カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2014年5月30日 (金)

橋本多佳子「紅絲」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、13番めの句集、橋本多佳子「紅絲」を読みおえる。

 今月17日の記事(←リンクしてある)、山口波津女「良人」に続く。

 この全集に載る彼女の句集としては、第6巻の「信濃」の記事(←リンクしてある。2013年3月。まだ字が小さい)に継ぐ。

 「紅絲(こうし)」は、彼女の第3句集。1951年、目黒書店・刊。

 山口誓子・序、413句、神田秀夫・跋、後記を収める。

 誓子の指導、奈良俳句会での西東三鬼、平畑静塔らとの研鑚の成果か、この句集は当時、句界で絶賛を受けたとされる。

 しかし戦後の荒々しい活気が去ってしまい(僕の作品読書の印象と、想像による)、世の保守化が進むと、奇妙な句集という印象が残る。

 幸い「橋本多佳子全句集」を保持しているので、これからも読み続けるだろう。

 以下に5句を引く。

拠るものゝ欲しけれど壁凍るなり

(め)の鹿は驚きやすし吾のみかは

花椎やもとより独りもの言はず

髪切虫押え啼かしめ悲しくなる

燦々とをとめ樹上に枇杷すゝる

Photo「フリー素材タウン」より、「空と海」の1枚。

2014年5月17日 (土)

山口波津女「良人」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、12番めの句集、山口波津女「良人」を読みおえる。

 先月28日の記事(←リンクしてある)、野村泊月「定本 泊月句集」に継ぐ。

 1951年、山口波津女句集刊行会・刊。

 夫・山口誓子の序文、1928年~1950年の374句(制作年順)、年譜、後記を収める。

 彼女は夫が「ホトトギス」→「馬酔木」→「天狼」と移るに従い、次第に句が先鋭化して行ったようだ。

 山口波津女(やまぐち・はつじょ、1906年~1985年)にはこの後、「天楽」、「紫玉」の句集があり、没後の全句集も刊行された。(三省堂「現代俳句大辞典」に拠る)。

 以下に5句を引く。

手毬つく髪ふさふさと動きけり

螢きて畳にひかりともしけり

天の川ながき手紙を書き終る

甘藷掘りしその夜の雨を聞きにけり

夫の手とわが胼の手と触(さわ)るとき

Photo「フリー素材タウン」より、藤の1枚。

2014年4月28日 (月)

野村泊月「定本 泊月句集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、11番目の句集、野村泊月「定本 泊月句集」を読みおえる。

 同大系では、今月1日の記事(←リンクしてある)で紹介した、中村汀女「都鳥」に継ぐ。

 原著は、1951年、桐の葉発行所・刊。

 既に3句集を刊行していたが、野村泊月(のむら・はくげつ、1882年~1961年)が虚子門入門以来の49年間の虚子選・約5000句より自選・約1000句を、「桐の葉」(主宰俳誌)15周年と著者の古希を記念して、句集とした。ほとんどすべてが、敗戦前の句である。

 虚子提唱の「平明にして余韻ある句」を創り続けて、一貫した。

 以下に5区を引く。

春風や何におびえて鹿跳びし

水打つて祭提灯ともしけり

炉語に思ひ立ちたる登山かな

月見るや広き額をかゞやかせ

吹きさわぐ紅葉の下の逆瀬川

Photo写真素材集サイト「足成」より、白花のハナミズキの1枚。

2014年4月 1日 (火)

中村汀女「都鳥」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、10番めの句集、中村汀女「都鳥」を読みおえる。

 先月26日の記事(←リンクしてある)の、水原秋桜子「霜林」に継ぐ句集である。

 また中村汀女の句集としては、第5巻より2012年9月26日の記事(←リンクしてある)の「汀女句集」に継ぐ収載である。

 原著は、1951年、書林新甲鳥・刊。380句、後記を収める。

 380句は、新年・四季別に収められている。

 身近な所から吟じられながら、隙を見せない。俳誌「風花」の創刊・主宰、ジャーナリズムにもてはやされた事、なども要因だろう。

 以下に5句を引く。

凧降ろし輝く雲も散りゆきぬ

春寒や出でては広く門を掃き

空蟬も拡大鏡も子に大事

夕鵙のみじかき声を落し去る

舟まこと二三ならずよ冬霞

Photo「フリー素材タウン」より、菜の花の1枚。

2014年3月11日 (火)

水原秋桜子「霜林」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、9番めの句集、水原秋桜子「霜林」を読みおえる。

 原著は、1950年、目黒書店・刊。563句。

 水原秋桜子(みずはら・しゅうおうし、1892年~1981年)は当時、戦後の混乱、戦争責任の追及などの中で、「馬酔木」主宰等の大家の風格を保たねばならず、苦しい活動であったと思われる。

 以下に5句を引く。

時鳥野に甘藍の渦みだれ

菊黄なり冬菜のはしにつくりしが

はげみては瞼疲れぬ夜の梅

音たてゝ泉湧くなり枯山に

魚板吊り僧房柿の若葉せり


Photo「フリー素材タウン」より、白梅の1枚。

2014年3月 3日 (月)

