カテゴリ「小説」の116件の記事 Feed

2013年3月21日 (木)

安部公房「笑う月」

Cimg6851 安部公房の、夢に関わる小文(裏表紙のキャッチ・フレーズでは「スナップショット」となっている)17編を収めた、「笑う月」を読みおえる。

 新潮文庫、1984年・刊。

 自分の夢から発想する小説の舞台裏や、夢を題材とする掌編小説を載せる。

 僕は最近、ほとんど夢を見ないのだけれども、以前は悪夢をしばしば見た。

 また入眠時だったか、想念が合理的でないなあ、と思っていると、夢うつつの状態だったりした。

 ここで述べられる、夢の非合理的な怖さは、よくわかるつもりだ。

 安部公房の小説は、文庫本である程度読んできたつもりだが、初期の夢幻的抒情の作品が、僕の好みに合った。

2013年3月15日 (金)

「倉橋由美子全作品」8巻揃

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 先の3月10日(日曜日)に、ショッピングモール「パワセンター ワッセ」へ行った時、書店「Super KaBoS ワッセ店」内の古書店「古書センター」で、8冊を買った。

 倉橋由美子(1935~2005)の「全作品」揃(1975~1976)である。

 新潮社、箱、帯擦れ、月報欠。

 彼女は、アンチ左翼、保守主義の小説家だったようだ。

 僕は「パルタイ」「スミヤキストQの冒険」他を、文庫本で読んできた。

 この作品集は、生前版なので、その後の作品を収めていない。当時に既発表の作品のある程度も、出版権の関わりか、収録されていない。

 またウィキペディアで読む限り、没後も全集は出版されていない。

 僕はこの「全作品」中の作品を、味わって読んでみたい。

2013年3月12日 (火)

鷺沢萠「帰れぬ人びと」

Cimg6828 鷺沢萠の短編小説集「帰れぬ人びと」を読みおえる。

 文春文庫、1998年7刷。

 「川べりの道」「かもめ家ものがたり」「朽ちる町」「帰れぬ人びと」の4編を収める。

 読み始めて、1度、読んだらしい記憶があった。たしかに初め2編は、読んでいたので、途中で止めた本らしい。

 「川べりの道」は、1度めの妻を早くに失い、2度めの妻を捨てて、新しい女性と住む父に、残されて姉弟二人で生きる弟が、父の元へ毎月、生活費を貰いに往反する様を描く。

 「かもめ家ものがたり」は、学生運動から脱落して、教師と翻訳家になっている二人の再会、プロ野球2軍を解雇された青年、などの物語である。

 「朽ちる町」は、父親の会社の破産と両親の離婚に遭って成人した青年が、塾講師の副業をしながら、その関わる人々の物語である。

 「帰れぬ人びと」の主人公も、父親の会社が倒産している。父を裏切った相手の娘かと訝りながら交際して、その事実も確かめられてしまう。

 描かれた事を別とすれば、救いのない世界である。

2013年3月 9日 (土)

筒井康隆「時をかける少女」

 筒井康隆のジュナイブル(少年少女向け)SF小説「時をかける少女」の初出は、学習研究社の月刊誌「中学三年コース」1965年11月号~「高一コース」1966年5月号の、7回である。

 この小説はその後、4回・映画化され、4回・テレビドラマ化された。主題曲も数回出され、漫画化もされた。(ウィキペディアより)。

 僕は1950年生まれで、ちょうどこの時期にこの雑誌を取っており、この小説の初出を読み、さわやかな印象を受けていた。

 学習誌ということで、親が取ってくれていたのである。

 この小説の初出を読めた事は、もっと幼い頃に漫画「鉄腕アトム」「鉄人28号」を漫画誌連載で読めた事と共に、他力ながら、僕の自慢である。

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写真は、庭の山茶花の盛りの花を、2階窓より。

2013年3月 6日 (水)

大江健三郎・文庫本2冊

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 Amazonのサイトで、大江健三郎の小説「水死」が文庫化された(講談社文庫、2012年12月)事を知り、注文した。

 そのあと同氏の「美しい……」という文庫本が蔵書にあったな、と思って文庫本棚を捜したが、見つからない。

 Amazonの古本で探すと、新潮文庫「美しいアナベル・リィ」が、1円で何冊か出ていた。状態の良さそうな、「(有)イーブックスパイダー吉野の桜店」に注文した。

 しばらくしてもう1度、文庫本棚を捜すと、同氏の「二百年の子供」「さようなら、私の本よ!」と共に、「美しいアナベル・リィ」が並んでいた。

 注文をキャンセルできる時間帯だったが、1円の注文(別に送料250円が掛かるが)なので、キャンセルしそびれた。

 本が着いて驚いた。カバーに擦り傷はあるが、帯の付いた文庫本を、1円で売っていたのだ。古本の一覧表で、帯に言及していたか、僕には覚えがない。

 同氏の文庫本小説、4作を今度は、文庫本棚の目立つ所に並べて、おいおい読んでゆこう。

2013年2月23日 (土)

