カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2014年8月10日 (日)

「渡辺白泉全句集」より(8)

 沖積舎「渡辺白泉全句集」(2005年・刊)より、仕舞いの8回めの紹介をする。

 昨日の同(7)に続く。この全句集には、重複を除き、1300句を収める。

 没後に見出された、自筆稿本「白泉句集」の「瑞蛇集」は、1945年~1968年の句を収める。

 その内は「霧の舟」と「夜の風鈴」に別れ、間に5年くらいの空白があると、「あとがき」の中で述べている。

 白泉の息子、渡辺勝氏が栞に「父との思い出」の中に、「父の九番目だかの継母によって…」と書いた部分があり、白泉は母親の愛情には恵まれなかったようだ。

 以下に5句を引く。

切通しきたりし犬のくさめかな

鶯やくりまつかしはくぬぎなら

湧く風よ山羊のメケメケ蚊のドドンパ

万愚節明けて三鬼の死を報ず

行雁の僕を見てゆく一羽かな

Photo「フリー素材タウン」より、睡蓮の1枚。

2014年8月 9日 (土)

「渡辺白泉全句集」より(7)

 昨日に続き、「渡辺白泉全句集」より、7回めの紹介をする。

 自筆稿本「渡辺白泉句集」より、執筆禁止を命じられていた頃の句をまとめた、「欅炎集」と題された集である。

 古俳句を研究した系の「散紅葉」、応召中の「水兵紛失」に分けられる。

 水兵として応召した(その前に「損害保険統制会」に転勤したのは、前線に送られるのを避ける為だったか)が、日本の港を移動したのみで、大きな戦闘は無かったようである。

 以下に5句を引く。

  散紅葉

浅草に時雨れ居りとは誰知るや

紅梅やたゞまるかりし母の顔

焚火すや欅の炎二三枚

  水兵紛失

海兵に夏ゆふぐれのながさかな

玉音を理解せし者前に出よ

Photo写真素材サイト「足成」より、滝の1枚。

2014年8月 8日 (金)

「渡辺白泉全句集」より(6)

 沖積舎「渡辺白泉全句集」(2005年・刊)より、6回めの紹介をする。

 今月4日の記事、同(5)に続く。

 紹介するのは、白泉の没した(1969年1月30日)あと、見出された自筆稿本「白泉句集」より、1933年~1941年の作品を集めた、「涙涎集」である。

 作句を始めてから、俳句弾圧事件に遭うまで、俳壇で活躍した頃の句である。

 「白泉句集」は生涯より496句を集めたから、優れた句ばかりだが、以下に5句を引く。

街燈は夜霧にぬれるためにある

濃藍の海を抱かんと飛びこめり

あげて踏む象の蹠(あうら)のまるき闇

飛行機となり爆弾となり火となる

  吾子逝川 6句より

早春の空へ消えゆく吾子見るな

Imgp0640庭に咲く、白花八重の木槿より1枚。

2014年8月 4日 (月)

「渡辺白泉全句集」より(5)

 沖積舎「渡辺白泉全句集」より、先月29日の(4)に続き、5回目の紹介をする。

 彼は結社に属さず、今回の1957年~1968年(1969年1月に没)の12年間に、「俳句」誌の「俳句年鑑」に3回、「俳句研究」誌の「年鑑」に3回、八幡船社版私版・短詩型文学全書・第5集に34句(戦中吟を含む)、自筆ノート等による「拾遺」のみである。

 これで「初出発表順句集」の終いであり、残るは歌仙1巻と、没後に見出された自筆稿本「白泉句集」のみである。

 作風は、新しさはあるが、おもに生活吟だろう。

 以下に5句を引く。

かなかなもわたしばつたも亦わたし

白梅の固き蕾や十粒ほど

   拾遺

花園に立ちくらめきて戦死せり

木枯の速さを計るいくさかな

数珠玉や三鬼を懐ひ死を思ふ

Photoダウンロード・フォト集より、夏の海の1枚。

2014年7月29日 (火)

「渡辺白泉全句集」より(4)

 沖積舎「渡辺白泉全句集」(2005年・刊)より、4回めの紹介をする。

 今月26日の記事に、同(3)がある。

 今回の紹介は、1957年4月・刊行の「筑摩書房版 現代日本文学全集・91 現代俳句集」に収載された「渡辺白泉集」よりである。

 この集の貴重な点は、執筆禁止下にあった彼が、戦前・戦中にひそかに書き溜めた句を、読める事である。

 以下に5句を引く。

  戦前

きみとゆけば真間の継橋ふつと照る

能面のひと集まりて吾子を焼く

  戦中

若き頬ならべ水葬礼を吹く

  (終戦)

