カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2016年2月22日 (月)

若山牧水「くろ土」

 Kindle本「若山牧水大全」より、第13歌集「くろ土」を、タブレットで読みおえる。

 この前の「溪谷集」は、先の1月6日の記事(←リンクしてある)で紹介した。

 「くろ土」は、1921年(大正10年)、新潮社・刊。999首を収める(牧水は千首だと、自序で書いている)。

 自序で「『やれやれ今になつて漸く自分には歌といふものが解つて来たのかなア』といふ気持である。」と述べるごとく、後期の牧水の声価を定めた大歌集である。

 以下に8首を引く。

わが屋根に俄かに降れる夜の雨の音のたぬしも寝ざめてをれば

筒鳥のこもりて啼くはいづかたの杉にかあらしこのおほき谷の

児等病めば昼はえ喰はず小夜更けてひそかには喰ふこの梨の実を

杉垣の下葉は枯れて秋の日のあきらかなるに雀あそべり

陸稲畑過ぎ来て此処におもはぬに会へる水田の稲のつめたさ

あたりみな光りひそまる冬山の落葉木がくれこの小鳥啼く

寒き日の浅間の山の黒けぶり垂りうづまきて山の背に這ふ

夜為事の部屋にうごける風ありてこの春の夜の雨はやみたり

Photoダウンロード写真集「フォト満タン」より、冬景色の1枚。

2016年2月18日 (木)

歌誌2冊

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 Amazonに予約注文してあった総合歌誌「歌壇」2016年3月号(2月号は発売日に売り切れだったので、楽天ブックスで買った)が2月13日に発売され、翌14日(日曜日)に届いた。

 東日本大震災の、震災詠をめぐる特集、など。

 2月17日(水曜日)には、結社歌誌「コスモス」2016年3月号が届いた。4月号からの昇級者の発表がある。

 僕の歌は(10首出詠のうち)、3首選だった。内容は、もう1つのブログ「新サスケと短歌と詩」の、2月18日付け記事(←リンクしてある)にアップしたので、ご覧ください。

2016年2月13日 (土)

「コスモス」2月号「その一集」読了

 結社歌誌「コスモス」2016年2月号の、「その一集」(既報の特選欄を除く、通常欄)を読みおえる。

 この前の今号「COSMOS集」読了は、今月2日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 この集を読んでも、皆が営々としかも楽しんで、何年も何十年も、歌を詠み継いでいる事を感じる。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。M・真生さんの4首より。

猪に荒されし田は刈り取りの気力失せてか放置されをり

 猪が里に出るのは理由もあろうが、農家の心が折れるようでは、困った事態である。

Photo「フリー素材タウン」より、梅の1枚。

2016年2月11日 (木)

近藤芳美「甲斐路・百首」

 岩波書店「近藤芳美集」第5巻(2001年・刊)より、第20歌集、「甲斐路・百首」を読みおえる。

 先の1月21日の記事(←リンクしてある)、「希求」に継ぐ。

 1996年、山梨日日新聞社・刊。

 歌誌「みぎわ」(1987年~、上野久雄・主宰)の創刊10周年記念号のため、上野久雄(1927年~2008年)に求められ、3回にわたって山梨県各地を吟行した成果である。自・まえがき、上野久雄・跋、吉田漱・解説を付す。

 近藤芳美は、家庭や自然を詠っていたい、と洩らした事があるらしく、100首は爽やかであり、政治・社会を詠った詰屈はない。

 以下に5首を引く

くきやけきみどりに濡るるかまきりのいまだ幼き石塔の道

仙娥滝落つるたぎちの岩の面をさらに一すじ滝たばしれる

ようやくに桜は老樹春更くる清春芸術村甲斐駒を背に

久遠寺の春寂しらに今日を来ぬきわまるさくら道のいずくも

落葉松の樅と栂とに変るころときのま暗し登山路にして

Photo_2「フリー素材タウン」より、梅の1枚。

2016年2月 7日 (日)

タブレットより啄木「一握の砂」

 Google Play Booksよりタブレットに無料ダウンロードしておいた、石川啄木「一握の砂」を読みおえる。

 僕の短歌の始めというより、僕の文学の始めといって良く、「悲しき玩具」と共に、繰り返し読んで来た。

 繰り返し読んでいると、「立原道造詩集」と同じく、評論等にあまり取り上げられない作品でも、意義ある作品ばかりである。

 この版の表記に、9首め「しっとりと/なみだを吸へる…」などとあって、驚く。旧かなでは「しつとりと」である。底本は「日本文学全集」12「国木田独歩 石川啄木集」集英社、となっており、その本を見ると確かにそうなっている。

 さらにこの歌集は、その全集本を基として、インターネット図書館「青空文庫」で作られたファイルを基としており、そこでも「しっとりと」等となっている。。

 この流布は困った事だ。手許の新潮文庫・石川啄木「一握の砂・悲しき玩具」では「しつとりと」となっている。作品全体に促音・拗音の小文字はない。

 何か表記のルールがあるのだろうか。

 今から啄木を読むなら、先の新潮文庫をお奨めしたい。今でも流通しているかどうかは、知らないけれども。

Photo「フリー素材タウン」より、蝋梅の1枚。

2016年2月 2日 (火)