佐江衆一「黄落」

Cimg6794 佐江衆一の小説、「黄落」を読みおえる。

 新潮文庫、1999年・刊。

 2009年12月24日に、「BOOK OFF 二の宮店」で買ったと記事にある内の、1冊である。

 また、去年11月14日の記事、「’97年版ベスト・エッセイ集 司馬サンの大阪弁」の末のほうで、読むと約束した本でもある。

 還暦近い作者と、その妻が、老いた両親(父92歳、母87歳)の介護に奮闘する姿が描かれる。

 食を絶って衰弱死する母への賛嘆、執着の強い父への親密感が、とても清々しい。

 妻の甚大な努力も描かれるが、作者も自慢するなく努力を重ねている。現代家族の一面を描いて、新刊の時、ベストセラーとなった事も肯われる。

2013年1月22日 (火)

大庭みな子「オレゴン夢十夜」

Cimg6718 大庭みな子の小説、「オレゴン夢十夜」を読みおえる。

 講談社文芸文庫、1996年・刊。

 彼女の「三匹の蟹」を読んで感銘を受けた思い出がある。ある批評家は、けなしていたけれど。

 ほかにも2、3冊、文庫本で彼女の小説を読んだように思うが、記憶にはっきりしないので、題名を挙げない。

 この小説の題名は、漱石の「夢十夜」を意識したのだろうけれど、仮に10章に分かってあるのみで、夢の記述には思えない。

 基本は、アメリカ滞在する女性作家の日記、という体裁をとる。夫の話、父母・祖父母の話が、混じる。

 日記ではなく、おしゃべり口調になる個所がある。

 当時の小説らしい作品である(単行本は、1980年、新潮社・刊)。

 

2013年1月 5日 (土)

掘り出した本

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 昨年元旦の記事は「『コスモス』1月号」だったけれど、1昨年元旦の記事は「掘り出し物」と題して、「BOOK OFF」で以前に見つけた掘り出し物、「ガルシン全集」「ヤコブセン全集」(各1巻本)を紹介している。

 今日も「掘り出した本」と題しているが、「BOOK OFF」他の古書店で、掘り出し物を見つけたという話ではない。

 蔵書データベースに文庫本の入力を一旦終え、新書の入力をするため、旧・書斎兼寝室の(文字通り)本の山を掘っていて、記憶のある本に「おお、お前はこんな所にいたのか!」と再会する事がある。

 今日はそのうち3種を紹介する。

 左上の写真は、中里介山「大菩薩峠」1冊本(第三書館、2004年・刊)である。どうしてもこの小説を入手したくて、当時には高価だけれども買った。

 1ページ5段組み、1150ページ、やや読みにくいので、読むなら後に入手した本(完本なら)にしたいと思っている。

 右上の写真は、「豪華[源氏絵]の世界 源氏物語 新訂版」(学習研究社、2001年3刷)である。これも当時は高価だった。

 写真は載せなかったけれど、東京白川書院「サリンジャー作品集」6冊揃いも、1部見えている所から引き出した。「ライ麦畑でつかまえて」以外の作品は、すべて収められている。

 僕は「ライ麦畑でつかまえて」を白水社Uブックス(野崎孝・訳、既読)で持っているので、サリンジャーの全作品を(邦訳で)持っている事になる。文庫本で読んだ小説もあるが、いつ読み始められるのか。

2012年11月16日 (金)

三木卓「野鹿のわたる吊橋」

Cimg6587 三木卓の小説「野鹿のわたる吊橋」を読みおえる。

 集英社文庫、1998年2刷。

 購入は、2010年9月2日の記事、「文庫本2冊」で、「BOOK OFF 米松店」で買った、とある。

 2年余り待たせてしまった。

 また彼は詩人であり(思潮社・現代詩文庫「三木卓詩集」の読了は、2011年5月7日の記事にあり)、しかしいわゆる詩人の小説のように、文章に凝り過ぎる事はない。

 この小説は、男が女と出会い、性的に溺れて行くうちに、以前の恋人を捨て、老母を捨て、離婚した妹を捨て、会社を捨て、東京での生活を捨て、叔父を頼って北海道で暮らす事になる。

 ある時代の、ある感性の世代なら、ありうるストーリーとして読み、キャッチコピーにあるほど際どい話とは感じなかった。

 

2012年10月13日 (土)

柏原兵三「独身者の憂鬱」

Cimg6491 柏原兵三の小説「独身者の憂鬱」を読みおえる。

 中央公論社、1978年4版(1972年初版)。

 箱あり、帯なし。今月6日のこのブログで、買った事に言及している。

 柏原兵三(1933~1972、満38歳で急逝)は、ドイツ文学者、大学教員、作家、翻訳者。

 1968年、「徳山道助の帰郷」で、第58回芥川賞受賞。

 主人公は、大学卒業、修士課程、博士課程に進む。

 その間に、大学の先輩関係者の外国留学により、その部屋を預かって住む、という事を3回(1回、1年~1年半)繰り返す。

 主人公が、部屋をきれいに住み、部屋を出る時に汚れ傷みが無い、という話が1部で広まったためである。

 主人公は、淡い恋が何度かありながら、結婚の目途としていた「3並び」(33歳のこと)になっても結婚しない。現代の晩婚・非婚を、先取りしているようだ。

 主人公の、医学部を辞め、文学部に入り、ドイツ文学を研究して博士課程に進む、という設定は著者と同じであるが、著者には(ウィキペディアに拠ると)息子がいるので、私小説とは言えない所がある。

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