カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2012年5月21日 (月)

永井陽子「てまり唄」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、5番めの「てまり唄」を読みおえる。

 原著は、1995年、砂子屋書房・刊。

 創作期間(1987~1993)は、前歌集「モーツァルトの電話帳」と重なりながら、二年を越して出版された。

 私性の強い作品と著者自らが「あとがき」で書く、これらの歌を僕は好きである。写実とか境涯詠を勧める訳ではないけれども。

 以下に6首を引く。

つくねんと日暮れの部屋に座りをり過去世のひとのごとき母親

猫たちにひたことみこともの言うて門を出でゆく影法師老ゆ

その肩にわが影法師触るるまで歩み寄りふとためらひ止みぬ

母とふたり生きてほとほと疲れたれば海のやうなる曇日が好き

人間はぼろぼろになり死にゆくと夜ふけておもふ母のかたへに

とむらひの日は過ぎやがて腐りゆくマスクメロンやたまごや南瓜

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写真は、記事と無関係。

ダウウンロード・フォト集より。

2012年5月20日 (日)

2冊の本

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 今日の午前に、書店「SuperKaBoSワッセ店」(これが正式名称か? レシートにそう印字されている)へ行く。

 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)6月号を買う。

 小島ゆかり氏の岡野弘彦氏への連続インタビュー、「歌は世につれ情は歌につれ」の第2回、「私の学生時代」が載る。作歌のレトリックと共に心構えを、僕たちは大先輩から学ばねばならない。

 同じテキストコーナーに、「2012囲碁年鑑」(2012年6月、日本棋院・刊)があったので、予定外だが買う。プロ・タイトル戦全棋譜、他ここ1年の情報を収める。

 検索すると(ブログには検索機能がないが、管理画面にはある)、2011年6月3日の記事に、46年ぶんめの囲碁年鑑を買った、とあるので、それに拠れば47年ぶんめの囲碁年鑑である。

 ここ数年、囲碁対局も棋譜並べも、全くしていない。

 これだけ揃えば、資料としても価値はあるだろう。

2012年5月14日 (月)

永井陽子「モーツァルトの電話帳」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、4番めの「モーツァルトの電話帳」を読みおえる。この全歌集は、1ページ最多5首で、とても読みやすい。

 原著は、1993年、河出書房新社・刊。

 180首と、エッセイ1編を収める。

 この歌集のユニークさは、1首の頭を50音順に、つまり電話帳と同じ構成の、配列にしている事である。もちろん意識して詠んだのであろう。

 ただし、言葉派≒芸術派的な作品のみではなく、ほぼ同じ時期に老母の介護という、リアル派≒生活派的な作品も創っていて、2年後の歌集「てまり唄」となる。

 「モーツァルトの電話帳」より、6首を引く。

秋の陽をかばんに詰めて帰り来るをとこひとりと暮らすもよけれ

風がリラを鳴らす太古のゆふぐれをおもひて地下の通路抜けたり

縦にむすび横にむすびてまたほどけ雲の遊戯は果てもなかりき

にはとりは昔はもっと小さかったよそして気ままに空を飛んだよ

窓に息吹きかけ月や星や木を描きつつこよひ老いゆくうさぎ

(わら)ひをるあの白雲め天と地のつっかひ棒をはづしてしまへ

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写真は、記事と無関係。

君子蘭の花と思われる。

2012年5月 8日 (火)

永井陽子「ふしぎな楽器」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、4冊めの「ふしぎな楽器」を読みおえる。

 原著は、1986年、沖積舎・刊。

 138首とエッセイ5編を収録。粟津則雄・解説。

 名古屋、京都でのシンポジウムに参加するなど、歌壇的には行動した時期だが、個人的には孤独な作歌生活だったろうと思われる。

 エッセイ「魔笛」で全身が音楽となった体験を、「あとがき」で「うたはふしぎな楽器であると、…」と述べて、音楽との親密性を語っている。

 以下に6首を引く。

今宵ぎちぎち星が燃えはて落ちぬかと大熊星座たしかめに出づ

高麗人は装ひをとき韻を解きほのかにひとをおもひそめにき

くわつと照る陽をまたくわつと押し戻し都会は熱き方形のつらなり

秋天の藍のましたに円座成し縄文人ももの食ふころぞ

ただ一挺の天与の楽器短歌といふ人体に似てやはらかな楽器

振りむけば官位のことを気に病める定家もゐたり秋の陽のなか

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写真は、記事と無関係。

ダウンロード・フォト集より。

2012年5月 3日 (木)

永井陽子「樟の木のうた」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、3冊めの「樟の木のうた」を読みおえる。

 原著は、1983年、短歌新聞社・刊。

 280首、春日井建・解説。

 彼女の歌は、幻想性、抒情性、音楽性等が高く評価されているようだ(僕が、さしでがましいけれど言うなら、古典と現代性の統合を成している)けれども、僕は作歌では生活短歌(それも人事詠)しか詠めないので、この歌集より、リアルめの8首を以下に引く。これらが歌集の歌風だと思わないで頂きたい。

