カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2016年3月19日 (土)

近藤芳美「命運」

 岩波書店「近藤芳美集」(全10巻)の第5巻より、第22歌集「命運」を読みおえる。

 歌集編・全5巻の、最終巻の最終歌集である。

 前回の「未明」は、今月12日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 原著は、2000年、砂子屋書房・刊。1998年、1999年の430首。

 この2年の間にも、韓国、ニュージーランド、中国東北部の海外詠があり、社会詠、等がある。

 第5巻にはこの後、佐伯裕子の解説、全歌の上3句に拠る「短歌索引」等を収める。

 なお第6巻以降の、歌論、小説等は、のちに読む事にして、この集の僕の読書を一旦、中断したい。

 以下に7首を引く。

召さるるとことばはありき宇品なる冬日の埠頭在りしままながら

武寧王陵重なる古墳のまに紛れひかり夏なすつつじの盛り

市場への投機が生みやまぬ危機となし資本主義制覇の十年の後

九八年終うとしバグダード攻略を遥かに伝えいまだ地の眠り

花を飾る庭を競いて町ありきクライストチャーチユーカリ高く

知るものを老いの孤立の位置といえ稀に人と会うことばへの飢え

ためらいの長き後なる旅ながら瀋陽の大き曠野の朝焼け

Photo「フリー素材タウン」より、椿の1枚。

 

2016年3月18日 (金)

歌誌2冊が届く

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 Amazonに予約しておいた、総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2016年4月号が、3月14日に発送メールを受け、翌15日に届いた。

 座談会「修辞を支えるもの」は、討議が盛り上がり、1回収載の予定が前後編になったと、短歌方面のツイートで話題になった。

 また3月16日に、結社歌誌「コスモス」2016年4月号が届いた。新しい企画が少しある。

 僕の歌は、3首選だった。アメブロ「新サスケと短歌と詩」の今日の記事(←リンクしてある)に、3首を横書きながらアップしたので、ご覧ください。

2016年3月16日 (水)

届いた2冊

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 Amazonマーケットプレイスの某店に注文した、近藤芳美・遺歌集「岐路以後」が、昨日(3月15日)に届いた。状態はごく良く、おそらく1読したのみだろう。

 岩波書店「近藤芳美集」の歌集編・全5冊を読み進んで、第5巻の「命運」を残すのみとなった。その次の「岐路」を入手したいが、Amazonマーケットプレイスでは、とんでもないプレミアムが付いている。それでその次の遺歌集「岐路以後」を購入した訳である。

 この春もまた、「年刊句集 福井県」を読みたく、福井県俳句作家協会・事務局に昨日に電話連絡すると、さっそく今日、「第54集」(2016年3月・刊)が届いた。よく読んで、詩歌の創作の勉強に資したい。

2016年3月12日 (土)

近藤芳美「未明」

 岩波書店「近藤芳美集」第5巻(2001年・刊)より、第21歌集「未明」を読みおえる。

 本巻では今月1日の記事(←リンクしてある)、「メタセコイアの庭」に継ぐ。

 原著は、1999年、砂子屋書房・刊。450首。

 1996年、97年の2年間に、スペイン・ポルトガル、ギリシア、中国、オーストリア・イタリアへ旅し、多くの作品を得ている。また敗戦記念日の思い、社会主義国家群の崩壊を問うてもいる。

 この時期の作品には、破調、助詞の省略、文法の未完結、などの詠もある。解説で佐伯裕子は、「困惑は晦渋を究め、苛立ちが調べを傷めつけてやまない。」、「詩歌は時代の苦悩をこそ負うものであり、大問題を考えて初めて日常もある、そういう姿勢を崩すことはない。」と述べている。

 短歌が好まれる基に、57577の音数律の快さがあり、その快さのない作品を読むには、小さな苦痛が伴う。

 以下に7首を引く。

一詩型に見し時を負う選択を逃れ得ざりし逃れざりしのみ

「はつかり」と呼ぶ白椿残雪の庭を導く妻のよろこびに

幾年か来りし旅にゴヤを訪うわきて老残の「黒き絵」の前

ファドの歌半ばを出でて明けとあらずひかりに伝う壁白き路地

エピダウロス古代劇場の夏一夜悲劇「エレクトラ」旅に遥けく

百日草咲き残りたる路分けて夕日のしまし杜甫の塚の傍

ゲトライデ街すでに賑わい行く程なきモーツァルト生家朝のまの冷え

Photo「フリー素材タウン」より、椿の1枚。

2016年3月 6日 (日)

「コスモス」3月号「COSMOS集」読了

 結社歌誌「コスモス」2016年3月号より、「COSMOS集」を読みおえる。

 同・「その一集」特選欄・読了は、先の2月29日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「COSMOS集」は、「その二集」と「あすなろ集」の特選欄である。

