カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2014年1月21日 (火)

斎藤空華「空華句集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、3番めの句集、斎藤空華「空華句集」を読みおえる。

 今月15日の記事(←リンクしてある)で紹介した、秋元不死男「瘤」に続く句集である。

 原著は、1950年、曲水社・刊。

 大谷碧雲居・序、石田波郷・序、212句、菊池麻風・後記を収める。

 斎藤空華(さいとう・くうげ、1918年~1950年)は、渡辺水巴に師事し句作したが、肺結核のため33歳の若さで亡くなった。没後、句友の編集により句集が上梓された。

 差し迫った者は、貧しい者は貧しさを、入獄した者は獄中を、病篤い者は死期の迫っている事を、それぞれ聖化したいようだ。

 以下に5句を引く。

白日の国尽くる所草枯れぬ

海苔干して国の端寒き怒濤かな

秋刀魚喰ひ悲しみなきに似たりけり

早春や誰にか明日の新しき

笹鳴を聞き得て生がありにけり

Photo「フリー素材タウン」より、水仙の1枚を。

2014年1月15日 (水)

秋元不死男「瘤」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、2番めの句集、秋元不死男「瘤」を読みおえる。

 今月5日の記事(←リンクしてある)で紹介した、石田波郷「惜命」に継ぐ句集である。

 原著は、1950年、作品社・刊。365句、後書を収める。

 秋元不死男(1901年~1977年)は、新興俳句運動に活躍するが、1941年、俳句弾圧事件に遭い、2年の獄中生活を送り、敗戦まで作品発表しなかった。

 「瘤」は「獄」吟とその他の作品に分かたれる。「獄」吟も、多く回想吟であるが、獄中吟がある。後書で彼は、「たとへ瘤であったにせよ、その瘤の痛さと、瘤をこしらへた相手の手は、終生忘れることはできない。」と書きつけている。

 以下に5句を引く。

降る雪に胸飾られて捕へらる

友らいづこ獄窓ひとつづつ寒し

冬に負けじ割りてはくらふ獄の飯

獄門を出て北風に背を押さる

蟹かくる航空兵の墓裏へ

A無料写真素材集サイト「足成」より、福寿草の1枚。

2014年1月 5日 (日)

石田波郷「惜命」

Cimg7472 角川書店「増補 現代俳句大系」の第8巻(1981年・刊)に進み、初めの句集、石田波郷「惜命」を読みおえる。

 「大系」でいえば、昨年12月29日の記事(←リンクしてある)、石原舟月「山鵲」(やまかち)に続く句集である。

 原著は、1950年、作品社・刊。506句。

 石田波郷(1913年~1969年)の、1947年~1950年の、結核病療養吟である。

 何度かの手術を受けているが、僕は戦後日本に入って来た抗生物質薬が用いられたのではないか、と思っている。膿胸、腸結核、中耳結核を併発した患者が、手術だけでは無菌者に復しないだろう。

 以下に5句を引く。

咳き臥すや女の膝の聳えをり

横光忌黙契いよゝ頑に

綿虫やそこは屍の出でゆく門

力なく降る雪なればなぐさまず

濃く淡く夜霧うごけり死を脱す

2013年12月29日 (日)

石原舟月「山鵲」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、最後、13番めの句集、石原舟月「山鵲」(やまかち)を読みおえる。

 今月22日の記事(←リンクしてある)で紹介した、細谷源二「砂金帯」に続く句集である。

 原著は、1949年、飛鳥書房・刊。

 飯田蛇笏・序、300余句、後記を収める。

 石原舟月(いしはら・しゅうげつ、1892年~1984年)は、飯田蛇笏「雲母」門。

 彼は山梨県より上京、電柱広告事業のパイオニアとして成功した。

 句集「山鵲」では、昭和10年以前~昭和23年の句を、幾つかの年代グループに分け、逆年順に配した。

 以下に5句を引く。

文弱の世をたのしまず冬帽子

雲の洞に遠き空ある春田かな

病難の飯のしろたへ菜種梅雨

山羊ひとにあまえて秋暑おとろへぬ

大霜の上げ潮にのる野菜舟

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、鶴(丹頂鶴、冬の季語)の1枚。

2013年12月22日 (日)

細谷源二「砂金帯」

 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第7巻(1981年・刊)より、12番めの句集、細谷源二「砂金帯」を読みおえる。

 今月19日の記事で紹介した、川島彷徨子「榛の木」に継ぐものである。

 原著は、1949年、北方俳句人支社・刊。

 自序、「開拓」179句、「石狩川」142句、山田緑光・跋を収める。

 細谷源二(ほそや・げんじ、1906年~1970年)は、12歳から職工生活に入り、プロレタリア文学に関わって、1941年の俳句弾圧事件で検挙された。敗戦1ヶ月前に、北海道の泥炭地に入植、3年間の困苦の中で句稿は書き継がれた。

