カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2013年12月24日 (火)

小池光「草の庭」

Cimg7452 砂子屋書房・現代短歌文庫の「続 小池光歌集」(2010年・再版)より、第4歌集「草の庭」を読みおえる。

 原著は、1995年、砂子屋書房・刊。

 今月20日の「日々の思い出」の記事で、彼の受賞歴を列記したけれど、僕は彼の作品が、今1つ胸の腑に落ちない。

 彼の第1歌集「バルサの翼」の「あとがき」に、以下のようにある。「(前略)つまり僕は歌を<作って>きたのである。歌をうたったのでも、詠んだのでもなく、歌を作ったのである。(中略)<伝統詩>としての短歌、という発想ほどなじめなかったものはない(後略)」。その立場は、大前提として続いている。

 僕は「短歌は自己救済の文学である」という説を実感し、信じて、作歌している。その説の根拠は明らかにされていないが、伝統的定型詩である事もその1つだろうし、宮師の詠まれたように「素直懸命に」詠む事で得られる恩恵だと思う。

 この「草の庭」には、1種の終末感のようなものを感じる。ただしそれから、彼の作品がどう進展したか、僕はまだ知らない。

 以下に5首を引く。詞書は省略させてもらった。

ただしろく灯台のこる終末をおもひゑがきて屋上くだる

はるかなる野辺の送りに野球帽子とりて礼(ゐや)せり少年われは

巡礼の一人のごとくくちなはは草の庭より消え去りゆきぬ

かへりくるランドセルみればそれぞれに小太鼓の撥二本さしをり

お母さんどこへゆくの、といふこゑが悲鳴にちかく聞こゆる夕(ゆふべ)

2013年12月20日 (金)

小池光「日々の思い出」

Cimg7452 砂子屋書房の現代短歌文庫「続 小池光歌集」(2010年・再版)より、第3歌集「日々の思い出」全編を読みおえる。

 原著は、1988年、雁書館・刊。

 ここで、彼のおもな受賞歴を挙げておこう。

 1978年、第1歌集「バルサの翼」で、第23回「現代歌人協会賞」。1995年、第4歌集「草の庭」で、第1回「寺山修司短歌賞」。2000年、第5歌集「静物」で、「芸術選奨・文部科学大臣新人賞」。2004年、第40回「短歌研究賞」。同年、第6歌集「滴滴集」で、第16回「斎藤茂吉短歌文学賞」。同年、第7歌集「時のめぐりに」で、第39回「迢空賞」。2011年、第8歌集「山鳩集」で、第3回「小野市詩歌文学賞」。2013年、紫綬褒章。(ウィキペディア等に拠る)。

 同シリーズ3冊の、写真の表情が陰鬱そうで気になる。教師という仕事、上京者の生活は、ストレス多いものだろうか。「沈鬱な顔」「こゑの陰にこもりて」とも自ら詠んでいる。

 この本より、1ページ1段、1首1行となり、行間はともかく、読みやすい。歌集としても、逆年順編集を捨てたようである。

 以下に5首を引く。詞書は省かせてもらった。

暑のなごりほのかに曳ける石のうへ秋のかなへびは戦(そよ)ぐがにゐる

わが少女、神を讃へてややもすれば常軌を外(そ)れてゆく気配あり

よれよれにただとんがつてゆくわれに麦茶を運ぶ人の近づく

淋しくて食ひはじめたる落花生とどまりあへぬくるしみ来たる

喉のおくならぬこころの奥底のいがいがなれば葛湯が効(き)かむ

2013年12月18日 (水)

歌誌2冊

Cimg7447  1昨日(12月16日、月曜日)に、歌誌「コスモス」2014年1月号が届いた。月曜日に発送では到着が遅くなる地域があると、14日(土曜日)に発送を急いでくださったものだろう。

 特集は、「第60回O先生賞発表」。

 ここに「コスモス」読了の記事を書いても、僕はその後を読んでいて、たとえば12月号は、記事に書いた項目の他に、「その一集」を外国・北海道から順に南下して、福岡県(98ページ)まで読んだ。

