カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2013年6月14日 (金)

中村草田男「来し方行方」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(1981年・刊)より、11番めの句集、「来し方行方」を読みおえる。

 原著は1947年、自文堂・刊。

 中村草田男(1901~1983)の第4句集であり、1941年~1947年の715句、自跋を収める。

 この「大系」では、5月8日の記事(←リンクしてある)、木村蕪城「一位」に続く。

 また中村草田男の収載句集としては、第2巻の第1句集「長子」に続く(2010年10月24日の記事←リンクしてある)作である。

 ニーチェ「ツァラトストラはかく語りき」を、訳書にて二十数回、原書にて4回、通読したとある。「ツァラトストラ」は哲学書というより、人生論、生き方論だったかと、今更ながら僕は気づく。しかし多くのエピソードが何を意味しているのか、わからない。

 以下に5句を引く。

露の鳥崖より飛べば已(すで)に高し

白鳥といふ一巨花を水に置く

深雪道来し方行方相似たり

その表札半ば埋めて燕の巣

ラグビーのせめぐ遠影たゞ戦後


人気ブログランキングへ

2013年5月 8日 (水)

木村蕪城「一位」

 角川書店「増補  現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、10番めの句集、木村蕪城「一位」を読みおえる。

 原著は、昭和22年、藤田書店・刊。

 先の4月11日の記事(←リンクしてあり)、富安風生「村住」に続く紹介である。

 高浜虚子・序、315句、後記を収める。

 木村蕪城(きむら・ぶじょう、1913~2004)は、戦前よりの肺患が治癒し、結婚、また教職をまっとうしている。

 後年、俳誌「夏炉」を主宰。

 以下に5句を引く。

酌みこぼす焼酎燃ゆる榾火かな

石蹴をして榾運びなまけゐる

簷低し林檎の花の月夜なる

一壺酒のたくはへありて茸焼く

わが宿の八十八夜産湯焚く

Phm02_0080_2
ダウンロード・フォト集より、新緑の1枚。

季節に合わせて。

2013年4月11日 (木)

富安風生「村住」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、9番めの句集、富安風生「村住」を読みおえる。

 原著は、昭和22年、七曜出版社・刊。260句。

 今年3月28日の記事(←リンクあり)、高野素十「初烏」に続く紹介である。

 富安風生(1885~1979)は、秋桜子、山本健吉と共に、この「大系」の監修者である。

 昭和15年結成の日本俳句作家協会は、会長・虚子、常任理事に小野蕪子・富安風生・中塚一碧楼、理事に水原秋桜子・他5名であった。

 また昭和17年には発展的解消をして、日本文学報国会・俳句部会となった。部長・虚子、部長代理・秋桜子、幹事長・風生、以下であった。

 また山本健吉は戦前に、人間探求派を唱導した。(いずれも、同「大系」解説に拠る)。

 また三省堂「現代俳句大事典」(2005年・刊)の、「戦争責任論争」の項に拠れば、上記役員らの戦争責任が追及されたが、「倫理的問題の追及、深化が見られないまま終息した。」とある。

 この「大系」の句集選択に僕が違和感を感じるのは、それらの傾向に拠るのだろう。未読句集は多いけれども。

 この句集にも、時代と照らし合わせると、戦争吟とわかる句がある。36年経っても、人は忘れていなかっただろう。

 以下に5句を引く。

くつろげる膝をくずさず老涼し

枯菊を剪るうす埃あがりけり

子供鍬老に適ひて草削る

春潮を見る頬杖を岩につき

泣き初めは四人の姪のどの子にて



 

 

2013年3月28日 (木)

高野素十「初烏」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、8番めの句集、高野素十「初烏」を読みおえる。

 前回は3月16日付けの記事、橋本多佳子「信濃」だった。

 原著は、昭和22年、菁柿堂・刊。

 虚子・序文、自序、654句(新年・四季別)を収める。

 高野素十(たかの・すじゅう、1893~1976)が、東大医学部を出て、法医学教授となりながら、客観写生の句を作ると、物足りない面がある。

 人間探求派、社会性俳句のように、自分の生き方の信念に賭けた所がないと、文学表現に精進しても、それだけで終わってしまうのではないか。

 この句集には、農民等の登場する句も多い。以下に5句を引く。

輪飾りのかたまり合うて燃えにけり

歩み来し人麦踏をはじめけり

ひまはりの双葉ぞくぞく日に向ひ

いちめんに菱採舟や潟暑し

ひつぱりて動かぬ橇や引つぱりぬ

Photo
 写真素材サイト「足成」より、桃の花の一枚。

 季節に合わせて。

2013年3月16日 (土)

橋本多佳子「信濃」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、7番めの句集、橋本多佳子「信濃」を読みおえる。

 今年2月16日付けの記事、前田普羅「飛騨紬」に続く紹介であり、少し間が空いた。

 「信濃」原著は、昭和27年、臼井書房・刊。序跋文無し、257句。

 橋本多佳子(はしもと・たかこ、1899~1963)は、「ホトトギス」→「馬酔木」→「天狼」と歩み、「七曜」指導・のちに主宰した。

 この句集ではまだ、情の濃い風の句は多くない。

 僕は「橋本多佳子全句集」を所蔵しており、それも機会を作って読みたい。

 以下に5句を引く。

雪山に野を界(かぎ)られて西行忌

母と子に夜も木の実の落ちしきる

学ぶ子に暁四時の油蟬

砂をゆく歩々の深さよ天の川

寒牡丹炭ひく音をはばからず

Phm10_0579
ダウンロード・フォト集より、清流の1枚。

本文とは、無関係。

2013年2月16日 (土)

