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2013年5月の39件の記事

2013年5月15日 (水)

中田道子「未完のカンバス」

Cimg6975 中田道子さんの第1歌集、「未完のカンバス」を読みおえる。

 角川書店、2010年・刊。

 帯、村山美恵子・跋、あとがき。

 彼女(大阪府・在住)はヨガ教師として生計を立て、幼い頃から好きだった絵を続け、「水甕」に短歌を寄せて心の安定を得る。

 その鼎立は成功したらしく、母を看取って送り、息子・娘を巣立たせた。歌に「別れたる夫も」の語がある。

 海外旅行にも何度か出掛け、旅行詠を残している。

 以下に7首を引く。


足らぬものいつも捜しているように未完のカンバス幾つも並ぶ

シャッターを上げてひかりを入るるとき絵がいっせいに息づき始む

暮れなずむ梅田ビル街 中世のだまし絵の中まぎれ込みゆく

おはようの「う」の音高き秋の朝ヨーガ教室軽やかである

春に子は雲雀とならんいそいそと巣立ちの前の羽づくろいして

デイサービスに向かえる母はいそいそと青年の腕に護られ歩む

われの絵の下に並べる娘の花器を見せたき母はもう今はなく

越前板皿「望月」

Imgp0229















 昨日の火曜日(僕の指定休日)に、「パワーセンター ワッセ」内のリサイクル・ショップへ行って、飾り皿「越前板皿『望月』」を買った。

 径30センチ。高価なものではない。作者名は読めない。

 日曜日の「母の日」に何もしなかったので、2日遅れの妻へのプレゼントである。

 妻は実家の家風か、美術品を少し収集している。もちろん、高額な物はないけれども。

2013年5月14日 (火)

永六輔「一泊二食三千円」

Cimg6973_2
 永六輔の旅にまつわるエッセイ集、「一泊二食三千円」を読みおえる。

 中公文庫、1984年11版。

 永六輔(1933~)は、多方面で活躍してきた。「大往生」他、彼の本を何冊か、僕は読んでいる。

 このエッセイ集では、船や飛行機の旅でのサービスの模様、旅館やホテルでのサービスへの要望なども書かれる。

 また気楽な旅での、見知らなかった人との触れあいが描かれる。

 当時は、ほとんどの日を旅していたようで、また初版の発行された1977年頃には、表記の額で宿泊できたようである。

 こまぎれ的にしか読めない所だったので、1文が短い、内容も軽めの本を選んだつもりだ。

 また題名の、1,2,3、の語呂合わせを、カバー絵に幾つも示唆されているのに、僕は解説を読むまで気づかなかくて、うかつな事だった。

2013年5月12日 (日)

遠藤たか子「水のうへ」

Cimg6967 遠藤たか子さんの第2歌集、「水のうへ」を読みおえる。

 砂子屋書房、2010年11月25日・刊。

 帯、432首。「かりん」「まひる野」「あんだんて」会員。

 著者は、福島県南相馬市原町区に在住で、福島第1原発に近く、原発への不安を多く詠んでいる。

 歌集発行の3ヶ月余りのちには、東日本大震災と原発災害に遭っている。原町区は、1部が警戒区域(現在も住民避難中)、多くが緊急避難区域に指定(現在は解除)された。

 原発への危機感と、息子さんたちの独立等の歌から、以下に8首を引く。

原発事故想定訓練二日目の冬陽うごかず刈田に染みて

地下室(シエルター)をもつ家ひそかにふえるまで古りし原発の故障はつづく

逃しやる小鳥のやうに子どもらを一人またひとり発たせて眠る

ひしひしと喪失の予感熄みがたき夜の白鳥座夏越えて冷ゆ

グラウンドゼロとなるかもしれぬわが町のどんぐり林のどんぐりかこれ

換気音はげしき建屋(たてや)に原子炉の安全説かるガラスを隔て

しばし目を瞑り数ふる原発に働くめぐりの幾人の顔

みぎ火発ひだり原発 早春の風の岬は波荒く寄す

2013年5月11日 (土)

山田清吉「土偶」

Cimg6962
 県内にお住まいの詩人・山田清吉さんが7番め(巻末「著者について」に拠る)の詩集、「土偶(でこんぼ)」を送って下さった。

 2013年6月、紫陽社・刊。34編。

 彼は1929年・生、日本農民文学会会員、詩誌「角(つの)」同人。

 農に生きて来て、末期を思い、またインド・ネパール・チベットと遠い旅を重ねて、感慨を綴る。

 東日本大震災をめぐって書かれた作品があり、次に「海 3・11」より、初めの部分を引く。


どうすればいいんじゃ

どうすればいいんじゃ

手足まといになるからくるな

友は口をあけたまま砂を

目はひらいたまま涙を

ガレキの隙間から

うかがい待っているというのに

    (後略)

2013年5月10日 (金)

