カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2015年12月24日 (木)

近藤芳美「風のとよみ」

 岩波書店「近藤芳美集」第4巻(2000年・刊)のしまいの、第17歌集「風のとよみ」を読みおえる。

 今月8日の記事(←リンクしてある)、「営為」に継ぐ。

 原著は、1992年、砂子屋書房・刊。455首。

 中国、スペイイン、国内の旅の内の、昭和天皇の崩御に感慨があり、天安門事件を怖れ、東欧のビロード革命に自問する。

 彼の詠いぶりが移りゆこうと、彼は狡猾ではなく、誠実であろうとした。

 以下に7首を引く。

長き長き日を経るごとく過ぎゆくを一国の喪の冬の曇り垂る

猛だけと芽立ちまぎれぬ街路樹の闌(た)くる昼ながら紹興にあり

(いた)みとして知る中国というといえ電波に少女の叫び切れぎれ

菊に埋もるる黒布の柩小さきを君と思わむ呼びて別れ告ぐ

歓喜して「ベルリンの壁」今か越ゆる市民らの数何が推移す

見詰め合ういのちの果ての怖れなどいわざれば日は静けさに似む

ゆくりなき旅すがらなる町なりきゲルニカの過去を問う何もなく

Angel569230_640フリー素材サイト「Pixabay」より、クリスマス関連の1枚。

2015年12月23日 (水)

「コスモス」1月号「月集」読了

 今月19日の記事で、到着を報せた結社誌「コスモス」2016年1月号のうち、トップのいわゆる「月集」3欄、つまり「月集特別作品」、「月集スバル」、「月集シリウス」を読みおえる。

 「コスモス」は大部で(今号は210ページ)、ぎっしり短歌と評論等が詰まっているので、小分けに紹介したい。

 このクラスでは、調べも整っている。

 しかし舌頭千転などというと、新人が入りそうにない。その後に自然と(読んだり詠んだり)、身につくものだろう。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。「月集スバル」のK・博夫さんの5首より。

職辞してのたりくたりの弱蔵(よわざう)に妻は険しくものをいふかな

 彼はたしかJAXAを科学技術者として勤め上げた人で、純粋で生活細事には強くないかも知れないが、「コスモス」選者でもあり、大事にしたい人だ。

Christmascard566305_640フリー素材サイト「Pixabay」より、クリスマス関連の1枚。

2015年12月21日 (月)

笠松俊子「花あかり」

Cimg8662 12月13日(第2日曜日)の「コスモス短歌会」F支部・月例歌会のおり、支部会員の笠松俊子さんより、歌集「花あかり」を頂いた。

 2015年11月、弘報印刷(株)出版センター・刊。漆崎支部長・序。

 1977年以来、結社誌「コスモス」とF県短歌人連盟・年刊「自選歌集」に掲載の、40年近い歌より選んで、歌集を成した。

 早逝の夫、父母、舅・姑、知友、更に弟まで見送る歌がある。

 1方で、娘の結婚や、孫・曾孫の誕生の喜びも詠まれる。

 国内の旅、娘の1人が住むドイツへ3度も渡って、優れた短歌を得ている。

 鮮やかな描写は、南画にも励まれている所から来るのだろうか。

 笠松さんは、情熱を内に秘めた、温厚な方で、支部内で好感を持たれている。

 以下に7首を引く。

闇市に吾が食む小魚買ひくれし舅しのばるる娘の身籠れば

小島師が愛でましし曲「平城山(ならやま)」をテレビに聞けば泪あふれ来

楽になる注射願ふと夫言ひて永久の眠りに入りてゆきたり

腰伸ばせ目線高くと言はれつつドイツの秋日の街を娘とゆく

酒好きの舅が遺しし古九谷の盃を褒めつつ娘の婿ら酌む

昏睡ゆおぼおぼと覚むる弟か声にはならぬ口を動かす

抱きたる赤子の曾孫に見つめらる「あなたは誰」と瞳に問ひて

2015年12月19日 (土)