 今日午後、ショッピングモール「パワーセンター ワッセ」内の書店、「KaBoSワッセ店」で、総合歌誌「歌壇」2014年1月号を買った。

 新春巻頭作品が並び、華やかである。出来得るかぎり、読むつもりである。

 

2013年12月17日 (火)

小池光「廃駅」

Cimg7440 砂子屋書房の現代短歌文庫「小池光歌集」より、第2歌集「廃駅」全編を読みおえる。

 今月13日の記事(←リンクしてある)で紹介した「バルサの翼」全編、歌論4編、解説2編と共に収められている。

 原著は、1982年、沖積舎・刊。1978年~1981年の作品を収める。

 この歌集も、先の「バルサの翼」と同じく、逆年順編集である。不自然だし、僕は反対する。

 読み進めると下手になるとは言わないが、明らかに完成度が下がってくる。作品が盛り下がるようで、読み進めるモチベーションが下がる。

 以下に5首を引く。

北欧の白木の卓はかがよひて汗、涎、なみだのたぐひを弾く

元旦やひのまるといふ降伏の旗掲げつつ家いへしづか

人間(じんかん)に溺るる日日に水は立つただパスカルの定理にそひて

人体を皮膚つつみ閉ぢくちびるの紅花(こうか)うるほふゆふまぐれ来つ

水辺に夏しのび来て真夜中のなぐさめにさらふ力学あはれ

2013年12月13日 (金)

小池光「バルサの翼」

Cimg7440 砂子屋書房の現代短歌文庫「小池光歌集」(2003年3刷)より、第1歌集「バルサの翼」を読みおえる。

 先の11月12日の記事「3冊と1誌」で、購入を紹介した本である。その記事と、そこでも紹介したソネット「渋る」で、1ページ2段、1首2行書きは困ると書いたが、同時に購入した「続 同」「続々 同」では、1ページ1段、1首1行書きになっていた。僕以前にも、批判する読者がいたのだろう。

 彼は1947年・生まれ、1972年に東北大学理学部大学院・修了、その頃に短歌に出会って「短歌人」に入会した。

 1975年・上京、私立高校の教師となる。(この本の裏表紙の、著者紹介に拠る)。

 この歌集(1978年、沖積舎・刊)で僕にわからない作品があり、逆年順編集も賛成できない。

 彼には、東北より上京した歌人の寺山修司(のちに短歌より離れたけれど)の影響がある。

 また斎藤茂吉、岡井隆、永田和宏らに繋がる、理系出身歌人の輝きがある。

 以下に6首を引く。

雪に傘、あはれむやみにあかるくて生きて負ふ苦をわれはうたがふ

あぢさゐの素枯れあふるる暗がりへみどりごの父帰り来たれり

野にひびくかるき音して折られたる感触もすでにみづからのもの (骨折)

ぎりぎりと執着し来ておのれなる山椒魚(さんせう)の吐く息のみじかさ

表情のひとつひとつを喚びかへし合歓の花高き夏は来たりぬ

祝祭日のみじかき昼を満たしくる酸(す)ゆきチエホフの断片たりし

 

2013年12月 5日 (木)

俵万智「オレがマリオ」

Cimg7417 Amazonに注文した、俵万智・第5歌集「オレがマリオ」が届き、ここ数日で読みおえた。

 なお表紙の写真は、事情により、トリミングしてある。

 文藝春秋、2013年11月30日・刊。341首。

 「子を連れて西へ西へと逃げてゆく愚かな母と言うならば言え」「母さんは合っていたのか人生に答え合わせはなくて海鳴り」と詠うけれども、決断の答えは歴史がなしてくれると、僕はおもう。