前田普羅「飛騨紬」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、6番めの句集、前田普羅「飛騨紬」を読みおえる。

 原著は、昭和22年、靖文社・刊。

 自序、215句、後記を収める。

 彼の句集について、第1巻所収の「新訂 普羅句集」については、2010年7月17日の記事で、第6巻所収の「春寒浅間山 増訂版」については昨年12月28日の記事で、少し述べている。

 「春寒浅間山」、この「飛騨紬」、それに「能登蒼し」(第8巻所収)と合わせて、3部作句集と自称する。

 「飛騨紬」について、ほぼ戦時下ながら、なつかしい景色である。

 以下に5句を引く。

雪とくる音絶え星座あがりけり

顔入れて馬も涼しや花卯木

栃老いて有るほどの実をこぼしけり

樹々の雪蹴つて山鳥色つよし

正月の下駄の音する飛騨の峡

Photo_2
写真素材サイト「足成」より、白梅の1枚。

本文とは無関係。

2013年2月13日 (水)

下村槐太「光背」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻より、5番めの句集、下村槐太(しもむら・かいた、1910~1967)の「光背」を読みおえる。

 今年1月19日付けの記事、「阿部みどり女『笹鳴』」に続く句集である。

 原著は、昭和22年、金剛発行所・刊。

 自序、340句、自跋を収める。

 この句集も、彼の師・岡本松浜の遺句集「白菊」(この大系にあり)も、彼の手に成る謄写版刷りであった。

 歌集・詩集の自費出版を引き受ける出版社は多く、クラス化(差別等級化)を図っている(出版費用がとても高い)ようだが、その2句集の評価は、その傾向に1石を投じるだろう。

 以下に5句を引く。

花つけし黄楊の籬や踰えにけり

斑猫(はんめう)のをしへはじめし花のみち

露しげくなりし焦土や菜虫とる

一陣の風を仰げば白椿

青梅や昼もやす火の澄みとほる

Phm02_0412
ダウンロード・フォト集より、雪景の1枚。

本文とは無関係。

2013年1月19日 (土)

阿部みどり女「笹鳴」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、4番めの句集、阿部みどり女(あべ・みどりじょ、1886~1980)「笹鳴」を読みおえる。

 原著は、昭和22年、河北新報社・刊。

 一力五郎・序、700句(作年順)、あとがきを収める。

 先の1月9日付け記事、「鈴木花蓑句集」に継ぐ句集である。

 彼女は「ホトトギス」より出発、のちに「駒草」創刊・主宰。

 昭和22年の発行でありながら、昭和17年・18年の句が少なく、それ以後の句を載せていない事は、事情はあろうが不審である。

 以下に5句を引く。

人下ろして廻す舳や花曇

たゞ一つ白きつゝじの返り花

父が墓百里へだつる椿かな

草の芽や夕日かゞやくゴルフ場

蘆花の碑にたてば木の実のひゞき落つ

Phm10_0560
ダウンロード・フォト集より、清流の1枚。

本文と無関係。

2013年1月 9日 (水)

「鈴木花蓑句集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、3番めの句集、「鈴木花蓑句集」(遺句集)を読みおえる。

 原著は、昭和22年、笛発行所・刊。

 高浜虚子・序、876句、柏崎夢香・後記。

 先の1月3日付け記事で紹介した、上村占魚・句集「鮎」に続く句集である。

 鈴木花蓑(すずき・はなみの、1881~1942)は、俳誌「ホトトギス」で大正10年~昭和初頭にかけて、「花蓑時代」と呼ばれる活躍をした。

 妻と死別・再婚、長男の若い死去など、家庭に恵まれず、仕事にも恵まれなかった。

 自選の句稿は著者の没後、紆余曲折があって、俳人の友人たちの「花蓑句集刊行会」による努力で、刊行された。

 句集は句を春夏秋冬・新年に分け、さらにその中で季題別に分け、1句ごとに年を付した編集になっており、やや読みづらい。

 以下に5句を引く。

うらゝかや空に留まれる気球船

蒔くところありて朝顔蒔いて置く

明け易き一夜一夜の茄子漬

ふるさとに墓あるばかり盆の月

桐畑それも景色や雪のふる

 なお付けられている年別は省いた。

Phm10_0597
ダウンロード・フォト集より、清流の1枚。

本文と無関係。

 

 

2013年1月 3日 (木)

上村占魚「鮎」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、2番めの句集、上村占魚(うえむら・せんぎょ、1920~1996)の第1句集、「鮎」を読みおえる。

 原著は、昭和21年、笛発行所・刊。

 高浜虚子・序、408句、松本たかし・跋、後記を収める。

 昭和12年~20年の作品で、27歳時の句集である。

 敗戦は彼にとって挫折であったろうし、機会として利用する気持ちは無かった、と僕は思う。

 以下に5句を引く。

明日つかふ小銭もあらず春の徂く

卒業に下宿の荷物まとめけり

春燈に涙もふかずいましけり

風に解け日に解け雪の薄にごり

さくさくと麦を刈るなり運ぶなり

Phm10_0554
ダウンロード・フォト集より、渓流の1枚。

本文と無関係。

ブログランキング

  • 応援のクリックを、よろしくお願いします。
  • ブログ村も、よろしくお願いします。

最近のトラックバック

ブログパーツ

  • ツイートをフォローしてください。
  • 3カウンター
  • アクセス解析

更新ブログ

Powered by Six Apart
Member since 04/2007

日本ブログ村

  • 日本ブログ村のリストです。

人気ブログランキング

  • 応援の投票を、お願いします。

アンケート