カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2013年11月12日 (火)

3冊と1誌

Cimg7360

Cimg7364 Amazonより現代短歌文庫(砂子屋書房)「小池光歌集」「続 同」「続々 同」3冊が届いた。

 僕のアメブロ「新サスケと短歌と詩」の、2012年10月31日の記事(←リンクしてある)にソネット「渋る」で取り上げた題材である。

 1冊に2歌集ずつ完本で入っている、お買い得の本だが、感性が買うことを渋る、と書いた。

 1ページ2段、1首2行書き、活字は小さいが、致し方ない。

 Amazonのページに「在庫1冊あります」「ご注文はお早めに」のように書いてあって、焦りもしたのだが、あとのページで「入荷予定あり」とあって、「煽るなよ」と思った事だった。

 小池光は僕より3歳年上で、大学研究科を卒業し、就職・結婚して、外面上は順調に生活して来たのだった。

 兵庫県・在住の詩人、S・陽子さんよりお便りを添えて、同人詩誌「アリゼ」第157号が送られて来た。忝い事である。

2013年11月 9日 (土)

蓮井澄子「ひとつ葉の記」

Cimg7350 蓮井澄子(はすい・すみこ)さんの第1歌集、「ひとつ葉の記」を読みおえる。

 2005年、青磁社・刊。

 彼女は当時、「未来」会員、米田律子の選を受けている。

 「未来」では短歌の芸術性を求めるようだけれども、うまくゆかないと奇抜さになる。

 「花」とは奇抜さでも豪華さでもない、と今の僕は思う。

 僕が思う「花」とは、水彩画(実物どころか、写真集さえ多くは、見ていないが)の鮮やかさを、イメージする。

 この歌集には、多くの優れた生活詠もある。

 以下に7首を引く。

椅子持ちて空気うすしと家内をさまよう姑よ肺気腫なれば

嫁がざる娘と二人いる平穏をかりそめごとと知りつつ夜半に

香りなき料理楽しむと言いし母テレビのまえに笑うははるけし

使い捨てカイロ敷き詰め避難所に寒夜の暖をとりいると聞く

廃屋となれど故郷父母の起き伏す気配 井戸水温し

幼子を三人連れたる若き日のわがかなしみを今娘(こ)がもたむ

先逝きし子は昼月に似るとあり亡き母の記にこころさわだつ

2013年10月30日 (水)

「歌壇」11月号

Cimg7316 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)の、2013年11月号を読みおえる。作品をおもに読んで、散文はあまり読んでいない。

 特集の「『赤光』百年」も読まなかった。

 彼のように歌を詠むことは出来ないし、彼のように生きるべきでもない。

 ふだんはしないのだが、1首に付箋を貼った。

 柴田義則さん(未来、幻桃、所属)の「小紅(おべに)の渡し」7首(144ページ)より、次の作品である。

花嫁が水面を鏡に紅をさす昔むかしの噺思わせ

 新妻であった彼女の、夢や情をたくさん壊して来た自分だな、と反省している。

2013年10月21日 (月)

清水泰子「野あざみ」

Cimg7302 清水泰子(しみず・やすこ、ペンネーム)さんの第2歌集、「野あざみ」を読みおえる。

 2006年、本阿弥書店・刊。319首。

 彼女は出版当時、「未来」会員、「黒豹」同人、日本歌人クラブ会員。

 岡井隆の選を受けて、芸術性を追うようだ。

 ただし僕は、生活の1歩1歩を、歌に刻み付けたほうが、良いような気がする。

 短歌の性質に合っており、創る者の心性への好影響も大きいと考える。

 以下に7首を引く。

生きてゐる魚を絶たむとはかなくもわが腕にいまみなぎる力

ひつさげて歩くに重き思ひ出がスーパーの袋にのしかかりくる

(こ)の婚の日が決まりたり乳色の雲は流れてカフェにひとり

白木綿(しらゆふ)しろき菊の香りに囲まれて夫のかんばせ和しつつ澄めり

一族の盆の集まり鮎食ひてたあれも言はず亡き父のこと

若き日は恐いもの知らずでありにしをもみぢに耳を焦がしゆくなり

泡盛にレモンをしぼり乾杯す今日から春とかたみに言ひて

2013年10月19日 (土)

「コスモス」と「歌壇」

Cimg7298  1昨日(10月17日)に結社歌誌「コスモス」2013年11月号が届いた。

 僕の歌は、5月号以来の特選(5首掲載)だった。内容については、アメーバブログ「新サスケと短歌と詩」の今日の記事(←リンクしてある)をご覧ください。

 また総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2013年11月号を、Amazonに注文して、送ってもらった。

 本屋へ行って、他の本もぶらぶら探して回りたいのだが、小さな事情があるのだ。

2013年10月10日 (木)

十鳥敏夫「游方」

Cimg7272 十鳥敏夫(じゅうとり・としお)さんの、「青宇」に続く第5歌集「游方(いふはう)」を読みおえる。

 2009年、本阿弥書店・刊。462首。

 著者は、前登志夫に師事。「ヤママユ」同人、詩誌「湖」同人。

 前登志夫の師系の前川佐美雄(「日本歌人」創刊)の系の歌人(塚本邦雄、山中智恵子、等)は、僕はなじみにくい。

 十鳥さんの場合、己の愚を押し出している所があるが、僕は僕の出来得る限り、理性的でありたいと願っている。

 戦後教育の恩恵を受けたと考える者の、1立場である。

 以下に7首を引く。

竹林の奥より颯々あゆみくる死にてだんだんに大きくなる人

元日のひさしに降りる雀どち降りそこねし一羽たたらを踏めり

戦争をからだの芯から知る人も老いさらばへてさくら咲きいづ

朝夕をファミリー単位に並びたりつばめは電線が何よりも好き

苦も楽もきれいさつぱりほとけへと近づくいのちつぶさに目守(まも)

