる事を書く)がある。

 また不況を生き延び抜け出ようというのか、ジャーナリスト・櫻井よしこ「前向きっていいわね」(苦境を生き抜いた、母の言葉)等がある。

 シリアスな内容のエッセイが多い印象だ。

2012年10月18日 (木)

春日井建「井泉」

 砂子屋書房「春日井建全歌集」より、第8歌集「井泉」を読みおえる。

 原著は、2002年、砂子屋書房・刊。370首。

 1999年(61歳)、咽頭癌が見つけられ、入院、いったん退院する。2000年には、癌が再発、余命1年と告げられる。

 癌の闘病短歌というと、死を覚悟した者の、この世へ残すメッセージという思い込みが僕にある。ジャンルは違うが、作家・高見順の詩集「死の淵より」がそうだった。

 この歌集では、ラジウム岩盤浴の「雪とラヂウム」26首、放射線湯浴の「井泉」50首等があるが、叙景歌もあるなど、「歌空間を顕在化していく」歌人の自覚があっただろう。

 巻末に、歌人であった母の死を悼む、「朱唇」26首が載る。

 以下に7首を引く。

扁桃(あーもんど)ふくらむのどかさしあたり襟巻をして春雪を浴ぶ

天使的午睡と言はむのどを通るもの少なければ疲れ易くて

書きあまし見のこせしまま純青(ひたさを)に過ぎなむ時を肯はむとす

枇杷の葉をそれぞれ患(や)める個所にあて岩に伏しをり遊びのごとし

湯に首を打たせてラドン吸ひながら屋根の雪おろす人を見てゐつ

眠る前に母が蔵(しま)ふはわたくしの耳とぞ言へる二つの莟

うなだれゐし薔薇(さうび)二輪を水切りしいくばくもなく逝きたり母は

2012年10月17日 (水)

黄花ミニ薔薇

Cimg6501
 キッチンの窓辺で、黄花ミニ薔薇が咲いている。

 11個上がった莟のうち、7輪が咲いた。

 莟のほどけかかったもの(最も見頃である)、花の咲ききったもの、など。生長が一様ではないので。

 今年1月にホームセンターで莟付き株を買って、何回めの開花だろう。

 今年7月23日の記事で、3輪の開花を報告して以来である。その記事にある3つの莟は、そのあとそれなりに咲いた。

 今期が、今年最後の花となるだろう。

 残る莟が咲いたなら、このブログで報告したい。

2012年10月16日 (火)

歌誌とエッセイ集

Cimg6505Cimg6508















 今日午前、商店集合地「ワッセ」にある、書店「SuperKaBoS ワッセ店」へ行った。

 お目当ての総合歌誌、「歌壇」11月号はすぐ見つけた。

 パソコン本の棚で、「できるExcelデータベース」の2010版があった(2002~2007版は持っている)が、買わなかった。

 またAmazon内のマーケットプレイス「駿河屋」より、古本「’97年版ベストエッセイ集 司馬さんの大阪弁」(文春文庫、日本エッセイスト・クラブ編、2000年・刊)が届いた。この年刊エッセイ集のシリーズを読み続けているが、この巻(他にも)が手許に無いからである。

 この本の値段は1円である。送料が250円と一定なので、実際の送料との差額が店の儲けになる。ただしAmazonも一定額の手数料を差し引いて、利益とする。細ごまと、せちがらい世である。

2012年10月15日 (月)

木瓜の実と木通

Cimg6496
 庭の木瓜(ボケ)の幾つかの株から、大小あわせて7つの実を採った。病気や虫の跡がある。

 木瓜の実は、生食できないので、おもに木瓜酒にする。僕は今はもう、果実酒に興味がないので、仕込まない。

 追熟させて、部屋に置いたりカバンに入れたり、天然の芳香剤にしようと思う。

 写真の右上は、木通(アケビ)である。

 職場のある人が、Sさんに分けた幾つかの実のうち、さらに1つを僕がお裾分けしてもらったもの。

 未熟果を追熟させたが、食べられなかった。観賞用としても、珍しく、きれいである。

2012年10月14日 (日)

