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2010年9月の25件の記事

2010年9月16日 (木)

ゴールズワージー「林檎の樹」

003  ゴールズワージーの中編小説、「林檎の樹」を読みおえる。

 新潮文庫、昭和58年51刷。

 中編小説は、1エピソードを描くには長過ぎ、人の一生を描くには短い。

 この小説では、25年くらい前を回想するという形式で、主人公の半生を思わせる。

 この小説が、ある程度有名であり、多くの読者を持ちながら、なぜ傑作とされないか、わかるような気がする。

 まず、描写が感傷的過ぎる。

 また庶民の娘に対する、主人公の倫理感の薄さが、イギリス上流階級の青年らしく、反発を買う。

 ゴールズワージーには、「フォーサイト家年代記」と称される大連作があり、それのほうが評価は高いようだ。

2010年9月15日 (水)

「放春花100選」

002  写真集「放春花100選」を見おえる。

 日本ボケ協会・監修、栃の葉書房、平成10年・刊。

 放春花は、木瓜の別名である。

 昨日に、たまたま本棚の隙間に見出した。

 発行当時に新刊で買って見おえたあと、売るか譲るかして手許にもうないと思っていたから、見つけて嬉しかった。

 木瓜にも、一重・八重、単色・咲き分け、早咲き・遅咲きなどの別があり、色も白・赤系・淡黄などがある。

 咲き分けの古典的名花「日月星(じつげつせい)」や、大輪の八重花「越の夕映(こしのゆうばえ)」など、育ててみたい気がするが(「日月星」は庭で、何年か咲いたあとに枯れた)、実際はどうなるか、わからない。

 これと紛らわしい迎春花は、黄梅(おうばい、ジャスミンの1種)の事である。

2010年9月14日 (火)

江國香織「すいかの匂い」

003  江國香織の短編小説集、「すいかの匂い」を読みおえる。

 新潮文庫、平成12年・刊。

 この本には、11編の短編小説が収められる。

 主人公はほぼすべて、女子の小学生である。

 その心理が、とても巧みに描かれる。

 もちろんフィクションだろうが、著者自身の幼時の体験や空想が織り込まれているのだろう。

 少女を描いて巧みなのに、大人の女性の恋を描いた小説は、僕には頂けない。

 ただし、彼女の出世作(?)の「きらきらひかる」は、まだ読んでいないのだけれど。

2010年9月13日 (月)

石橋辰之助「山行」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第2巻(昭和56年・刊)より、4番めの句集、石橋辰之助「山行」を読みおえる。

 原著は、昭和10年、沙羅書店・刊。

 この句集には、序文、跋文はなく、著者の「あとがき」さえ無い。何の意だろうか。

 句集のほとんどを、ロッククライミングを含む、登山の句が占めている。著者は、山岳俳句の開拓者とされる。

 彼はのちに、西東三鬼らと新興俳句へ走ったが、弾圧を受け沈黙。

 戦後の彼は、日本民主主義文化連盟の役員をするなど尽力したが、昭和23年、結核により死去、享年40.

 以下に5句を引く。

穂高岳真つ向ふにして岩魚釣

青く赤く燃ゆる星あるキヤムプかな

短夜の扉は雲海にひらかれぬ

岩灼くるにほひに耐へて登山綱(ザイル)負ふ

吹雪来て眼路なる岩のかきけさる

2010年9月12日 (日)

支部9月歌会

002  今日の午後1時より、F市内の某会館の1室で、「コスモス短歌会」県支部の、9月歌会が催された。

 事前提出歌17首(1人1首)、歌会参加者14名と、当支部としては盛会だった。

 清書、コピーされた提出歌を1首ずつ、2名ほどが批評したあと、U支部長が講評し添削例を示した。

 支部長の言によると、今回は優れた作品が多い、という事だった。

 僕の1首も、結句を直され、少し褒めて貰った。

2010年9月11日 (土)

