カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2013年11月 8日 (金)

日野草城「転轍手」

 沖積舎「日野草城全句集」(1996年・刊)より、第4句集「転轍手」を読みおえる。

 10月31日の記事(←リンクしてある)で紹介した、第3句集「昨日の花」に継ぐ本である。

 原著は、1938年、河出書房・刊。681句(全句集版では改訂句を付して)。

 新興俳句運動に活躍した時期である。小説の新感覚派などと共に(時期はずれるが)、モダニズムの1つと思われる。

 以下に5句を引く。歌集よりは7、8首を引くのに、句集よりは5句しか引かないのは、詩歌に比べて、僕の理解力が足りないからである。

サイネリア花たけなはに事務倦みぬ

眼をとぢてむかしの恋にあたゝまる

夜半の冬別の心音深き処(と)

身辺に妻あり子あり秋夜病む

珈琲を吾が飲めり兵は泥水を

Phm02_0302ダウンロード・フォト集より、紅葉の1枚を。

2013年10月31日 (木)

日野草城「昨日の花」

 沖積舎「日野草城全句集」(1996年・刊)より、3番めの句集、「昨日の花」を読みおえる。

 今月20日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「青芝」に継ぐものである。

 原著は、1935年、龍星閣・刊。

 自序詞、772句(全句集では改訂句を付して)を収める。

 句集名には、無季、連作が始まり、主宰誌「旗艦」創刊に至る、過去への決別が暗示されているように思われる、と解題に述べられる。

 以下に5句を引くが、評判になった句、晩年の自選「草城三百六十句」よりは、あえて選ばなかった。

杉山の霧の雨ふる薄羽織

炭をつぐひとのやさしき指を視る

安部川をつくりて妻の年忘

スケートや蹈みかはす足ゆるやかに

あらくさの茂れるなかへ帰省かな

Phm02_0297ダウンロード・フォト集より、紅葉の1枚。

 

2013年10月20日 (日)

日野草城「青芝」

 沖積舎「日野草城全句集」(1996年・刊)より、2番めの句集「青芝」を読みおえる。

 なおこの全句集は、草城の娘婿・室生幸太郎が、草城のすべての句集が絶版となっている事などを憂えて、編集した本である。娘婿が義父を顕彰する事はある事で、石川啄木の長女・石川京子の夫・石川正雄の著名な例もある。

 「青芝」は、1932年、京鹿子発行所・刊。

 自序、561句(全句集では改訂句を付して)、自跋を収める。第1句集「草城句集」に比して、地味な出帆である。

 以下に5句を引く。

春の夜や影はべらしてひとりもの

孜々として地球に鍬を加へゐる

筆硯に及べる喜雨のしぶきかな

たづさふる手のあたゝかき無月かな

ひとりゆく山科の道しぐれけり

Phm02_0288ダウンロード・フォト集より、紅葉の1枚。

2013年10月11日 (金)

「草城句集(花氷)」

Cimg7276 「日野草城全句集」より、第1句集「草城句集(花氷)」を読みおえる。

 2011年3月29日のここの記事(←リンクしてある)で、「三月書房」のホームページより、「俳句の新本特価コーナー」の「日野草城全句集」を、定価の4割で買ったと書いてから、ずいぶんと月日が経ってしまった。

 第1句集は「草城句集」(1927年、京鹿子発行所・刊)が本名だが、「花氷」という通称が付いたらしい。

 5氏の序、自序、2氏の跋、自跋に飾られた、華々しいデビューである。

 収められた句は、全2、139句に改訂句を付す。

 都会的、情緒的な句が多い、初期の作品群である。

 以下に(無謀だが)5句を引く。

言ひつのる唇(くち)美しや春寒く

春雨や思ひ沈めばとめどなき

さみだれや痺れおぼゆる腕枕

月光(つきかげ)も心の疵にしむ夜かな

句座を成す市井の閑士十二月

2013年10月 3日 (木)

岸風三楼「往来」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、10番めの句集、岸風三楼(きし・ふうさんろう、1910~1982)の「往来」を読みおえる。

 この巻では、先の9月26日の記事(←リンクしてある)にアップした、八木絵馬「月暈」に継ぐ句集である。

 原著は、1949年、高山書院・刊。722句。

 富安風生の長い長い序文は、1時の虚子に倣ったものであろうが、見苦しい。

 また敗戦日の3句が載るが、嘆きも喜びもなく、「万象すぐる」と吟じて、人事ではないかのようである。

 またメーデーの1闘士、われら労働者、と吟じるが、大衆より恵まれていた事は明らかで、庶民ぶる事はない。生活では誠実だったようだけれども。

 以下に5句を引く。

傷兵と子に噴泉の水は涸れ

巫女も持つ時代祭の長刀を

凍つる夜のラジオは軍歌もて了る

午すぎてよりの暑さの法師蟬 (昭和20年8月15日)

煮凝や子なき夫婦の相頼り

C「フリー素材タウン」より、コスモスの花の写真を1枚。

2013年9月26日 (木)