赤嶺盛勝「夢のかけら Ⅲ」

Cimg6959
 沖縄県・在住の詩人・赤嶺盛勝さんの詩集、「夢のかけら Ⅲ」を読みおえる。

 5月6日の「群青の会」会合(記事あり)のおり、AUさんより譲っていただいた詩集である。

 2013年4月、間隙出版販売社・刊。

 1993年・刊の同「Ⅰ」、2005年・刊の同「Ⅱ」につづく詩集である。

 沖縄県の社会と生活の特殊性に苦しんできた面がある。

 以下に巻頭の「果実を下さい」の末尾を引く。


愛というには貧しすぎ、恋という

には異形で、胸の空洞をドラの

一声で虎はゆっくり離れてゆく

もう熱帯魚など食うまい。極北

の寒さに満ちた水々しい果実が

青々としてまた満ち満ちて来る

あ!あの果実を一つ下さい

2013年5月 9日 (木)

鈴江幸太郎「柘榴の家」

 「鈴江幸太郎全歌集」(初音書房、1981年・刊)より、4番めの歌集、「柘榴の家」を読みおえる。

 今年4月6日の記事(←リンクしてあり)で紹介した、「白夜」に継ぐ歌集である。

 原著は、1951年、高槻発行所・刊。420首。

 末子を得て、また療養園の歌会に参加するなど、人間味のある作品を読むことができる。

 以下に7首を引く。

(たたかひ)に子を失ひ窯(かま)を家を焼きくるしみて更に成りし工房

鳥が音のごとき短きみどり子のこゑに立ちゆく幾度(いくたび)となく

わが腕に眠りゆく子の笑ふとも見ゆればこゑに出でし嘆きか

工場とも事務とも孤立せる室にサイレンが鳴ればひとり晝餉す

瀬の音はさみしき音かひとりのみ酔ひて眠らむときにひびきて

怒りつつかくしづかなる我の言葉おのれ寂しむ齢(よはひ)となりぬ

杉山の空澄みあかり川原の温泉(いでゆ)にをれば月ものぼらむ

Phm02_0877
ダウンロード・フォト集より、森の1枚。

本文と無関係。

2013年5月 8日 (水)

木村蕪城「一位」

 角川書店「増補  現代俳句大系」第6巻(昭和56年・刊)より、10番めの句集、木村蕪城「一位」を読みおえる。

 原著は、昭和22年、藤田書店・刊。

 先の4月11日の記事(←リンクしてあり)、富安風生「村住」に続く紹介である。

 高浜虚子・序、315句、後記を収める。

 木村蕪城(きむら・ぶじょう、1913~2004)は、戦前よりの肺患が治癒し、結婚、また教職をまっとうしている。

 後年、俳誌「夏炉」を主宰。

 以下に5句を引く。

酌みこぼす焼酎燃ゆる榾火かな

石蹴をして榾運びなまけゐる

簷低し林檎の花の月夜なる

一壺酒のたくはへありて茸焼く

わが宿の八十八夜産湯焚く

Phm02_0080_2
ダウンロード・フォト集より、新緑の1枚。

季節に合わせて。

2013年5月 7日 (火)

村上春樹「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」

Cimg6949 村上春樹の新作小説、「色彩を持たない多崎つくると、彼の巡礼の年」を、アマゾンに予約注文し、その本が届き、先日に読みおえた。

 文藝春秋・刊、2013年1刷。

 「ノルウェイの森」(僕はこの小説のストーリーをよく覚えていないが)と同じく、徹底したリアリズムで描かれている。

 それは前作、「1Q84」3部作と比べれば、判然とする。

 ストーリーは、成人する頃の苦難と、30何歳かになっての、傷の回復への旅である。成人になる頃の苦難は、誰にでも訪れるものだ。

 僕はその挫折に耐え得ずして、大学を中退してしまったから、回復への巡礼もなかった。宗教ではない救いを僕は得ており、仕事も定年後であり半分降りている。

 その苦難を経て、順調に生きた人は、ある時その苦難を心理的に解消したいものだろう。青春と大人への出発の、1つの物語である。

一青窈と世界遺産

Cimg6947
 ゴールデンウィークに行楽もなかったので、昨日午後、久しぶりに「BOOK OFF 二の宮店」へ行った。

 写真集「ユネスコ世界遺産」(講談社)の、第8巻「西ヨーロッパ」と、第10巻「南ヨーロッパ」が安かったので、買った。写真はアップしない。

 家に同シリーズの2冊が在るのがわかっていたので、カブルかと思ったが、やはり第10巻がカブッていた。でも1冊105円だった(更にその2割引き)から、まあいいんだ。

 CDコーナーに、一青窈のベスト盤らしい「Best yo」があったので、これも買った。(写真あり)。

 帰宅して、さっそく聴いてみる。デビュー曲(?)の「もらい泣き」は良いのだけれど、「ハナミズキ」あたりから曲想が生真面目になり過ぎて、長くは人気が続かなかったようだ。声はとても良い。

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