カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2012年12月28日 (金)

前田普羅「春寒浅間山 増訂版」

Cimg6677 次に挙げる句集より、角川書店「増補 現代俳句大系」の第6巻に入る。

 全15冊を購入し、第1巻の句集より紹介してきたが、第15巻の終りに至る事があるのか、至れるとしていつ頃なのか、今の僕にはわからない。努力は重ねるつもりである。

 第1番めの句集、前田普羅「春寒浅間山」を読みおえる。

 原著は、昭和21年、靖文社・刊。215句。

 戦時中の後ろめたい事は除いて、しかも隠したと批判されてはいけないので度の軽い句をわずかに載せ、第2芸術論の吹き荒れる中で句集を出版するのは、著者は心苦しいかも知れないが、読者も心苦しい、と感じてしまうのは、僕の考え過ぎだろうか。

 以下に4句を引く。

雉子啼き轍くひこむ裾野径

春の月さしこむ家に宿とりて

吾亦紅くらし指す人もまた

うつり行く蝶々ひくし秋の山

2012年12月23日 (日)

大野林火「早桃」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、最終13番めの句集、大野林火(おおの・りんか、1904~1982)の第3句集「早桃」(さもも)を読みおえる。

 原著は、昭和21年、目黒書店・刊。

 第1、第2句集より121句、その後6年間の472句、後記を収める。

 戦後すぐに、これまでの句集抄と合わせて句集を出版している事、角川「俳句」編集長時代に「社会性論議」をリードするなど、俳壇の遣り手らしく、僕は好感を持たない。

 以下に5句を引く。

煙草喫(す)ふゆとり冬日の落つるまで

母と子に厨しづけし秋茄子

疲れしるく梅雨の電車の蒸れに立つ

焼トタン錆を流しつ梅雨つづく

炭熾(おこ)る匂ひ流れて日の出かな

Phm10_0888
ダウンロード・フォト集より、大地の1枚。

本文とは無関係。

2012年12月21日 (金)

長谷川素逝「暦日」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、12番めの句集、長谷川素逝(はせがわ・そせい)の、最終第6句集「暦日」を読みおえる。

 原著は、昭和21年、宝書房・刊。

 323句を、24節気の小題に分けて収める。

 彼は、第1句集「砲車」の戦争吟で有名であり、この「大系」の第3巻に収められている。僕は、戦争における庶民の残虐さの表れとして、取り上げなかった。

 彼は病んで帰還、「暦日」では自分の近い死を覚って、寂光のなかの句境であろうか。

 以下に5句を引く。

円光を著て鴛鴦の目をつむり

春めくと障子をしめて机にもどる

木蓮のつぼみのひかり立ちそろふ

飛鳥路の秋はしづかに土塀の日

ぬきんでて八つ手の花の日なたあり

Phm10_0874
ダウンロード・フォト集より、大地の1枚。

本文とは無関係。

2012年12月 6日 (木)

「石原吉郎句集」

 花神社「石原吉郎全詩集」より、「石原吉郎句集」を読みおえる。

 原著は、1974年、深夜叢書社・刊。

 俳誌「雲」に、1958年~1961年に発表した155句と、14句への自解を載せる。

 彼には、詩作以前に俳句を吟じた時期があり、今度は「雲」に誘われての、約3年間の句作だったという(句集あとがきに拠る)。

 その中で、詩作では追い詰めて行く心を、句作では解放しているようだ。

 以下に2句を引く。

絶叫や柘榴の傷はもはや癒えず

ヘルニアと未来をもちて寒に入る

Phm10_0103
ダウンロード・フォト集より、野の花の1枚。

本文とは無関係。

2012年12月 4日 (火)

京極杞陽「くくたち 下巻」

 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第5巻(昭和56年・刊)より、11番めの句集、京極杞陽「くくたち 下巻」を読みおえる。

 原著は、昭和22年、菁柿堂・刊。

 先の11月30日に紹介の、上巻に継ぐ。

 高浜虚子・序文(上巻と同文)、266句、後記を収める。

 この「くくたち」上下巻の内容は、敗戦前にほぼ定まっていたが、混乱の中でそのままになっていたものを、菁柿堂が出版したとの事である(上巻の自筆後記に拠る)。

 下巻の昭和17年~20年(敗戦直後を含む)の句にも、全く戦争吟がなく、僕には驚きである。

 以下に5句を引く。

秤置き駄菓子を売れる支那夜店

名刀ををさめし蔵に虫時雨

秋の夜を昼の如くに画きしゴホ

春空へ砂なげ上げてあそぶ子ら

若き画家雪の但馬の景をほめ

Phm02_0332
ダウンロード・フォト集より、黄葉の1枚。

本文とは無関係。

 

2012年11月30日 (金)

京極杞陽「くくたち 上巻」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、10番めの句集、京極杞陽「くくたち 上巻」を読みおえる。

