カテゴリ「歌書」の467件の記事 Feed

2014年7月31日 (木)

「その一集」末まで

 結社歌誌「コスモス」2014年8月号より、「その一集」を、既読の特選欄を除き、通常欄(3首ないし4首・掲載)のすべて読みおえる。

 この欄が、歌誌の中で1番のスペースを占めて、69ページである。

 このように結社歌誌、総合歌誌、歌集、全歌集などを読んでいると、頭が短歌モードになる。

 今号で付箋を貼った1首は、千葉県、・多嘉子さんの次の作品(50ページ上段)である。

泣きじやくる幼はげましなだめつつ手を引く兄の未だ幼し

 ただ、小学生時代の兄とのエピソードが、想い出されるのである。

Photo写真素材サイト「足成」より、滝の1枚。

2014年7月27日 (日)

斎藤史「魚歌」

Cimg7838 積み上げてある本の中から、以前に買った、「斎藤史全歌集」(大和書房、1998年5刷)を引出して来て、初めより読み始めた。

 斎藤史(さいとう・ふみ、1909年~2002年)の第1歌集は「魚歌」(1940年、ぐろりあ・そさえて刊、376首)。

 彼女は初期、のちに「日本歌人」を創刊する、前川佐美雄らと歌を共にした。

 「魚歌」の作品はモダニズムである。しかしよく知られているように、2・26事件に父が連座し、同級生・下級生が処刑された。

 表現の自由は保障されておらず、父が陸軍将校だった立場もあり、韜晦的に詠うしかなかった。

 以下に6首を引く。

白い手紙がとどいて明日は春となるうすいがらすも磨いて待たう

せめて苦悩の美しくあれ爪に染む煙草の脂(やに)を幾度ぬぐふ

岡に来て両腕に白い帆を張れば風はさかんな海賊のうた

野に捨てた黒い手袋も起きあがり指指に黄な花咲かせだす

暴力のかくうつくしき世に住みてひねもすうたふわが子守うた

をりをりは老猫のごとくさらばふを人に見らゆな見たまふなかれ

 (漢字の旧字を新字に替えた所があります)。

2014年7月24日 (木)

「歌壇」8月号

 総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)2014年8月号を読みおえる。

 特集は、「短歌の空想の力――フィクションとファンタジー」である。

 僕の短歌はリアル派なのだが、読む短歌はフィクション・ファンタジー、共に好きで、寺山修司、永井陽子は全歌集を読んだくらいである。

 「作品五十首」は、米川千嘉子「榧の純真」である。統一したテーマというものは判らないけれども、気になる1首があり、下に挙げる。

滅び始めし国の小旗を頬に描く若者はもうほろべと言はず

 戦後民主主義が滅びようとし、若者はもう反権力でさえない。教育から歪めて行った保守政治家も、満足しているだろう。

Photo「フリー素材タウン」より、睡蓮の1枚。

2014年7月23日 (水)

「コスモス」8月号

 結社歌誌「コスモス」2014年8月号の、いつもの所を読みおえる。

 初めより「その一集」特選欄までと、「COSMOS集(「あすなろ集」「その二集」の特選欄)」、「新・扇状地(2名×15首)」、「第11回 純黄賞 推薦作品抄」、他。

 僕が付箋を貼った1首は、「COSMOS集」より新潟県、M・陽子さんの「夏のスカート」(116ページ・上段)の次の作品。

満開の桜ほろほろ散りぬるを少し休んでまたがんばらう

 僕も「少し休んでまた頑張って」、生活して行きたい。

 なお同誌は、これからも読んでゆく予定である。

Photoダウンロード・フォト集より、向日葵の1群。

2014年7月19日 (土)

歌誌2冊

Photo

Photo_2
 結社歌誌「コスモス」2014年8月号が、7月17日に届いた。

 今号には「第11回純黄賞発表」がある。

 また総合歌誌「歌壇」(本阿弥書店)8月号を、Amazonに7月15日に注文して、同じ日に届いた。

 特集は「短歌の空想の力」である。

 いずれも読んだなら、ここで報告したい。

2014年7月18日 (金)