新しき猿股ほしや百日紅

  戦後

母の名をいくつも書きて七夕す

 (注 漢字の旧字を、新字にした所があります)。

Photoダウンロード・フォト集より、清流の1枚。

 

 

 

2014年7月20日 (日)

「渡辺白泉全句集」より(2)

 沖積舎「渡辺白泉全句集」(2005年・刊)より、1938年、俳誌「広場」に合流したあと、1942年までの句を読みおえる。

 7月17日の記事、(1)に続く。

 彼は1939年、「京大俳句」に参加し、1940年「俳句弾圧事件」に遭い、執筆禁止を命じられた。1941年、1942年に、変名で数度、俳誌「鶴」に投句している。

 その後、敗戦まで、句の発表は無かった。

 以下に5句を引く。

天兵に砲丸が降り地雷が裂け

突撃の立ちどまり歩き驅け倒る

包帯が寝臺の上に起き上る

戦争が廊下の奥に立つてゐた

天の塵妻泣く家を出でて來ぬ

Photo「フリー素材タウン」より、蓮の花の1枚。

2014年7月17日 (木)

「渡辺白泉全句集」より(1)

Cimg7827 「渡辺白泉全句集」を読み始め、「初出発表順句集」の昭和9年~昭和13年途中まで、読み進む。

 全句集は、2005年、沖積舎・刊。

 2011年9月28日付けの購入記事(←リンクしてある)がある。

 渡辺白泉(わたなべ・はくせん、1913年~1969年)は、1933年「馬酔木」に投句を始め、1934年、のちの新興俳句誌「句と評論」に投句を始める。

 のち新興俳句運動の若きリーダーとして、政治的前衛かつ芸術的前衛という、困難な道を進んだ。

 以下に初期より「風」時代の、5句を引く。

蝗賣早稲刈り了へて來しならむ

火蛾どもに街燈滅されてゐる

納涼茶番遠くゐて父と笑うたり

十月の夜釣のえものみな黒し

銃後と言ふ不思議な街を岡で見た

2014年7月 5日 (土)

高野素十「雪片」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、16番め・最後の句集、高野素十「雪片(せっぺん)」を読みおえる。

 先月30日の記事(←リンクしてある)、永田耕衣「驢鳴集」に継ぐ句集である。

 またこの大系収載の、高野素十(たかの・すじゅう、1893年~1976年)の句集として、昨年3月28日の記事(←リンクしてある)に紹介した、第1句集「初鴉」がある。

 原著は、1952年、書林新甲鳥・刊。第2句集。406句。

 彼は生涯、写生一路の句風を貫いたようだが、僕には少し物足りない。

 以下に5句を引く。

一ひらの枯葉に雪のくぼみをり

邪魔なりし桑の一枝も芽を吹ける

早苗饗や髪撫でつけし日焼妻

白浪やうちひろがりて月明り

落葉やや深きところが道らしき

Photo「フリー素材タウン」より、朝顔の1枚。

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2014年6月30日 (月)

永田耕衣「驢鳴集」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、15番めの句集、永田耕衣「驢鳴集(ろめいしゅう)」を読みおえる。

 今月22日の記事(←リンクしてある)、飯田蛇笏「雪峡」に継ぐ。

 原著は、1952年、播磨俳句会・刊。547句。

 永田耕衣(ながた・こうい、1900年~1997年)の第3句集となる。

 根源俳句を唱道し、論、作に実践した。

 戦後の前衛俳句の1つであろうが、今となっては伝統との総合性の句が、好ましいと僕は考える。

 以下に5句を引く。

冬の沼遠し遠しと猫行くや

寒雀母死なしむること残る

老の身にぱつぱつといなびかりする

木槿たる証拠の花よ月日長し

いづかたも息子の代(よ)らし揚羽蝶

Photo「フリー素材タウン」より、アジサイの1枚。

2014年6月22日 (日)

飯田蛇笏「雪峽」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第8巻(1981年・刊)より、14番めの句集、飯田蛇笏「雪峽(せっきょう)」を読みおえる。

 1951年、創元社・刊。1947年~1951年の539句を収める。

 飯田蛇笏(いいだ・だこつ、1885年~1962年、「雲母」主宰)の第7句集にあたる。

 敗戦前に父母・次男を亡くし、1947年に長男の戦死の公報、1948年に3男の戦病死の公報を受けたが、彼は句上で乱れを見せなかったものの、ぽつりと「雁仰ぐなみだごころをたれかしる」の句を洩らした。

 地味な句の滋味もわかるように思うけれども、もう少し現代性がほしいと、門外漢の僕は思う。

 以下に5句を引く。

なまなまと白紙の遺髪秋の風

はたをりのとぶとみるよりなほあがる

街凍ててこころおごらず靴の音

老顔の倦むをしらざるひなたぼこ

森鬱とゆくてにちかむ炎暑かな


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