 原著は、昭和21年、菁柿堂・刊。

 高浜虚子の序文、322句、後記を収める。

 この上巻には、昭和11年~16年の句を収める。

 俳句に素人の僕が読んでも、稚拙な作が多い。戦後すぐに、非戦だった句を集めようとすると、致し方のない事だったか。彼はまた欧米漫遊の経験があり、土地の名家で生活の苦労がなかったのかも知れない。

 以下に5句を引く。

美しく木の芽の如くつつましく

青天に音を消したる雪崩かな

白靴を穿いて歩きしアメリカよ

老犬の如くにわれも日向ぼこ

簡単な食事ストーブ蓄音機

Phm10_0120
ダウンロード・フォト集より、野の花の1枚。

本文とは無関係。

2012年11月10日 (土)

山口誓子「激浪」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、9番目の句集、山口誓子「激浪」を読みおえる。

 この句集は、昭和19年11月に青磁社で活字に組まれたが、世に出なかった。その貴重な1冊を某氏が所蔵し、ここに収められた。

 昭和21年7月、削除・追加等を加えて、青磁社から実際に刊行された。

 この巻の句集では、川田順の序歌4首、1,254句、編集後記、等を収める。

 前回の9月26日、中村汀女「汀女句集」より、ずいぶん月日が経ったが、この句集がこの第5巻の難関だったからである。多くの戦争俳句を含み、後記でも激越である。しかも「誓子俳句のピーク」(平畑静塔)などと、のちに高く評価されている。

 書く事は、恐ろしい事である。

 以下に5句を引く。

牡丹見るこの驕奢のみ許さしめ

崖攀ぢて蟹いつまでも砂こぼす

蜥蜴出て走りぬ曝書たけなはに

蟷螂に既にあらしの先迫る

海の筋いづれも秋の祭の灯

Phm10_0301
ダウンロード・フォト集より、樹木の1枚。

本文とは無関係。

 

2012年9月26日 (水)

中村汀女「汀女句集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、8番めの句集、中村汀女「汀女句集」を読みおえる。

 原著は、昭和19年、甲鳥書林・刊。

 高浜虚子の書簡文序、星野立子の序、1125句、あとがき、を収める。

 彼女の第2句集だが、第1句集「春雪」の作品もすべて収録した。

 転勤族の夫に付いて各地を回り、子供たちを育て、戦時下にありながら、豊かな俳句を創り続け得たのは、生活が苦しくなかった丈ではなく、彼女の聡明さと優しさに由るのだろう。

 以下に5句を引く。

夜の客に手探りに葱引いて来し

秋風にある噴水のたふれぐせ

横浜に住みなれ夜ごと夜霧かな

振りかへり消ゆる土筆もありにけり

   (直前の2句と合わせ、反戦句か?)

寒鮒が売れ新宿の灯の早し

Phm02_0304
ダウンロード・フォト集より、紅葉の1枚。

プロの構図である。

2012年9月11日 (火)

岩波文庫7冊

 昨日(日曜日出勤の振替休日だった)の午後、久しぶりに「BOOK OFF 二の宮店」へ行き、岩波文庫ばかり、7冊を買った。

 調べてみると、当店で買物をしたのは、昨年6月14日以来だった。それより2、3回は訪れている筈だが、何も買わなかったのだろう。

 7冊を以下に列記する。

  • 「摘録 鸚鵡籠中記」(上・下2冊、2003年3刷)
  • ゴンチャロフ「日本渡航記」(2001年15刷)
  • (古典ファンタジー)「ラインケ狐」(2003年3刷)
  • 高浜虚子「立子へ抄」(1998年初刷)
  • ロペ・デ・ベガ「オルメードの騎士」(2007年初刷)
  • コングリーブ「世の習い」(2005年初刷)

Phm10_0487
ダウンロード・フォト集より、湖の1枚。

本文と無関係。

2012年9月 5日 (水)

内田百閒「百鬼園俳句」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第5巻(昭和56年・刊)より、7番めの句集、内田百閒「百鬼園俳句」を読みおえる。

 原著は、昭和18年、青磁社・刊。

 258句を収め、春夏秋冬新年の5部に分かれる。それまでの30余年の句であり、その後昭和46年に没するまで句集は出版されていない。

 戦争後期の句集として、滝井孝作、久米正雄、室生犀星、この内田百閒と、文人俳句の句集が、他の時期と比べて格段に多いのはなぜか、三省堂「現代俳句大事典」で調べても、わからない。

 著者は漱石門下、随筆家として名高い。

 以下に5句を引く。

校庭に犬吠ゆるなり夏近く

梅咲いて藪の暗さや紀元節

さみだれの田も川もなくふり包み

欠伸して鳴る頬骨や秋の風

漱石忌戻れば屋根の暗さ哉

Phm10_0508
ダウンロード・フォト集より、湖の1枚。

本文と無関係。

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