カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2012年4月 9日 (月)

永井陽子「葦牙」

Cimg5811 「永井陽子全歌集」より、初めの句歌集「葦牙(あしかび)」を読みおえる。

 全歌集は、2005年、青幻舎・発売。

 写真は、その表紙である。このブログの2009年2月16日の記事に、三月書房のネット通販より購入とあるので、読みはじめるまで3年余を待たせたわけだ。

 「葦牙」は、1973年、愛知県立女子短期大学文芸部(彼女が卒業したばかりの大学)・刊。

 97句、113首を収める。

 俳句でも、進歩は速かったようだ。

 例えば前後の句、

湖青し めくらの甲冑魚がはねる

海底の甲冑魚にも花明り

では後の作が、言葉がずっとなめらかだ。

 最も好感を持ったのは、次の句である。

クマンバチが私の視線を折りに来る

 しかし短歌の抒情が彼女に合った(角川短歌賞候補、短歌新人賞受賞)ようで、短歌の世界で活躍した。

2012年3月29日 (木)

岡井隆「旅のあとさき、詩歌のあれこれ」

 「岡井隆全歌集」(全4巻)の第Ⅳ巻より、最終編の「旅のあとさき、詩歌のあれこれ」を読みおえる。

 表題のあとの添え書きに、「本書は三部構成の歌文集である。…旅の歌をまとめた第一章のみ収録した。」とある。

 NHKBSテレビに出演する、オーストリア・ドイツの旅に生まれた作品である。斎藤茂吉の留学地にこだわる意味もある。

 これで僕は、岡井隆の22歌集と、詩集などを読みおえたことになる。岡井隆のそれ以後の歌集について、僕がどうするか、今はわからない。

 本編より、5首を引く。

懐石が進み小さな貝が出たうつむいたままなら聞き易く

戦争が近いといふかクリムトの美女がわたしから遠い程度に

ゼウス今し寂かに牛になるところくれなゐの角が角ぐんで、額(ぬか)

小羊の甘ゆるところ大天使うなだれ佇てり吾(われ)も吾(あ)も吾(あれ)

降りるべき駅が近づく外套(ぐわいたう)が翼であつたことにおどろく

2012年3月27日 (火)

「歌壇」4月号

Cimg5782 本阿弥書店・発行の「歌壇」2012年4月号を読む。

 特集の「厨歌と厠歌」は、あまり読まなかった。

 ただ或る時期、女性にとって厨歌を詠む事が、好ましく思われなかったと知る。

 特別企画「続・近江をうたう」には惹かれた。第1回がいつだったか、知らない。

 佐佐木幸綱氏を含め7氏が、近江を巡り、競詠を発表する。

 「期待の作家 クローズアップ ④ 斉藤斉藤」の、「死ぬと町」30首も、僕の理解力の範囲内である。

 小島ゆかり氏の「雪凍る窓」20首は、飛躍した発想だ。

2012年3月18日 (日)

「歌壇」4月号と、パソコン本

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 昨日の午後、商店集合地「ワッセ」へ行き、書店「KaBoS ワッセ店」へ入った。

 総合歌誌「歌壇」は、ここで買うようにしている。ネットでも買えるが、1月に1回くらいは新刊書店に入らないと、見落としの本があっては困る(?)。

 「歌壇」4月号を買う。特集は「厨歌と厠歌―キッチンとトイレの歌」である。編集部の、特集の設定の苦労が偲ばれる。

 パソコン本の所で、「パソコンで困ったときに開く本 2012」を買う。

 家に「パソコンで困ったときに開く本 Office2010」があるが、今度の本はパソコン全体について解説してあり、「ウィンドウズ7対応版」なので、更に便利だろう。共に朝日新聞出版・刊。

2012年3月15日 (木)

「歌壇」3月号

Cimg5748 総合歌誌「歌壇」2012年3月号を読む。

 ただし増ページ特集の、「アンソロジー二〇一一 テーマ別私の一首 八〇〇氏」を読んでいない。

 800氏の去年1年間の最高作で、読まねばと思った。ただし800首は、歌集としても大部だ。

 それが一人ずつ作風(個性?)が違うのを、気持ちを切り替えて鑑賞するのは、辛い。

 個人歌集のように、「意識の流れ」的に(飛躍はあっても)読み進められれば良いのだが。

 それに、もう次号の「歌壇」4月号が発売されたようだ。

 3月号では、各歌人の底力を見せられる思いの、優れた作品が多かった。

2012年3月14日 (水)

岡井隆「<テロリズム>以後の感想/草の雨」

 思潮社「岡井隆全歌集」Ⅳ巻(最終巻、2006年・刊)より、「<テロリズム>以後の感想/草の雨」を読みおえる。

 テロリズムの感想の歌は、歌集での比重は大きくなく、「<テロリズム>の感想」の章でも、どちらに肩入れするというのでも無い。「樋口一葉、ウサマ・ビン・ラディンに会ひにゆく」の章は、奇想である。