小島ゆかり「泥と青葉」

Cimg7833     Amazonより取寄せた、小島ゆかりさんの第12歌集、「泥と青葉」を読みおえる。

 2014年3月、青磁社・刊。

 僕は「小島ゆかり作品集」と、その後の歌集すべてを(「純白光」を除く)読んで来た筈である。

 家族、震災・原発事故、他を詠って、大胆な表現がある。

 猫を飼っているせいもあってか、原発事故後に放置された牛、豚、鶏、犬等に低い視線から、語りかけるように詠っている作品もある。

 また象牙密猟のためのマルミミゾウ虐殺に憤る、10首連作もある。

 以下に6首を引く。

抜け出づる魂をつかみもどすごと手にまるごとの無花果を食む

岩鼻から飛びたるわれを夫は褒め子らは驚き母は嘆きぬ

春昼のここはどこなる 死を知らぬ者はすべてを知らぬ者なり

男にはわかるはずない憤懣をわかる男たまにゐて警戒す

猫としてわがかたはらにゐてくれるあなたはだれか青い夜の雪

あきらめの選択、白鳥にもありて三羽遊べり新緑の池

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2014年7月15日 (火)

「あすなろ集」「その二集」

 今月2日の記事に続き、結社歌誌「コスモス」2014年7月号の、「あすなろ集」「その二集」を読みおえる。

 これで今号の、通常の掲載歌、全部を読みおえた事になる。

 付箋を貼ってピックアップする事をしなかった。

 語る事への怖れ、書く事の怯えはあるけれど、読む事に倦む時はない(目の疲れの場合などを除く)なあと、自分を思う。

 そこで拙作を1首。

語り部にあらず書き部にあらずして精根尽し読み部にあらむ

                            (未発表)

Photo「フリー素材タウン」より、向日葵の1枚。

2014年7月10日 (木)

関谷啓子「梨色の日々」

Cimg7799 関谷啓子さんの第5歌集、「梨色の日々」を読みおえる。

 2011年、六花書林・刊。355首。

 関谷啓子(せきや・けいこ、1951年・生)さんは、「短歌人」「開放区」同人。

 既に5冊の歌集を上梓していて、短歌結社に20年いながら1冊の歌集も出せない僕とは、違うのだ。

 彼女は主婦の穏やかな生活ながら、時に強く、時に鋭く、詠い出す。

 以下に6首を引く。

桃の木に思春期というものありやなし空にするどく枝差し入れて

あらあらと風吹く街に火のごとく流れてゆけり桃の花片(かへん)

ふつふつと愚痴吐きている黒しじみ一息に鍋に入れてことなし

夫の病に張りつめ暮らす秋の日は何のはずみにか涙出でつも

夕空にながれる雲を追いながらどこに行くのかわれと自転車

むすめ嫁ぐ日の近づきて夜な夜なを語れりかたることの尽きざり

2014年7月 2日 (水)

7月号「その一集」末まで

 結社歌誌「コスモス」2014年7月号の、「その一集」通常欄を、末まで読みおえる。

 外国(カナダ、台湾、タイ、ブルガリア)を巡って、北海道に入り、1路南下して鹿児島県に至る(残念だが「その一集」には、沖縄県の出詠者がいない)。2段69ページとなる。

 僕が付箋を貼ったのは、宮城県のS・実さんの、次の1首。

収奪をされ続けたる牛ならむその乳も肉も皮も爪まで

 家畜はいつまでも養うことはできず、いったん屠殺したなら、すべて利用するのが(ゴミとして捨てずに)、家畜への礼儀ではなかろうか?

Photo「フリー素材タウン」より、朝顔の1枚。

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2014年7月 1日 (火)

井上春代「陽だまり」

Cimg7779 井上春代さんの第1歌集、「陽だまり」を読みおえる。

 2011年、六花書林・刊。329首。

 中地俊夫・選・跋文、小池光・帯文。

 井上春代さんは、1948年・生、1991年・「短歌人」入会。

 彼女の歌は、歌集題名にもあるように、明るい作品が多い。

 ただしその危うさを知っており、明るければ幸せとは限らないと、歌の中でも詠っている。

 「あとがき」では、歌に救われた道筋を、自覚している。

 以下に6首を引く。

「実験」と子はビー玉を転がして家に傾きあるを指摘す

コロッケが大好きと言いつつ少年はたちまちにして七個食いたり

夫がいて子がいて未だ淋しきと言えば褪せゆく風の曼陀羅

( )つき数式のように物事を難しくして生きていないか

鶏卵を産み落とすごと製氷皿みたす氷の音のくらぐら

アミノ酸のご機嫌うるわし百回もまわせば納豆ねばりてやまず

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