 その頃が一番元気だったなあと、「吹き溜まり」と揶揄される「その一集」に踠きながら思う。

 付箋を貼ったのは、次の1首。K・絹子さんの「ポリ袋入り」5首より。

冷蔵庫にあるものばかりの晩ごはん「ごちそうやなあ」と夫は言へり

 二人に小さな心の行き違いがあるようだが、相手が喜んでくれれば、それで良いとせねばならないだろう。

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、水仙の1枚。

2016年3月 3日 (木)

歌誌「歌壇」3月号

Cimg8727 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2016年3月号を、ほぼ読みおえる。

 到着は先の2月18日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 特集は「震災詠から見えてくるもの――東日本大震災から五年」。

 大震災を振り返る事は重要だが、安保法制への批判を逸らした感がある。僕の疑い過ぎだろうか。

 飯田彩乃さんの歌壇賞受賞第1作「永遠が近づいてくる」30首は、新鮮で落着きがある。

 「コスモス」関係では、小島ゆかりさんが座談会の司会、福士りかさんが時評「余白と奥行き」見開き2ページ、狩野一男さんが「去年今年」12首、いずれも力がこもっている。

2016年3月 1日 (火)

近藤芳美「メタセコイアの庭」

 岩波書店「近藤芳美集」第5巻(2001年・刊)より、第19歌集「メタセコイアの庭」を読みおえる。

 先の第20歌集「甲斐路・百首」(歌集順が前後する)は、先の2月11日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 原著は、1996年、砂子屋書房・刊。430首。

 沖縄県を含む国内の旅、中国、イギリスへの旅の詠に、生活、思想を問う、詠が混じる。

 苦しげな詠みぶりの歌もあって、当時の近藤芳美に詠う喜びがあったか、疑いが萌す。

 以下に7首を引く。

暁光のひろがる後の眠りしばし覚めて窓より湖の冷え

その歴史のときどきを来て旅重ぬ北京は新樹のみどり湧くまでに

終りしはときの狂信若き戦死それより友ら無名の思想の死

日のかげると見るまで暗きはヒースの群れ羊を放つはるか高きに

一年を床乱し積む書のたぐいまとう焦燥に何を為残す

静かなる威圧に二重の柵の限る行き行きて復帰二十二年の後

初めより寡黙を思う集い過ぎひとりの街によろこびもなし

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、水仙の1枚。

2016年2月29日 (月)

「コスモス」3月号「その一集」特選欄・読了

 結社歌誌「コスモス」2016年3月号の、「その一集」特選欄を読みおえる。

 その前の「月集」3欄の読了は、今月26日付けの記事(←リンクしてある)にアップした。

 この特選欄は、9選者×5特選者×5首のアップである。

 「その一集」には800人くらいの会員が在籍するかと推測され、特選は難関である。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。M・佐津子さんの5首より。

<ふるさと>のオルゴールのねぢ何百遍巻いて聞きしよ終の枕辺

 挽歌は、魂鎮めの最も有力な形式である。僕の父母が亡くなった時は共に、結社内同人歌誌「棧橋」に属していたので、存分に挽歌を発表できた。

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、水仙の1枚。

2016年2月28日 (日)

柏崎驍二「北窓集」

Cimg8740 短歌の友人に借りた、柏崎驍二・第7歌集「北窓集」を読みおえる。

 2015年9月、短歌研究社・刊。420首。

 前の歌集「百たびの雪」は、このブログの2010年10月2日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 岩手県に住んで、自身は退職し、2人のお子さんも独立した。

 2011年には大地震と原発災害があった。津波被害が、繰り返し多く詠まれている。

 著者は闘病中と聞き、結社誌「コスモス」の選も休んでいる。ご健詠を願う。

 以下に7首を引く。

風ありて雪のおもてをとぶ雪のさりさりと妻が林檎を剥けり

熊のゐる山にて採りし竹の子の白きあはれのものを賜びたり

孫つれて精一杯に逃げしとぞ夫の遺体は見つかりしとぞ

流されて家なき人も弔ひに来りて旧の住所を書けり

大ぎ波がまだ来るごどを忘れんな、おつとごろくとごろくとほつほ

近き家に少年の葬ある日なり雨が音なく巣箱を濡らす

炉に燃ゆる焔の色を見てをれば山鳩のこゑちかく啼きたり

2016年2月26日 (金)

歌誌「コスモス」3月号「月集」読了

 結社歌誌「コスモス」2016年3月号より、「月集」を読みおえる。

 「コスモス」の到着は、今月18日の記事(←リンクしてある)、「歌誌2冊」にアップした。

 「月集」とは、「月集特別作品」、「月集スバル」、「月集シリウス」の3欄のことである。

 歌には豊かな調べがあって、自由さもある。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。「月集スバル」のT・愛子さんの5首より。

「たわらまち」町の名前もうれしくてエコバッグ提げ小路を歩く

 彼女はご夫君の関係で、福井市へも滞在されるらしい。田原町は、福井市の町名を指す。

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、水仙の1枚。

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