 「~で朗読した」と付記される幾連があるが、朗読による影響は、僕にはわからない。

 以下に8首を引く。

伊勢生まれ知多育ちなるにほ鳥の母は対岸をうたがはざりき

ひとりひとりがさびしい熊に見えてくるあの頃は愉しい敵だつたのに

無精なる鵞鳥の歩みをみて下さい「困つたものだ」きみは言ふらむ

忘れ易き単語を手帳にメモしをりルサンチマンからスノビズムまで

文庫本になつたととても喜んでた 蜜柑の花の似合ふ人だつた

いつか来るさう思つてたがだがこんな形だとは知らなかつた深さだ

すぐそこに茜(あかね)ありしを間違つて遠い夕霧を買つてしまつた

右に折れ左にまがり帽を脱ぎまたかうぶりてわれはゆくらむ

2012年2月26日 (日)

吉田純治「夕光の石」

Cimg5707 吉田純治・歌集「夕光の石」を読みおえる。

 昭和61年、柊発行所・刊。

 箱、本体にパラフィン紙カバー。

 併せて学んでいる書道の作品の写真、熊谷太三郎の「序」、昭和18年~昭和60年の43年の作品より自選した764首、「後記」他を収める。

 彼は福井県・在住の歌人で、「柊」(アララギ系の地方誌)、「アララギ」に所属。

 昭和20年の福井空襲、昭和23年の福井大地震、昭和26年の大病を経て、昭和29年に独立開業、その後も厳しく働きながら、お孫さんを得るなど、穏やかな初老に入るまでの人生が描き尽くされる。

 評を加える事をしないが、作歌が人生の援けになった事は確かだ。

 以下に8首を引く。

今日一日働き終へし幸思ふ汚れしシャツをわが洗ひつつ

空襲のサイレン鳴りて間もあらず百雷のごと落ちくる爆弾

粥すすり生命(いのち)つなげる妻かなし乳のほそりて吾子の痩せたり

わが病癒えてよりややわが性のやさしくなりしを妻もらしけり

秋たけし夜風身にしむみ社に買ふあてもなき植木見て居り

長椅子にもたれて妻がぼつねんと坐り見てゐる病院の庭

十幾年坐る仕事にあけくれて弱まりし腰おとろへし足

視力やや回復せしを喜びて旅する妻の読経欠かさず

2012年2月24日 (金)

岡井隆「E/T」

 思潮社「岡井隆全歌集」Ⅳ(2006年・刊)より、彼の第21歌集「E/T」を読みおえる。

 原著は、2001年、書肆山田・刊。

 100余首の書き下ろし歌集である。

 巻末に、横組み多行分かち書きによる数首があるが、余興と思いたい。このあとに、同じ試みがあるかどうか、僕は知らない。

 ネット上で、短歌を横書きで引用する僕でも、定本では縦書き1行であってほしいと願っている。

 多く新妻頌より、5首を引用する。

食卓のむかうは若き妻の川ふしぎな魚の釣り上げらるる

若き妻のいやがることをすこし言ふ草いきれする臓器のことを

あぶら匂ふアトリエは隣にしづまれり妻から筆をうばつて久しい

亡き友の書き残したる文よみて宵から夜へ時(とき)濃かりける

zigzagに妻の斜面を降りてゆくあらくさの根が頬にいたくて

2012年2月21日 (火)

「宮柊二歌集」

Cimg5695
 「宮柊二歌集」を読みおえる。なお正しくは、「柊」は異体字を用いる。

 岩波文庫、宮英子・高野公彦・編、1992年・初刷。

 僕はこの本を、仕事場の作業の手空きに、少しずつ読んだ。読んでいる時、僕はいつも充実した思いでいたから、失礼にはならないだろう。

 「宮柊二集」も読みおえたけれど、このようなアンソロジーを読む事も、価値があるだろう。

 先師は、修辞の華やかな歌人ではなかったが、現実の真実を見抜いて鋭かった。また稀にある比喩なども、鋭かった。

 「コスモス」の歌人、今ある歌人が、時々戻ってゆくべき1冊だろう。

2012年2月20日 (月)

岡井隆「臓器(オルガン)」

 思潮社「岡井隆全歌集」Ⅳより、第20歌集「臓器(オルガン)」を読みおえる。

 原著は、2000年、砂子屋書房・刊。大部の歌集である。

 臓器移植、キルギス技師拉致事件等を、題材にした作品がある。

 もっとも僕は、新妻頌歌にも惹かれる。

 以下に7首を引く。

ぞくぞくと底湿りする生き方の薔薇園へ来てぬくみゐたりき

後ろ向きの姿ばかりの患者なれその深部にて臓器(オルガン)尖る

取り出されたる心臓を心臓のなき人間がしかと見送る

きづかざる潮位のやうに上がりきて妻にしあればしづかなり 水

電話は驟雨 ひとの厚意が身のうちを滴るときになみだ出でたり

立ち直り咲き始めたる一本の、鬼の微笑といはばいふべし

駅前のスーパーになく駅ビルのコンビニにないときのいらだち

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