夕野分だつ法起寺の塔までを草の名花の名あひおぎなへり

大津絵の鬼に背中をたたかれぬ叩かれた背がいつまでもさびし

雨あがるくきやかな尾根山萩のつのぐむころを逢ひにゆきたし

星を結びて天に柄杓を描くこと両親が教へくれし夏の夜

あした行く街があるゆゑかなしみはしづめねむれと葉月のすすき

ブランコを漕ぎいだすとき視野に入る古代の空とオニクルミの木

更科やあふるるほどの冬陽浴みさびしきもののひとつ朴の木

やさしく低く朝けの風に呼ぶこゑとなりて歌はむ樟の木のうた

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写真は、記事と無関係。ロイヤリティフリーのダウンロード・フォト集より。

2012年4月26日 (木)

「歌壇」5月号

Cimg5930 総合歌誌「歌壇」2012-5月号を読みおえる。

 おもに短歌作品を読んで、散文では読まなかったものも多い。

 創刊300号である。創刊が1987年6月で、僕が思っていたよりも、ずっと新しい。

 記念とは銘打ってないが、高野公彦氏の特別作品百首「ひとり道」と、特別企画「私と『歌壇』」16氏(各1ページ)を載せる。

 高野氏の「ひとり道」100首は、お酒、エロス、東日本大震災、等を詠んでいる。

 古稀を越えた令名高い歌人の、真情吐露には感慨を齎される。

 僕はこの頃、歳を重ねた歌人の作品に惹かれる。僕が老い始めたのだろうか、訳はわからない。

2012年4月23日 (月)

歌誌と小説

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 先日、書店「KaBoS Wasse店」へ行き、2冊を買った。

 歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2012年5月号は、創刊300号である。

 高野公彦氏の特別作品百首「ひとり道」が載る。

 また小島ゆかり氏の岡野弘彦氏への連続インタビューも始まった。

 小川洋子の小説「シュガータイム」は、中公文庫、2011年15刷。

 彼女の小説は「博士の愛した数式」を読んだ(2011年5月17日の記事に、からめの感想あり)。

 「シュガータイム」は純な恋物語のようで、「汚れつちまつた悲しみ(中原中也の詩より)」を感じるオジサンには、惹かれるものがある。

2012年4月20日 (金)

永井陽子「なよたけ拾遺」

 青幻舎「永井陽子全歌集」(2005年・刊)より、2番めの「なよたけ拾遺」を読みおえる。

 原著は、1978年、短歌人会・刊。第4回・現代歌人集会賞・受賞。

 題名は、劇団「四季」の「なよたけ」の舞台を観て、触発された為と言われる。

 短歌343首、短い物語4編、評論「式子内親王――その百首歌の世界」を収めるが、僕は短歌をのみ読み、物語の短歌以外の文、評論は読まなかった。

 私性を越えること、古典和歌へのまねびなど、無理をしていると感じられる事がある。ただし、のちの歌集を拾い読むとなめらかな流れになっているようで、読むことが楽しみである。

 以下に7首を引く。

かぜのやうに大きなつばさ来てとまるこのたそがれの山野にねむれ

月光にもえたつ石の世界より汝れは来たりき掌のないままに

ひとつびとつうちくだかれて生くる背をいざなふやうに天のゆふやみ

火の風土かぜの風土をかたり継ぐこころに生きてはるかなる空

かごめかごめうるしもみぢの輪の底ひちひさき鬼は眸を閉ぢてゐる

春の夜に逢へば鳴る骨それよりもなほとほくちちははの骨鳴る

そらの喪へひそかにふくす麦秋のこころの底を流れゆく耳

2012年4月12日 (木)

岩田亨「夜の林檎」

Cimg5834 岩田亨・第1歌集「夜の林檎」を読みおえる。

 角川書店、平成17年・刊。尾崎左永子の帯文。

 彼は「運河の会」「星座の会」所属。

 神奈川県在住、学習塾・自営。

 歌集は1ページ2首で、余裕がある。

 エッセイ2編を付す。

 初めはゆるめな印象の作品もあるが、のちに歌が締まってくると、なんだか寂しい気持ちもする。

 以下に7首を引く。

応援のわれの姿を一目(ひとめ)見て走る時の間 児(こ)は追い越さる

デジタルの時計に変えたこの朝は出勤までの手順間違う

落武者の影曳(ひ)くごとき男らがひしめき合えり 終バスの中

網を引く声の消えたる夕暮れに波立ち上がる九十九里浜

コロイドの溶液満てるガラス器に太陽光の反射が眩(まぶ)

跳躍のかたちを空に残しては敗者は順にフィールドを去る

つややかに光るトマトが食膳にあるを惜しみて最後に食す

 

2012年4月10日 (火)

「近藤芳美集」

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 ネット古書店連合「日本の古本屋」のサイトより、愛知県の「山星書店」に注文していた、「近藤芳美集」10冊揃いが届いた。

 岩波書店、2000年4月より刊行。

 以前より欲しかった本が、格安だったので買った。何かある、と覚悟していたら、箱の帯が3冊にしかなかった。月報は揃っているようだ。

 1~5巻が歌集で、そのあとは歌論、小説などである。

 生前の刊行なので、このあと「岐路」「『岐路』以後」の2歌集がある。

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