 彼女は、大阪生まれ、福井育ち、東京の大学で学び、仙台市でシングルマザー生活、震災・原発事故で沖縄移住、と根無し草のようで、あわれでもある。

 もっとも百姓の次男ながら若くして故郷にUターン、還暦を越えてこの地で終わりそうな僕も、対照的に、哀れではある?。

 以下に6首を引く。

「オレが今マリオなんだよ」島に来て子はゲーム機に触れなくなりぬ

人の子を呼び捨てにして可愛がる島の緑に注ぐスコール

「鳴かぬなら鳴かんでええわホトトギス」平成の世を生きる息子は

どんぐりを集めている子並べる子中を見たい子投げてみたい子

記憶にはなき父の顔 シャボン玉吹き続けおり孫と競いて

「ツイッター始めました」と書いてみる冷やし中華のチラシのように

2013年12月 1日 (日)

「歌壇」12月号

Cimg7410 綜合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2013年12月号を読みおえる。

 特集の「今年の収穫、今年の百首」は、10歌人が今年の推す10首を挙げて、小文を付したものである。

 僕はこういうアンソロジーを読まない(読みきれない)のだけれども、昨日に電車で出掛ける用があって、車内や乗り換えの待ち時間に読んだ。

 震災や原発事故を詠い続けて、立派なものだ。

 「コスモス」の歌人も、活躍している。「短歌と随想十二か月」の担当最後、田宮朋子さんの「母のベッド」7首は、優れた作品揃いである。付された短文「小現実を歌にせむかな」は深みがある。

2013年11月23日 (土)

「コスモス」12月号

 結社歌誌「コスモス」2013年12月号を読む。

 初めから「その一集」特選欄まで、「COSMOS集」(「その二集」「あすなろ集」」の特選欄)、「新・扇状地」、他を読みおえる。

 僕が付箋を貼ったのは、「COSMOS集」のK・郁夫さんの、次の1首(132ページ上段)。

榧の実のほのかににほふ境内に祭り準備の村びと集ふ

 田舎の祭り(秋祭りであろうか)の、わびしい賑わいを思わせて、僕にも実感がある。

Phm10_0233


ダウンロード・フォト集より、野の花の1枚。

2013年11月22日 (金)

佐野四郎「湖畔の薄」

Cimg7388 「コスモス」の先達歌人、佐野四郎の第4歌集、「湖畔の薄」を読みおえる。

 1978年、伊麻書房・刊。579首。

 この歌集は、造りがとても豪華である。

 箱には和紙(と思われる)の題簽を貼り(題は宮柊二の選と筆に成る)、本体には宮柊二の短冊2つ、会津八一の短冊1つを、緻密なカラー写真(当時では並々ではなかったと思われる)で収めている。また本体にはビニールカバーが巻かれている。

 彼は富士山に近い山梨県に住み、執筆と農耕の生活を送ったようである。歌の多くは自然詠である。

 また言葉の殆んどは和語であり、漢字のヨミにも訓読が当てられている。

 以下に人事詠を多く5首を引く。

訪ふ人の全く絶えたる古墓の天屋(あまや)に杉の枯葉は嵩む

めらめらと奔る炎にあそびゐつ仕事終りし野に藁焚きて

杳き日に手を引かれ父と越えし峠(たを)径を狭めて葛の葉茂る

下り来し山川二つ出合ひつつこの高原に清き波上ぐ

街辻に延べし蓆に鈴振りて乙女ら清(さや)に稚児の舞まふ

2013年11月18日 (月)

2誌+1冊

Cimg7373

Cimg7376_2 1昨日の11月16日の午前、書店「KaBoS ワッセ店」にて、総合歌誌「歌壇」12月号を買った。

 特集は「今年の収穫、今年の百首」で、早くも(?)年末ムードである。

 今日(11月18日・月曜日)昼に、結社歌誌「コスモス」12月号が届いた。

 僕の歌は、(10首出詠のうち)3首選だった。残念。

 Amazonのマーケットプレイス「バリューブックス」に注文していた、日本エッセイスト・クラブ編「’09年版ベスト・エッセイ集 死ぬのによい日だ」(文春文庫)が届く。

 題名は縁起でもないが、僕が読書を再開したシリーズの、未読最新本である。

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