 以下に5句を引く。

母の衣を売るや寒光につらぬかれ

家まづしおゝ煌煌と夜の列車

妻も小さく歌をうたへりゆき解の日

誰も乏しくおりおり雪に眼をつむる

山に百合そうして農夫嫁が来て

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、落ち葉の1枚。

2013年12月19日 (木)

川島彷徨子「榛の木」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第7巻(1981年・刊)より、11番めの句集、川島彷徨子「榛の木」を読みおえる。

 「日野草城全句集」を読むために中断していて、今年10月3日の記事(←リンクしてある)、岸風三楼「往来」に継ぐ本である。

 原著は、1949年、藁火書房・刊。

 大野林火の序文、463句(1930年~1948年)、後記を収める。

 臼田亜浪・門「石楠」「浜」同人。

 1時、召集を受け入隊したが、痔疾・肺疾の悪化のため召集解除となった。川島彷徨子(1910年~1994年)の生活と、句作には幸いしたようである。

 以下に5句を引く。

おれの黍おまへの黍もよく焼けし

吹かれつつ蝶的確に花につく

日のあたる方にいづるや鳥立てり

重味ある稲騒にふとたちどまる

赤子寝て練炭はぜる音つづく

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、白フクロウ(梟は冬の季語)の1枚。

2013年12月11日 (水)

日野草城「銀(しろがね)」

 沖積舎「日野草城全句集」(1996年・刊)より、遺句集(第8句集)「銀(しろがね)」を読みおえる。

 今月3日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「人生の午後」に継ぐ。

 原著は、1956年、琅玕洞・刊。

 1953年~1956年の265句、夫人の日野晏子の長い「あとがき」を収める。

 夫人や一人娘の、俳人を支えた努力は讃えられるべきだが、娘婿・室生幸太郎の全句集編集も大事業だ。

 以下に5句を引く。

元日の新しい顔で友ら来る

猫の子に舐めらる小さきぬくき舌

白粥のうす塩味や暑気中り

妻の顔いつも仰ぎて十とせ臥す

うしみつにわが咳き入りて妻子覚む (最後の句)

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、山茶花の1枚。


 

2013年12月 3日 (火)

日野草城「人生の午後」

 沖積舎「日野草城全句集」より、第7句集「人生の午後」を読みおえる。

 先月27日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「旦暮」に継ぐ句集である。

 原著は、1953年、青玄俳句会・刊。

 妻への献辞、自序、鈴鹿野風呂・序、315句、五十嵐播水・跋を収める。

 日野草城(1901~1956)は、肺疾患でほとんど病臥の生活(会社を休職、のち退職)の中で、俳誌「青玄」創刊・主宰し、句作、選句、文章(妻へ口述筆記)に励んだようだ。

 病気は、抗生物質の注射もしたが、回復には至らなかったようだ。

 以下に5句を引く。

試歩五十メートル往きて春惜む

病褥に四肢を横たへ離職せり

夏草や数へがたきは未知の友

生きてまた年を迎へぬ咳溢る

季節風いのちを庇ふ家軋む

Phm02_0271


ダウンロード・フォト集より、時季遅れかも知れないが、黄葉の1枚。

2013年11月27日 (水)

日野草城「旦暮」

 沖積舎「日野草城全句集」(1996年・刊)より、第6句集「旦暮」を読みおえる。

 今月16日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「第五句集(資料)」に継ぐ句集である。

 原著は、1949年、星雲社・刊。自序、伊丹三樹彦・序、693句。

 敗戦より句作活動を再開するが、胸部疾患のため、病床生活に入る。

 以下に5句を引く。

山茶花やいくさに敗れたる国の

夕闇に忘れられたるごとく病む

平凡な日々のある日のきのこ飯

ひもじくておとなしき子や落椿

黒蠅が無為の胸板踏んづける


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2013年11月16日 (土)

日野草城「第五句集(資料)」

 沖積舎「日野草城全句集」(1996年・刊)より、5番めの句集、「第五句集(資料)」を読みおえる。617句。

 今月8日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「転轍手」に続く句集である。

 ただしこの時期の句集は未刊であったので、全句集の編者・室生幸太郎(草城の娘婿)が、当時の句文集、俳誌などより、丹念に集めて編集した句集である。

 三省堂「現代俳句大事典」(2005年・刊)の「京大俳句事件(1940年)」の項目では、「旗艦」(日野草城主宰)は転向を表明して弾圧を免れた、とある。

 日野草城が戦争吟を煽ったようにも読めるが、全句集の年譜に拠ると、1940年より次第に俳壇より遠ざかり、敗戦まで沈黙した。

 以下に5句を引く。

うつばりも柱も呻き真夜の地震(なゐ)

支店長東西南北より来る

月を視しひとのまなざしわれに来ぬ

大原やしづかに曇る花とわれ

七月の浪を見てゐし眼を閉づる

Phm10_0232 ダウンロード・フォト集より、野の花の1枚。

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