カテゴリ「句集」の145件の記事 Feed

2015年11月11日 (水)

大場白水郎「散木集」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、4番めの句集、大場白水郎「散木集(さんぼくしゅう)」を読みおえる。

 先の10月18日の記事(←リンクしてある)、森澄雄「雪檪集」に継ぐ。

 原著は、1954年、俳句研究社・刊。

 大場白水郎(おおば・はくすいろう、1890年~1962年)は、1946年に中国より引揚帰国、一時は会社社長、のちに名誉会長となる。この巻の前3俳人とは異なっている。

 この句集は、戦前の句集等から252句、1947年~1950年の84句を、併せ収めている。その意図はわからないが、そののち作品集はなく、最後の句集となった。

 以下に5句を引く。

雪の日の鷗飛ぶなり茅場町

もてなしの焚火かこむや雪催ひ

早春や欅二本を門とせる

輪飾や焼けのこりたる家暗く

浅草に生れて住まず草の市

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、林檎の1枚。

2015年10月18日 (日)

森澄雄「雪檪」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、3番めの句集、森澄雄「雪檪」を読みおえる。

 今月3日の記事(←リンクしてある)、清水基吉「寒蕭々」に継ぐ。

 原著は、1954年、書肆ユリイカ・刊。

 自序句、417句、「あとがき」を収める。

 森澄雄(もり・すみお、1919年~2010年)は、加藤楸邨「寒雷」創刊(1940年)に参加、後に俳誌「杉」を創刊・主宰。

 彼は敗戦・復員後、教師となり、上京後も職を続けた。しかし板間の6畳1間に親子5人が住む貧しさだった。先に紹介した安住敦「古暦」、清水基吉「寒蕭々」、ともに貧を吟じており、戦後の庶民の貧窮を示しているのか。

 以下に5句を引く。

暮光やゝ寒ゆるみたる松の幹

枇杷の実に日の照りかげり風の中

うすら雪妊妻はすぐ寝落つ

パンの飢水雪が笹濡らしをり

梅雨の三人子桜桃のごと睡て息す

Photoフリー素材サイト「足成」より、花梨の1枚。

 

2015年10月 3日 (土)

清水基吉「寒蕭々」

 角川書店「現代俳句大系」第10巻(1972年・刊)より、二番めの句集、清水基吉「寒蕭々」を読みおえる。

 先の9月26日の記事(←リンクしてある)、安住敦「古暦」に継ぐ。

 原著は、1954年、白桃社・刊。287句。

 清水基吉(しみず・もとよし、1918年~2008年)は。前の安住敦と同じく貧しかったが、職を転々としたのではなく、文筆(小説を含む=芥川賞・受賞)で生活しようとしたからである。のちに電通に勤めた。

 貧の中の結婚と子を描いて、清澄である。

 以下に5句を引く。


春泥や師の家を出て渋谷川

栗剥くや食はすや恋も古びたり

玉の露呼べば応へて妻そこに

栗の花こぼるゝ妻に髪刈らす

貧の中火蛾に抱く子が笑ひ出す

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、柿の1枚。

2015年9月26日 (土)

安住敦「古暦」

Cimg8560 角川書店「増補 現代俳句大系」(全15巻)の第10巻(1972年・刊)より、初めの句集、安住敦「古暦」を読みおえる。

 僕はこの大系を、増補版15冊揃いで買ったが、この第10巻のみ増補版ではなかった。写真は、函の表である。

 この大系としては、今年2月20日の記事(←リンクしてある)、小林康治「四季貧窮」に継ぐ。間が空いたのは、「上村占魚全句集」の各句集を紹介したり等のためである。

 原著は、1954年、春燈社・刊。

 久保田万太郎の序句、135句、木下夕爾の跋文を収める。

 前巻の末からこの巻のあたり、社会性俳句の盛んな時期だったようだ。

 安住敦(あずみ・あつし、1907年~1988年)は、俳誌を次々と移ったが、敗戦当時に失職し職を転々とした。「古暦」はすでに第3句集である。

 短歌を学んだ初期もあり、人生を感じさせる、叙情味のある句が多い。

 以下に5句を引く。


雁鳴くやひとつ机に兄いもと

冬ざくらしづかにいまは兵ならず

また職をさがさねばならず鳥ぐもり

春蘭の風をいとひてひらきけり

妻がゐて子がゐて孤独いわし雲

2015年8月11日 (火)

上村占魚「自問」

 沖積舎「上村占魚全句集」(1991年・刊)より、最終の第10句集、「自問」を読みおえる。

 先の8月1日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「かのえさる」に継ぐ。

 原著は、1989年、紅書房・刊。768句。

 彼は「後書」で、「徹底写生 創意工夫」を道標とする、と述べている。

 草津に「自問洞」と称する山荘を設け、それより句集題としている。

 この全句集は生前版であり、上村占魚(1920年~1996年)にはこの後、「放眼」「玄妙」の句集がある。容易に入手できるなら、読んでみたい。

 「自問」より、5句を引く。

独り笑み独り言いひ春を待つ

早逝の生母のごとく虹淡し

猫の恋聴きながしつつ酒交す

計一つ立たずもはらの寝正月

立秋の水まゐらする虚子の墓

  (引用に、旧漢字を新漢字に替えた所があります)。

Photo「フリー素材タウン」より、朝顔の1枚。

2015年8月 1日 (土)