上野泰「佐介」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、8番めの句集、上野泰の第1句集、「佐介」を読みおえる。

 先月23日の記事(←リンクしてある)で紹介した、前田普羅「能登蒼し」に継ぐ句集である。

 原著は、1950年、書林新甲鳥・刊。1946年~1950年の、326句を収める。

 著者は、従軍の経験もあるが、戦後に俳句と本格的に取り組んだ。口語調、比喩の多用、題材の選び方などに、戦後の自由さを感じる。

 なお題名の「佐介」は、当時住んでいた、地名との事。

 以下に5句を引く。

春著きて孔雀の如きお辞儀かな

緑陰の大きな下の靴磨き

黒揚羽花を蔽ひてとまりけり

巌石の如き冬雲日をかくし

春の野ののつかつてをる籬かな


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2014年2月23日 (日)

前田普羅「能登蒼し」

 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第8巻(1981年・刊)より、7番めの句集、前田普羅「能登蒼し」を読みおえる。

 原著は、1950年、辛夷社・刊。

 長い自序(原著で16ページ)、147句、後記を収める。

 「春寒浅間山」(2012年12月8日の記事で紹介)、「飛騨紬」(2013年2月16日の記事で紹介)と合わせて、3部作を成す。

 前田普羅(まえだ・ふら、1884年~1954年)が、戦前から雪国の風土より句作した事は尊い。

 以下に5句を引く。

竹を伐る人にやむなし雪解雨

早桃嚙んで能登の入江を渡りけり

鳥屋の径熊笹そめて夜明けたり

鰤の尾に大雪つもる海女の宿

棹立てゝ船を停むる海鼠掻き

Photo無料写真素材集サイト「足成」より、白梅の1枚。

2014年2月15日 (土)

野見山朱鳥「曼珠沙華」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、6番めの句集、野見山朱鳥「曼珠沙華」を読みおえる。

 今月5日の記事(←リンクしてある)で紹介した、原田種茅「径」に続く句集である。

 原著は、1950年、書林新甲鳥・刊。虚子の1行序、265句、後記を収める。

 野見山朱鳥(のみやま・あすか、1917~1970)は、美術(絵画、版画)にも志を持ち、先達の川端茅舎と比較されたが、写生不足を批判されるようになり、「菜殻火」を創刊・主宰し、「生命諷詠」を掲げた。

 「野見山朱鳥全句集」(1971年、牧羊社・刊)、「野見山朱鳥全集」(1990年、菜殻火社・刊)がある。

 以下に5句を引く。

蝌蚪に打つ小石天変地異となる

蝶の渦眠うなりたる静臥時

身二つとなりたる汗の美しき

時雨れつゝわれ大阿蘇と雲に入る

曼珠沙華竹林に燃え移りをり

Photo「フリー素材タウン」より、シクラメンの1枚。

2014年2月 5日 (水)

原田種茅「径」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、5番めの句集、原田種茅「径」を読みおえる。

 先月30日の記事(←リンクしてある)で紹介した、松村蒼石「寒鶯抄」に継ぐ句集である。

 原著は、1950年、石楠社・刊。大正7年~昭和24年の、475句を収める。

 原田種茅(はらだ・たねじ、1897年~1987年)は、「石楠」に加入後、臼田亜浪が没するまで約40年間師事し、没後に主宰したが、約2年間で廃刊となった。

 彼の後進に対する親身な指導と情愛を慕い、兄事する者は多かったとされる。彼の句集は、この「径」1冊のみである。

 以下に5句を引く。

本買へば砂触りある二月の夜

芦せまる径に行々子下りてゐる

枯原や雨に白きをまじへきぬ

見下すや紫雲英あふれて田をわかず

入学も近き遊びに紙せがむ

Photo「フリー素材タウン」より、シクラメンの1枚。

2014年1月30日 (木)

松村蒼石「寒鶯抄」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、4番めの句集、松村蒼石「寒鶯抄」(かんおうしょう)を読みおえる。

 今月21日の記事(←リンクしてある)で紹介した、斎藤空華「空華句集」に続く本である。

 原著は、1950年、玉虫発行所・刊。

 飯田蛇笏・序、300句、あとがきを収める。

 松村蒼石(まつむら・そうせき、1887年~1982年)は生後40日に父と死別し貧しく、13歳で丁稚奉公に出たが、向学心を失くさなかった。また関東大震災後に妻と長女を亡くしたが、「再び憑かれたように俳句を始めた」(角川源義・解説より)事により乗り越えた。

 このあとに、「露」「春霞」「雪」「雁」の句集がある。

 以下に5句を引く。

東風波に忌日の仏間ひらきあり

冬の虫ところさだめて鳴きにけり

水底をあらはに二月晴れにけり

寒の餅切る日あたりの古畳

蛸突きや睦月の潮にひとり楫

Photo「フリー素材タウン」より、シクラメンの1枚。

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