「コスモス」2月号「COSMOS集」読了

 結社歌誌「コスモス」2016年2月号の、「COSMOS集」を読みおえる。

 前に、同号「その一集」特選欄・読了は、先月27日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「COSMOS集」は、入会からの「その二集」と、それに継ぐ「あすなろ集」の、特選欄である。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。トップのI・草歩さん*(新かな遣いのマーク)の「木洩れ日」5首より。

「アンドロイドですか」と問われフリーズすスマホを持たぬ生身の身体

 アンドロイドとは、以前は「SFに登場する、人間そっくりのロボット」(広辞苑第6版)を意味した。それがグーグルが開発した、小型IT器用等のOS等に「アンドロイド」の名前を付けたから、それに関わり薄い人は戸惑う。

Photoダウンロード写真集「フォト満タン」より、雪景色の1枚。

2016年1月28日 (木)

「歌壇」2月号・読了

Cimg8687 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2016年2月号を、ほぼ読みおえる。ただし散文では、読まなかった部分も多い。

 本誌の購入は、今月20日の記事(←リンクしてある)、「歌誌2冊」にアップした。

 栗木京子さんの「日本の橋」20首は、10首めまで安保法反対(デモに参加)を詠んでいる。そのあとは少し白けたようだ。歌壇トップグループでは、しんがり戦だったかも知れない。

 また第27回歌壇賞は、飯田彩之さんの「微笑みに似る」30首が受賞した。

 このような才能を読むと、自分の能力に絶望はしないが、落胆する。

 候補作品の、ユキノ進さん「サンバを踊る三羽の鳥」は、優しい心が苛酷な仕事で、傷つくさまを描いているようで、痛切である。

 僕はあまり仕事を詠めなかった。客観視する余裕がなかったのだろう。

2016年1月27日 (水)

歌誌「コスモス」2月号「その一集」特選欄・読了

 結社歌誌「コスモス」2016年2月号の、「その一集」特選欄を読了する。

 同誌の「月集」読了は、今月23日の記事(←リンクしてあり、クリックすれば表示する)にアップした。

 「その一集」特選欄は、選者9名×特選5名×各5首の掲載である。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。S・弥代枝さんの5首より。

戦争は目に見えるけど放射能は見えないと言ふチェルノブイリ被曝者

 目に見えないサイバー戦争もあり得るし、資産凍結・禁輸などの経済制裁という戦い方もある。歌を批判するのでなく、戦争も原発事故災害も、怖い嫌なものだ、という事である。

Photoダウンロード写真集「フォト満タン」より、雪景色の1枚。

2016年1月23日 (土)

歌誌「コスモス」2月号「月集」読了

 結社歌誌「コスモス」2016年2月号の、初めの「月集」3集を読みおえる。

 「月集特別作品」、「月集スバル」、「月集シリウス」の3集である。

 「月集」3集は、24ページを占め、次の「その一集」は1集で67ページを占める。

 「月集」がいかに難関であり、ハイレベルか、わかるだろう。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。「月集シリウス」のM・小夜子さんの5首より。

わがめぐりアパートが建ち医院来てスーパー出来て雉子ゐなくなる

 4句までは、地域にとっては発展だろうが、自然が失せるのは淋しい。3句以下、主語を表わす助詞の欠けている事は、作者の苛立ちを表わすようだ。

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚。

2016年1月21日 (木)

近藤芳美「希求」

Cimg8689 岩波書店「近藤芳美集」全10巻の、歌集編最終巻、第5巻(2001年・刊。写真は、函の表)に入り、初めの第18歌集「希求」を読みおえる。

 昨年12月24日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「風のとよみ」に継ぐ。

 原著は、1994年、砂子屋書房・刊。600首を収める。

 1991年のソ連・解体、東欧・ギリシア・グアム、サイパン・フランスへの旅と共に、日常が詠われる。

 それまでギリシアへの旅を重ね、古代建築等への関心を示している。

 僕は古代ギリシア・ローマの詩を少し読み、ギリシア悲劇集も「ちくま文庫」で読んだ。ギリシア古典等に関心を寄せるのは良いが、ルネッサンス以後のギリシア理想化は過ちだと僕は思う。

 以下に7首を引く。

麵麭炙ぶるひとりの午後を片空の黄に澄み雪の曇りひろがる

必ずありてならぬ戦争となす怒り今を無力の怒りともして

一世界瓦解のために伝えらる何のクーデター街に人出でて

待ちたまう詩人たちゆえ街に訪う吾らギリシアを発たむ前の夜

アルルの町行きつたうころ雨の過ぐる無名のゴッホの歩む石だたみ

うずたかき毛髪の堆靴の堆ガス室へつづく影は全裸に

巣に籠る雉鳩も巣を狙う猫も青葉に暗し稿に倦まむとて

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