上村占魚「かのえさる」

 沖積舎「上村占魚全句集」(1991年・刊)より、第9句集「かのえさる」を読みおえる。

 今年6月26日の記事(←リンクしてある)、「天上の宴」に継ぐ。

 原著は、1984年、舷燈社・刊。606句。

 題名は、還暦を迎えたので、その干支より。

 戦後の「第二芸術論」等に対し、社会性俳句、根源俳句、前衛俳句等の潮が大きかった時代に、彼は写生徹底を貫いた。

 以下に5句を引く。毎年1句、春夏秋冬新年の1句を、選んだ積りである。

そだちよき海雲(もづく)に海の色かはる

瑠璃鶲空のふかみへきざみ鳴く

浮き沈む毱藻(まりも)にも秋ふかみつつ

飲みかけの湯呑の中の冬日かな

皺ふかき梅干(うめぼし)沈む福茶かな

Photo

「フリー素材タウン」より、蓮の花の1枚。

2015年7月 5日 (日)

年刊句集「福井県」第44集(2)

 今年6月2日の記事(←リンクしてある)、年刊句集「福井県」第44集(平成17年版)(1)に続き、同(2)を報告する。

 63ページ~116ページの54ページ、108名(1ページ2段)、1080句(1人10句)を、読みおえた事になる。

 福井県俳句作家協会が、650名をどうして結集し得たのか。短歌より短い、海外の俳句熱、もあるだろう。大きなムーブメントがあるのだろう。

 付箋を貼ったのは、次の1句。N・昭子さんの「秋日濃し」10句より、「児の視線あめんぼう追い離れざる」。自然の不思議、児の純真を、再認識させる。

Photo「フリー素材タウン」より、睡蓮の1枚。

2015年6月26日 (金)

上村占魚「天上の宴」

 沖積舎「上村占魚全句集」(1991年・刊)より、第8句集「天上の宴」を読みおえる。

 先の6月16日の記事(←リンクしてある)、「石の犬」に継ぐ。

 原著は、1980年、東門書屋・刊。484句。

 旅行での作句が多く、この句集の間には沖縄へ何度も、また海外旅行へも出掛けている。

 この句集は、1974年~1978年と5年間の作ながら、484句とこれまでより少なく、心境の変化があったか。

 以下に5句を引く。

岩ひばりケルンに風のひびき鳴る

頬かむりをとこ結びに朝市女

勁き首たてて羚羊みじろがず

一枚に光る海あり草もみぢ

山国の風いさぎよし初茶の湯

  (注:引用の1部に、旧漢字を新漢字に替えた所があります)。

Photo

「フリー素材タウン」より、アジサイの1枚。

2015年6月16日 (火)

上村占魚「石の犬」

 沖積舎「上村占魚全句集」(1991年・刊)より、第7句集「石の犬」を読みおえる。

 先の5月29日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「橡の木」に継ぐ。

 原著は、1975年、現デザイン・刊。

 1970年~1973年の810句を収める。

 僕は短歌の詠作(あるいは詩作も含めて)の、勉強のつもりで句集を読むのだけれども、これだけ多くの作を読んでゆく(引用のために付箋を貼る句を選びながら)と、疲れてくる時があった。

 以下に5句を引く。

雪山に瀧の白光固まれり

空港に残る雪あり目に重し(スウェーデン)

目を閉ぢて聴け郭公の遠ければ

月の秋菊の秋子は嫁御寮

白梅や僧とはいへどいとけなき

  (注:引用の1部に、旧漢字を新漢字に替えた所があります)。

Photoフリー素材サイト「足成」より、サクランボの1枚。

2015年6月 2日 (火)

年刊句集「福井県」第44集(1)

Cimg8435 今年5月8日の記事(←リンクしてある)で、年刊句集「福井県」第53集(平成26年版)の読了を報告した。

 それに続いて、同・第44集(平成17年版)の、俳句欄325ページの内、62ページまでを読みおえた。

 ページ数が少ないのは、最新版ではないので、読む勢いがもう1つだからでもある。2011・3・11以前の俳歌には、のどかな所もあった。

 1ページ2段2人、各10句掲載である。第53集の413名で大集団だと思っのに、第44集には650名の参加があったのだ。参加者が1番多かったのは、何年ころか知らない。

 俳歌は素人でも、生涯に1つ2つの名作は残せます、という言い伝えの蜜に惹かたりして、生涯を吟詠する事になるのだ。

 付箋を貼ったのは、N・千代江さんの「歳晩や拍子木打てば星揃ふ」の句である。「星揃ふ」が美しい。「~揃ふ」の句が以前にあったかなかったか、ともかく独創である。

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