八木絵馬「月暈」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、9番めの句集、八木絵馬(やぎ・えま)の「月暈(つきがさ)」を読みおえる。

 原著は、1949年、七洋社・刊。

 同巻では、先の9月7日の記事(←リンクしてある)、「定本亜浪句集」に継ぐ句集である。

 1936年~1945年の約100句を四季別に、1946年~1948年の約200句を制作年順に収めて、敗戦を区切りにした所は潔い。

 彼は臼田亜浪・門で、俳誌「石楠」で評論面でも活躍した、と解説は述べる。字余りの句が多い事が、僕は気になる。

 以下に5句を引く。

橡咲けり人等疲れて笑ひやすく

春潮のたぎち寄せ来て鵜を翔たす

葉洩れ日の石階とぎれてはつゞく

囀りの湾に入り来て航をはる

叱咤せんとして咳き入りてしまひしか

Photo「フリー素材タウン」より、黄花コスモスの写真を1枚。

2013年9月 7日 (土)

臼田亜浪「定本亜浪句集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、8番めの句集、臼田亜浪「定本亜浪句集」を読みおえる。

 同巻では、8月30日の記事(←リンクしてある)に紹介した、桂信子「月光抄」に継ぐ句集である。

 原著は、1949年、石楠社・刊。

 この句集は、弟子たちが句を選んで、臼田亜浪(1879~1951)の古稀の祝いに献じられた本である。

 曲折はあったが50年の句業より610句を弟子たちが選んだ中より、僕が抄出するのは、畏れ多いというか、おこがましい事だが、例の事なので試みてみる。

 以下に5句を引く。

氷挽く音こきこきと杉間かな

丹念に炭つぐ妻の老いにけり

枯萩のむざと刈られし昨日かな

母子寮の厨に見えて葱白し

焼け残る塀の日向の薺かな


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2013年8月30日 (金)

桂信子「月光抄」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、7番めの句集、桂信子「月光抄」を読みおえる。

 先の8月27日の記事(←リンクしてある)、石橋秀野「桜濃く」に継ぐ句集である。

 原著は、1949年、星雲社・刊。

 日野草城・山口誓子・生島遼一の序、402句、八幡城太郎・伊丹三樹彦の跋、著者あとがきを収める。

 まるで護衛艦に囲まれる戦艦(?)みたいだ。当時の世相、俳壇、著者(結婚2年で夫を亡くし、就職、空襲、転勤、移住などを経ている)の胸中等、測りがたいので、何とも言えない。

 女性性を押し出して行ったようだ。1914年~2004年、享年90.

 以下に5句を引く。

霜白く蓬髪の夫たくましき

山を視る山に陽あたり夫あらず

病む母に霜の深きをいひ足しぬ

春燈のもと愕然と孤独なる

やはらかき身を月光の中に容れ

Photo
無料写真素材集「足成」より、オイランソウの1枚。

2013年8月27日 (火)

石橋秀野「桜濃く」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、6番めの句集、石橋秀野「桜濃く」を読みおえる。

 先の8月21日に紹介した、佐野まもる「海郷」の記事(←リンクしてある)に継ぐ句集である。

 原著は、1949年、創元社・刊。

 原著は句文集であり、約260句、随筆113ページ、感想、山本健吉(夫)のあとがき、を収める。

 石橋秀野(1909~1947)は、貧と病に苦しみながら、厳しい句を遺した。「桜濃く」には、1938年~1947年の句を収める。

 以下に5句を引く。

凧の尾の見えずなりたる空うつろ

桜濃くジンタかするゝ夜空あり

今朝秋や燠かきよせて干魚やく

放吟や高校生に春の泥

利休忌や靄にゆびさす東山

Photo
無料写真素材集サイトより、ハゲイトウ(葉鶏頭)の1枚。

季節に合っているだろうか。

2013年8月21日 (水)

佐野まもる「海郷」

 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第7巻(1981年・刊)より、5番めの句集、佐野まもる第2句集「海郷」を読み終える。

 同巻では先の8月16日の記事(←リンクしてある)で紹介した、西東三鬼「夜の桃」に継ぐ句集である。

 原著は、1948年、青潮社・刊。

 水原秋櫻子・序、334句、後記を収める。

 佐野まもる(1899~1984)は、1946年早春~1947年歳晩(45歳、46歳)、瀬戸内の伯方島に官勤めをし、解説で「この孤島で戦災のために傷ついた心身をしずかに養い、かつ詩心を培うことのできたのは、実によい運のめぐり合わせであった…」と記される。

 西東三鬼「夜の桃」とは対照的な句風だが、佐野まもるも郷里・徳島市へ帰ったのちは、句風が転回した。

 以下に5句を引く。

春愁の喫水ふかく船ゆけり

章魚干せば天の青さの炎ゆるなる

丘越えて蜑がかつぎて来る神輿

ことごとく海の句を書き星まつり

牡蠣の岩踏みつたひ来て隣り字(あざ)

Photo写真素材集サイト「フリー素材タウン」(←リンクしてある)より、清流の小滝である。

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