支部10月歌会

Cimg6498 今日の午後1時より、K会館の1室で、「コスモス短歌会」F支部10月歌会が持たれた。

 僕は、9月の支部歌会に欠席した(仕事の都合により)ので、2ヶ月ぶりの参加である。

 事前1首出詠15名、当日参加者11名だった。

 U支部長の司会で、プリントされた出詠1首ずつに、2、3名が批評を述べ、支部長の講評と添削例提示で、次に進んだ。

 僕とTさんは、各自の電子辞書を援用した。また途中休憩では、たくさんのお菓子が配られ、皆が会前に買ったボトル茶などと共に、味わった。

 僕の1首は、3ヶ所の小さな添削を受けた。

 11月の忘年歌会の予定を、これから決める話などを交わして、午後4時ころに散会した。

2012年10月13日 (土)

柏原兵三「独身者の憂鬱」

Cimg6491 柏原兵三の小説「独身者の憂鬱」を読みおえる。

 中央公論社、1978年4版(1972年初版)。

 箱あり、帯なし。今月6日のこのブログで、買った事に言及している。

 柏原兵三(1933~1972、満38歳で急逝)は、ドイツ文学者、大学教員、作家、翻訳者。

 1968年、「徳山道助の帰郷」で、第58回芥川賞受賞。

 主人公は、大学卒業、修士課程、博士課程に進む。

 その間に、大学の先輩関係者の外国留学により、その部屋を預かって住む、という事を3回(1回、1年~1年半)繰り返す。

 主人公が、部屋をきれいに住み、部屋を出る時に汚れ傷みが無い、という話が1部で広まったためである。

 主人公は、淡い恋が何度かありながら、結婚の目途としていた「3並び」(33歳のこと)になっても結婚しない。現代の晩婚・非婚を、先取りしているようだ。

 主人公の、医学部を辞め、文学部に入り、ドイツ文学を研究して博士課程に進む、という設定は著者と同じであるが、著者には(ウィキペディアに拠ると)息子がいるので、私小説とは言えない所がある。

2012年10月12日 (金)

春日井建「白雨」

 砂子屋書房「春日井建全歌集」(2010年・刊)より、第7歌集「白雨」を読みおえる。

 原著は、1999年、短歌研究社・刊。359首。

 今月3日のこのブログで紹介した、「友の書」に次ぐ歌集である。 

 歌集名の「白雨」は、自然現象の白雨(夕立、にわか雨、の意)の他に、「思いがけなくやってくる運命」を意識したもの。作品は、癌告知以前だが、編集は告知以後なので、その感慨もあるだろう。

 「短歌研究」誌上に発表された、30首連載8回の内の「白雨」30首と、角川「短歌」に発表された「高原抄」21首により、第34回短歌研究賞受賞(この歌集に収録)、また先の「友の書」と、この「白雨」を合わせて、第27回日本歌人クラブ賞、第34回迢空賞を受賞して、栄誉の多い歌集である。

 以下に7首を引く。

(ことわり)の外とも見えて訃の報がとどきぬ妹は寡婦となりたり

これは樫あれは榛(はしばみ)おもむろに夕暮れはきてひと色となる

発語とは思はざれども樅の木が風に揺らぎてさはさは音す

山小屋の部屋の灯明りそのしじま見咎めたるか青葉木菟啼く

いづこにて死すとも客死カプチーノとシャンパンの日々過ぎて帰らな

ひんやりと秋は到れりこの朝の幸福の木に水をやるべし

操りし白帆の日々は杳かなれ吹きすぎてゆく風の脚見ゆ

2012年10月11日 (木)

詩誌「青魚」No.77

Cimg6489 T晃弘さんから、同人詩誌「青魚(せいぎょ)」No.77が10冊、届く。

 2012年10月1日、鯖江詩の会・刊。

 「青魚」は、鯖江市・在住の詩人たちが中心となって始まった、同人詩誌である。今は県内各地、県外の同人も多い。名簿には14名が載る。

 僕は「よく忘れる 二」を含む、ソネット10編を載せてもらった。内容は、僕のもう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」(このブログのリンク集にあり)で、発表して行く予定(ただし今は他のシリーズを載せているので、少しあとになるだろう)。

 T吉弘さんの「父の回想記」は、自分の知らない時からの父、そしてその父に可愛がられた少年時代を回想して、物語性も見せながら、素直な優れた作品になっている。

 T幸男さんの「悠久八月」ほか七編・手紙では、その活力の高さと、量の多さに、圧倒される。たとえば「怪け物都市」の語に、「ビヒモスシティ」のルビが振られたり、現代日本語に英語、ギリシア語(?)、古語のルビを振るなど、ボキャブラリィの多さと深さは、ショッキングである。

 この詩誌の「来る者は拒まず、去る者は追わず」的な方針が好ましい。

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