カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2013年8月16日 (金)

西東三鬼「夜の桃」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、4番めの句集、西東三鬼「夜の桃」を読みおえる。

 今月10日の記事(←リンクしてある。クリックすればジャンプする)で紹介した、橋本鷄二「年輪」に継ぐ句集である。

 原著は、1948年、七洋社・刊。

 自序、敗戦前の50句、戦後の250句を収める。

 西東三鬼(さいとう・さんき、1900~1962)は、戦前の京大俳句事件で検挙された。戦後は現代俳句で活躍した。

 僕はこの全集では、初めて戦後俳句を読んだ気がする。この巻の加藤楸邨「火の記憶」は空襲を吟じ、彼の「野哭」はまだまみえていない。

 西東三鬼「夜の桃」は、芸術的前衛性と実存的感覚でもって、敗戦後の社会を捉え得たと、僕は思う。現実は知らないのだけれども、同時期の戦後詩に若く感動した作品と、共振を感じるからである。

 以下に5句を引く。

水枕ガバリと寒い海がある

寒燈の一つ一つよ国敗れ

中年や遠くみのれる夜の桃

秋耕のおのれの影を掘起す

めつむりし孤児に烈風砂を打つ

Photo
写真素材集サイト「足成」より、水蓮の花。

花ハス公園に、ここ何年か、行っていない…。

2013年8月10日 (土)

橋本鷄二「年輪」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、3番めの句集、橋本鷄二「年輪」を読みおえる。

 先の7月23日の記事(←リンクしてある)で紹介した、大野林火「冬雁」に継ぐ句集である。

 原著は、1948年、竹書房・刊。

 1927年~1947年までの作、483句を収める。虚子・序、自跋を付す。

 全句を、「土」「日」の2部にわかち、さらに四季に分かって登載し、各句の正確な制作年次はわからない。

 戦争・敗戦は、心理の地割れ、断層を残したと思われるが、無かったかの如く渡って行ってしまうのは、よろしくない。

 以下に5句を引く。

雪沓を穿きたるままの厨ごと

瓜番のいとまにつくる藺笠かな

ふる雪や機械しづかに鉄を切る

伊賀の山四方に高しや鉾すすむ

たくさんの手のあがりたる踊かな

Phm10_0946
ダウンロード・フォト集より、トンボ(赤トンボ?)の1枚。

早く涼しい季節の来てほしいものだ。

2013年8月 6日 (火)

入野ゆき江「清流」

Cimg7143 入野ゆき江さんの第1句集、「清流」を読みおえる。

 先の8月1日の記事で購入を報せた、4冊の内の1冊である。

 ふらんす堂、2010年・刊。箱、帯。

 彼女は俳誌「朝」(岡本眸・主宰)所属。

 岡本眸「お祝いの言葉」、330句、加瀬美代子・跋「慈愛のこころ」、「あとがき」を収める。

 彼女は夫婦でクリスチャンのようで、宗教の救いと文学の救いの折り合いが、僕には今一つわからない。

 句風は大胆である。

 以下に5句を引く。

黙々と栗むく夫の長寿眉

荒磯の風摑みたる春の鳶

滝水を生活に汲みて葛の花

パン種のふくらむ気配台風裡

白湯のみて動悸なだむる霜夜かな

 なお蛇足ながら註をつけると、1句めの「夫」は「つま」、2句めの「鳶」は「とび」、3句めの「生活」は「くらし」、5句めの「白湯」は「さゆ」と、読む事と思われる。俳句や短歌には、特殊な読み方をする語や、雅語がある。

2013年8月 4日 (日)

高野日佐子「ひとつ日傘に」

Cimg7142 高野日佐子さんの第1句集、「ひとつ日傘に」を読みおえる。

 先の8月1日の記事で、購入を報せた4冊の内の、1冊である。 

 彼女は東京都・在住、俳誌「朝」(岡本眸・主宰)所属。

 2007年、ふらんす堂・刊。箱、帯。

 岡本眸の序文を得ている。

 その序文や「あとがき」で知られるのだが、彼女は病弱ながら実父母、夫と共に暮らし、家族の理解を得て作句していた。

 しかし夫が急逝、相次いで父母を亡くした。辛く心細い中で、生活の杖としてか、作句を続け、句集上梓に至った。

 以下に6句を引く。

行く秋の女人高野の風の音

手花火や縁に父はは並びゐて

パン買ひに夫と連れだつ春ゆふべ

点滴の夫と寒夜を二人きり

桐咲くやけふも遺骨のそばに母

けふはもう母の初七日白すみれ

2013年8月 1日 (木)

句集、他

 1昨日(僕の休日)にS外科医院でリハビリを受けたあと、久しぶりに「BOOK OFF 米松店」へ寄り、4冊を買った。

 いずれも1冊105円である。

  • 高野日佐子・句集「ひとつ日傘に」2007年・ふらんす堂(箱・帯)
  • 入野ゆき江・句集「清流」2010年・ふらんす堂(箱・帯)
  • 室井佑月「熱帯植物園」2000年・新潮文庫
  • 内田樹「疲れすぎて眠れぬ夜のために」2009年・角川文庫