歌誌2冊

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 今月14日の発売日に、Amazonへ本阿弥書店「歌壇」2016年1月号を注文し、16日(水曜日)に届いた。

 4ヶ月間、角川「短歌」Kindle版を買い読んだが、ピラミッド型階級制がきつくて、止めにした。

 特集の「ノベンタ世代の短歌観」の「ノベンタ」が判らないが、読めば判るだろう。

 12月17日に、結社歌誌「コスモス」2016年1月号が届いた。「第62回O先生賞」発表の号で、2名が受賞している。

 僕の歌は10首出詠の内、前の号に続いて5首選(特選)だった。

 内容はアメブロ「新サスケと短歌と詩」の、12月18日の記事(←リンクしてある)にアップした(横書きながら)ので、関心がおありの方はお読みください。

2015年12月16日 (水)

岡井隆「暮れてゆくバッハ」

Cimg8647 思潮社の「岡井隆全歌集」全4巻を、版こそ違え、2012年3月29日の記事(←リンクしてある)で紹介した「旅のあとさき、詩歌のあれこれ」で読みおえたあと、僕は岡井隆の歌集を読まなかった。

 今回、彼の最新歌集「暮れてゆくバッハ」を買えて(今月12日の記事、「届いた3冊」で報告)、読みおえた。

 大柄な、諧謔味を交えた歌風は健在だが、時に軽みに至るようだ。

 散文「亡き弟の霊と対話しつつ過ぎた、手術の前と後」、「松本健一さんの霊に呼びかける」等、「付録」3編、には触れない。

 また水彩画集編「花と葉と実の絵に添へて」は、手本の木下杢太郎「百花譜」に比べて(僕は岩波文庫「新編百花譜百選」を持っており、少し見た)、はっきり言って下手である。添えた短歌などの筆跡は立派だけれども。

 2つの折り句(アクロスティック)よりは引かない。

 以下に7首を引く。

遺言(ゐごん)状つくるため来し帰り路(ぢ)にあしたの朝の食材えらぶ

注釈の橋を渡して本文を渉(わた)らうとする秋暑き日に

ヨハン・セバスチャン・バッハの小川暮れゆきて水の響きの高まるころだ

わが知らぬその声はややたかぶりて川口美根子の逝きたるを告ぐ

オレンジの色の囚衣の映像を折ふしに見て書きつづく 詩を!

固有名詞の出て来ない日はせめてもつとでつかいものの名よ出よと思ふ

憎しみの作る表現を凍結し夜半ふかく解凍するのが常だ

2015年12月13日 (日)

若山牧水「白梅集」

 Kindle本「若山牧水大全」より、第10歌集「白梅集」をタブレットで読みおえる。

 今月7日の記事(←リンクしてある。クリックすればジャンプする)にアップした、「朝の歌」に継ぐ。

 原著は、1917年(大正6年)、抒情詩社・刊。妻・喜志子(247首)との合著であり、牧水は222首。

 自序で「ともすれば絶望的な、自暴自棄的な」所が見えると書いている。物を視る目が据わってきたように、僕は思う。

 以下に7首を引く。

朝起きの萎えごころか椋の葉にうごける風を見ればいとはし

われと身を思ひ卑しむ眼のまへに吾子こころなう遊びほけたり

夏草の茂りの上にあらはれて風になびける山百合の花

ちからなき足をうごかしあゆまむとあせる甲斐なさいまはやめなむ

酒のめばなみだながるるならはしのそれもひとりの時に限れる

何はあれあたり明るく見え来たりここに斯くあるわれとなりにけり

戸を繰れば雪は背より高かりしその窓かげに今日もこもるか

Photoフリー素材サイト「足成」より、山茶花の1枚。

2015年12月12日 (土)