朝星、夜星はたらきづめの母者びとこんなわづかな骨になりたまふ

ひと日づつ身にし溜まれるつみとがはごみの袋に容れて出すべし

2013年10月 2日 (水)

染野太朗「あの日の海」

Cimg7256 染野太朗さんの第1歌集、「あの日の海」(2011年、本阿弥書店・刊、まひる野叢書第282篇)を読みおえる。

 島田修三・帯文。

 染野太朗(そめの・たろう)さんは、1977年・生、1995年「まひる野」入会、2004年より教職に就く。

 欺瞞の多い生活に悩み、心を病んで、休職、通院したが、復職したようだ。

 教職は羨ましいようだが、ストレスが多く、悩みも多いようだ。

 以下に7首を引く。

元素記号を唱えるように結婚を告げたる友この明るさは何

教室のうしろに立った母たちの海で死んでも濡れない茶髪

玉葱を炒めておれば鍋底にうらみつらみの凝りはじめぬ

銃弾を箸につまめば店員が銃を差し出す「それ〈当たり〉です」

桃色の布団に妻は尾の切れた蜥蜴のようだ伏して泣きおり

アイビーがこのひと月をまた伸びて心療内科の待合室に

東京に降る雪よりもあっけなくぼくの不安は新薬に消ゆ

2013年10月 1日 (火)

「歌壇」10月号

Cimg7253 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2013年10月号を読みおえる。

 目次ページが9月号と同じだったミスは、1珍事だろう。

 短歌作品をおもに読んで、散文(評論など)では全部を読まなかったものもある。

 高野公彦(「コスモス」編集長、他)の「へびの目」20首に注目。

 次の「原子炉の炉心溶融(メルトダウン)の焦熱か今年の夏の日々の猛暑は」「原発の真上通つたカモメ言ふ 空があつーい、羽が抜けるよ」2首には違和感を持った。

 「原発は薄目で海を見てをりぬ薄目の奥に光る蛇の目」は、汚染水流出を当時に予言していたようで、怖くさえある。

 特別企画「筑紫歌壇賞の作家競詠」が、12氏の作品を載せて、健在ぶりに僕は喜んだ。

2013年9月30日 (月)

蓮本ひろ子「自動扉」

Cimg7249 昨日に続き「コスモス」の先達、蓮本ひろ子さんの第1歌集、「自動扉」(1979年、伊麻書房・刊、コスモス叢書第124篇、502首)を読みおえる。

 彼女は人との接し方が上手ではなかったようだ(僕が上手だと言うのではなく、また批判するのでもない)。

 自我の強い思いは、戦後の女性解放の思潮と、その後の沈滞化に関わりがあるかと、僕は現の状況を知らないながら推測する。

 彼女は「あとがき」で、「そして、あっ、と気がついたとき、最初、一本の藁でしかなかった短歌は、いつのまにか私の心の命綱にかわっていました。」と述べている。

 気になる歌が多いのだけれども、以下に7首を引く。

時ながく没り陽は照りてをさな子の乳の香そみし袷をほどく

上げ底の底剥ぐ如き同性の眼もて車中の女を眺む

関西弁聞くは心の安らぐと訛失せたる夫にしていふ

高速度撮影のごとゆつくりとパイプ引きぬき襲ひ来しとぞ

山津波に似たる時代を生きしかば筋の通りしことは信ぜず

種あかし知りたる手品みるおもひ齢(よはひ)かたぶき異性にむかふ

毎日のくらしのつけは必ずやわが身に来ると知りたり今に

2013年9月29日 (日)

等々力亞紀子「透明に」

Cimg7247 「コスモス」の先達、等々力亞紀子さんの第2歌集、「透明に」(1978年、白玉書房・刊、コスモス叢書第116篇)を読みおえる。

 結婚してわずかで夫と死別し、一人息子は遠く働き、自分も一人働いて暮らした。心苦しい生活で、短歌が生きる力の1つになったであろう。

 出版にあたり、宮師がすべての作品(538首)に目を通し、題を選び、題簽を書いた、と「あとがき」にある。

 彼女は健康で、働く意欲もあり、また「コスモス」大会に参加するなど、頑張り屋で羨ましい。

 写真は、箱の表である。

 以下に7首を引く。

疾風(はやち)吹く夕べの街に買ひもてりグラジオラスとダリヤの球根

わがひとり働く事に變らねど子に會ひてより何かがちがふ

疲れては椅子にゐねむりしています構へなき顔みて了ひたり

歳晩の勤めをさめて乘りたれば疲れねむりき終着驛まで

四十日添ひたりしのみの夫にして把へがたなくわが裡に生く

耳さとく齒の勁きことたのみとしあきらめ惡く老にし向ふ

夜の刻に除籍謄本いだし見つ父も母もまた夫も亡ければ

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