 少しだけ前の句集が、僕の創作の刺激になる。

 室井佑月は、僕にとって新しい作家の本も読まなければ、と思って。

 内田樹の評論を、そのまままともに受け取る訳ではない。


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2013年7月28日 (日)

「上村占魚全句集」

Cimg7128Cimg7131













 京都市の書店・三月書房より、昨日(7月27日、土曜日)に「上村占魚全句集」が届いた。

 沖積舎、1991年・刊。

 箱・帯(左の写真)、本体装幀・中川一政(布装、右の写真)。

 三月書房は店販売をしているが、ホームページを持って、通信販売もしている。俳句・短歌の自由価格本(高価な本を含む)も扱っていて、この本も定価の3割(送料を含め、4,600円)である。

 上村占魚の俳句は、角川書店「増補 現代俳句大系」に収められた第1句集「鮎」が気に入って、もっと読みたいと思っていた。

 「鮎」~「自問」の10句集を収める。ただし上村占魚(うえむら・せんぎょ、1920~1996)の生前版であって、このあと句集「放眼」「玄妙」がある。三省堂「現代俳句大事典」に拠る。

 同店で自由価格本「日野草城全句集」「渡辺白泉全句集」「土屋文明書簡集」を買っており、いつ読み始めるかが問題である。

 古本で良ければ、更に安価に買える本もあるようだ。しかし三月書房のホームページは、1見の価値がある。

 

2013年7月23日 (火)

大野林火「冬雁」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、2番めの句集、大野林火(おおの・りんか、1904~1982)「冬雁(ふゆかり)」を読みおえる。

 同「大系」としては、先の7月19日の記事(←リンクしてある)、加藤楸邨「火の記憶」に継ぐ句集である。

 また同「大系」所収の大野林火の句集としては、昨年12月23日の記事(←リンクしてある)で紹介した、第3句集「早桃」に継ぐものである。

 「冬雁」は、原著・1948年、七洋社・刊。298句、短い後記を収める。

 敗戦後の生活と思想の苦しみの中で、文学創作は苛酷な事であったろう。ただし林火の42歳~43歳の句で、第4句集でもあり、俳句の伝統に恃む所もあったであろう。

 以下に5句を引く。

冬木よぎるときつぶやきとなりにけり

瓦礫に月虐げられしものばかり

虎落笛ひとふしはわが肺鳴れり

渦を解き春水としてゆたかなる

夕焼空針で突くごと星ともる



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2013年7月19日 (金)

加藤楸邨「火の記憶」

Cimg7123
 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)も、今回より第7巻(1981年・刊)に入る。

 第7巻は、箱、帯、月報あり。

 13句集を収める。

 冒頭の句集は、加藤楸邨「火の記憶」である。

 原著は、1948年、七洋社・刊。

 句集は、「大陸行以前」と「火の記憶」に別れ、「火の記憶」では、日々の米軍の空襲と戦火にさらされる(東京での)生活が吟じられる。1945年4月末から8月にかけての句帳は電車の中で紛失したとされる。

 1連ごとに多く前書を付すが、以下の5句の引用では、2番めを除き、略した。


車座にわれら藷くふわかれかな

 神風特別攻撃機隊

葉鶏頭のほむら燃ゆべし燃えにけり

爆音やおもひつめたる目に枯葉

火の色の風がうがうと木の芽だつ

焔なす雲は傾ぎて牡丹の芽

2013年7月12日 (金)

福田蓼汀「山火」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(1981年・刊)より、13番めの最後の句集、福田蓼汀(ふくだ・りょうてい)「山火」(やまび)を読みおえる。

 先の7月6日の記事(←リンクしてある)、加倉井秋を「胡桃」に続く句集である。

 原著は、1948年(昭和23年)、かに書房・刊。

 虚子の例によって長い序、600句、後記を収める。

 福田蓼汀(1905~1988)は、陸軍中将の父を持ったが、戦争吟、反戦吟どころか、敗戦を吟じた句も見せない。尋常ではない。

 俳句に美を求める芸術至上主義の立場をとったが、それは結果としての方向性だろう。

 以下に5句を引く。

寒菊と白き障子を隔て住む

夕顔や今日は言葉の多かりき

苧環や判官の墓姫の墓

大陸の綺羅星の夜を暖房車

人よりも冬木親しと病み籠る

Phm10_0584
ダウンロード・フォト集より、清流の1枚。

異常気象が常態化している日本である。

2013年7月 6日 (土)

加倉井秋を「胡桃」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(1981年・刊)より、12番めの句集、加倉井秋を「胡桃」を読みおえる。

 先の6月14日に、中村草田男の第4句集、「来し方行方」を紹介した記事(←リンクしてある)以来である。

 原著は、1948年、白砂書房・刊。

 富安風生の長い序、加倉井秋を(本命・昭夫、1909~1988)の1939年~1947年の作503句、自跋を収める。

 口語の句が多く、破調もある。

 建築デザインを本職としたので、構図の取り方に独自のものがある、とされる。

 以下に5句を引く。

扉に倚れる電車の売娘稲は黄に

活けてある芒が呆けて独身寮

ふらここにたゞ腰掛けしばかりなる

万緑や防空服をもて勤む

鉦叩き応へる声のはるかなる

Photo
写真素材サイト「足成」より、アジサイの1枚。

季節に合わせて。

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