届いた3冊

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Cimg8647 



















   最近、3冊の本が手許に届いた。

 左上の写真は、スマホのマニュアル本。スマホを、通信速度の速いLTEのものに機種変更をしたため、例によって教科書として。スマホは、古い型の廉価なものである。

 右上の写真は、岡井隆の歌集「暮れてゆくバッハ」。Amazonの広告を見て、どうしてもほしくなった。2015年7月、書肆侃侃房・刊。(なおスマホのマニュアルもAmazonに注文した)。

Cimg8649

 宮城県にお住まいの詩人・秋亜綺羅さんが、季刊個人詩誌「ココア共和国」vol.18を送って下さった。

 2015年12月、あきは書館・刊。

 今号も招待の詩と短歌を含め、豊かな内容である。

 歌集と詩誌は、読んだあと、ここで紹介したい。

2015年12月 8日 (火)

近藤芳美「営為」

 岩波書店「近藤芳美集」第4巻(2000年・刊)より、3番めの第16歌集「営為」を読みおえる。

 先の11月25日の記事(←リンクしてある)にアップした、「磔刑」に継ぐ。

 原著は、1990年、六法出版社・刊。551首。

 国内の旅、外国(トルコ等、中国、イタリア)への旅の歌に挟まれて、日常の歌があるようだ。

 晦渋な詠みぶりも、推敲を重ねての作品と言われる。

 以下に7首を引く。

ヒッタイト廃墟の岩の塁をたどるひとつひかりと風と曝るるかた

砂嵐ときなく地平にめぐるまを塩湖のたたえ蒼く氷(ひ)のごと

痛々しき病苦ののちの死のねむり君をめぐりて時のひそかなる

小さき劇ありて雨過ぐる街帰る今日生きてゆく若者を見て

明けにかけむ踊りのむれに妻も入る郡上の盆の軒濡れながら

よろこびに満ちたる笑みはこの世のもの莫高窟の闇に浮かびて

アッシジを目指す道にして遭う雷雨空裂く稲妻はオリーブの野に

Photoフリー素材サイト「足成」より、山茶花の1枚。

2015年12月 7日 (月)

若山牧水「朝の歌」

 Kindle本「若山牧水大全」より、第9歌集「朝の歌」をタブレットで読みおえる。

 先の11月30日の記事(←リンクしてある)にアップした、「砂丘」に継ぐ。

 原著は、1916年(大正5年)、天弦堂書房・刊。273首。

 写生ではないが、牧水が自然主義歌人と呼ばれる故が、わかるような作品が多い。初期の悲嘆調はない。

 喫茶店へ一人で行き、タブレットより牧水歌集を読むのが、自慢がましい僕の楽しみである。

 以下に7首を引く。

近山は紅葉さやかに遠つ山かすみかぎろひ相模はろばろ

下野の言すくななる友を思ひそが贈物鴨をわが煮る

浜に続く茅萱が原の冬枯に小松まじらひわが遊ぶところ

梅の花はつはつ咲けるきさらぎはものぞおちゐぬわれのこころに

遠松のこずゑに風は見ゆれども此処は日うらら妻よ息はな

曇り日のこころいぶせみうち出でて来しは山田の枯草の畔

帰る雁とほ空ひくく渡る見ゆ松島村は家まばらかに

Photoフリー素材サイト「足成」より、山茶花の1枚。

2015年12月 6日 (日)

「コスモス」12月号「COSMOS集」読了

 結社歌誌「コスモス」2015年12月号の、「COSMOS集」を読みおえる。

 「あすなろ集」と「その二集」の特選欄である。

 「その一集」特選欄・読了は、今月1日の記事(←リンクしてある)にアップした。

 「COSMOS集」の各選(5首、稀に6首)には、選者が題を付けている。選者がどの句に感心したかわかる、愛情のこもった題である。

 僕が付箋を貼ったのは、次の1首。O・いずみさんの「『ギリシャ』の見出し」5首より。

無口なる息子にかわりその妻のくんちゃんたびたびメールをくれる

 良縁も、短歌の功徳の1つかと、勝手に感嘆している僕である。

Photoフリー素材サイト「足成」より、山茶花の1枚。

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