「最後の瞬間のすごく大きな変化」

003  グレイス・ペイリーの短編小説集、「最後の瞬間のすごく大きな変化」を読みおえる。

 文春文庫、村上春樹・訳、2005年・刊。

 著者は1922年生まれ、両親は20世紀初頭に、ロシアからアメリカに渡ってきたユダヤ系の移民である。

 彼女は詩集の他、3冊の短編小説集しか生涯に出さなかったが、多くの敬意を受けた。

 各編は、離婚したシングル・マザー(息子2人)などの、貧しい街でのいざこざ(トラブル)を描く。しかも、いつまでも希望を失わない。

 村上春樹は、彼女の短編小説集2冊を翻訳している。

 グレイス・ペイリーやレイモンド・カーヴァーは、村上春樹が入れ込むほどの作家には思えない。

 同じアメリカ作家の、ジョン・アーヴィングやティム・オブライエンは別として。

 もっとも、人の好みにあれこれ言うつもりは、僕にはない。

2010年9月10日 (金)

「現代の歌人140」

002  小高賢・編著「現代の歌人140」を読みおえる。

 2009年、新書館・刊。

 このブログの、2009年12月30日の記事に、この本の購入を報告している。

 そのまま放っておいたが、最近になり読み出した。

 現代短歌の流れが、人物紹介、小評と共に、作品30首が載せられて、よくわかる(ような気になる)。

 採り上げられた歌人、140人のうち、亡くなった方もいるから、100人ほどが現・歌壇の第一線か、と思う。

 歌壇のスターと大衆歌人、という構図も、これからは崩れてゆくのではないだろうか。

2010年9月 8日 (水)

三浦哲郎氏逝く

 先日(2010年8月29日)、小説家の三浦哲郎が逝いた。享年79.

 僕が初めて読んだ三浦哲郎の小説は、芥川賞受賞作の「忍ぶ川」(新潮文庫)だった。

 そのあと、それ以前の短編を集めた文庫本も読んだ。

 エッセイ風の本も含め、文庫本ばかり、10冊以上を読んだ筈だ。

 しかし「夜の哀しみ」(新潮文庫・上下)で躓いてしまって、「百日紅の咲かない夏」(同)も買ったまま開いていない。

 ただしその後にも出た短編小説集「短編集モザイク」シリーズ、3冊は読んだ。

 一族の宿命を描く小説を大成した長編「白夜を旅する人々」など迫力があったが、その短編小説は絶品の味わいがあった。

 もっと活躍を続けてほしい小説家だった。

2010年9月 7日 (火)

柘榴の稚実

003  何年も前から、柘榴を植えて、実を生らせてみたいと思っていた(花柘榴の木は大株になって、毎年、八重花を楽しんでいる)。

 3年前か、柘榴の苗を買って、庭に空地がなかったので、鉢植えにした。

 それ以来、花は咲くのだが、実が生らなかった。鉢植えでは無理か、と思った。

 それが今年は、3個の小さな実が生った。うち1番小さな実は摘んだ。

 この小さな実が、大きくなる保障はないので、今のうちに写真をアップしておく。フラッシュの関係で黄色く写っているが、実物はもっと緑色がかっている。

 もし実が大きくなれば、また報告する。

2010年9月 6日 (月)

軽部烏頭子「樝子の花」

 角川書店「増補 現代俳句大系」第2巻(昭和56年・刊)より、軽部烏頭子(かるべ・うとうし)「樝子(しどみ)の花」を読みおえる。

 原著は、昭和10年、龍星閣・刊。

 昭和6年、水原秋桜子(独協中、一高、東大医学部、と同期だった)に従い、「ホトトギス」を離れ「馬酔木」に拠る。

 水原秋桜子はその「跋」で、「これほど美しい俳句には無論現代に於て比肩するものはない。(中略)これだけ洗練された美しさを持ってゐれば、もうほかに言ふところは無いと思ふ」と、激賞している。

 以下に5句を引く。

山車の灯を遠くながむる一家かな

茸狩るといでたつ妻の紺がすり

啼きいでゝ遠くもあらず鉦たゝき

麦笛にかゞやく路のあるばかり

かづきめに燕に浪はうすぐもり

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