東京都にお住まいで、「コスモス」会員・「棧橋」同人の、水上比呂美さんの第2歌集「潤み朱」を、取寄せて読みおえた。
2014年3月、柊書房・刊。
高野公彦・選、502首。
第1歌集「ざくろの水脈」は、2009年9月26日の記事(←リンクしてある)で紹介している。
豊かな心が、豊かな発想の短歌を創らせる。
連作「八雲立つ」の大作96首に苦吟したようだが、あとがきに「その苦労は大きな財産になるとてもよい経験でした。」とある。
以下に7首を引く。
ポケットが七つ付きたるズボン穿き戸隠森林公園あるく
日曜の市庁広場に古(ふる)のつく本、服、箪笥ひろげられをり
一斉に銀色の蝶飛びたてり十のハンドベル打ち鳴らすとき
西調布駅工事中ホームより栄螺のなかをくぐるごと出づ
犀川はをとこ川とふ浅野川はをんな川とふ日本海で逢ふ
武蔵より肥後の空まで飛ぶ鳩よ八十円の切手になりて
肩幅の座席にすわり膝幅のカバンを持ちて渋谷に向かふ
平凡社「世界名詩集大成(1) 古代・中世篇」(1960年・刊)より、ユウェナーリス「諷刺詩集」を読みおえる。
今月3日の記事(←リンクしてある)、マールティアーリス「エピグラム集」に続く。
ユウェナーリスは16編の詩を遺し、第6歌が661行と長く、他は2、3百行程度の詩らしい。ここには第1歌、第3歌、第10歌を、さらに抜粋して邦訳してある。
諷刺詩は、機知を効かせた短詩を1かたまり、というのが良いように僕は思う。
更に物語的1編を、中断して訳されると、真意を受け取りにくい。
ただし解説には、「ヨーロッパの諷刺詩の伝統の真の始祖となった。」とあり、抵抗詩に影響していたかも知れない。
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東京大学出版会「知の論理」(1995年・刊)を、ピックアップして(半分くらい)読みおえる。
先月12日の記事(←リンクしてある)、「知の技法」に継ぐ。
僕はいわゆる科学(生物学、物理学、数学、ITなど、急速な発展がある)に比べて、社会科学というものをあまり信用しない。
論理が空転する場合がある事は、論理的に証明されている。
失われた20年間、経済学もシンクタンクも回復へ持って行けなかった。
どのようなブレーンがいるのか知らないが、アベノミクスで1部では好景気だそうだが、地方の退職者には及んで来ない。
企業も官庁も、少人数、長時間労働、低賃金などで、どんどんブラック化している。世間的にもヤンキー化(押しの強い者の行為が通る)が進んでいる。
論理を形成するには、頻繁に現実を条件として入れなければならないのに、書物等から学んでばかりでは、現実に役立たない。
3冊目の「知のモラル」は、内省があるかと、読んでみる予定である。
県内にお住まいの詩人、青山雨子さんに頂いた第5詩集、「芭蕉」を読みおえる。
2014年5月・刊、私家版。18編を収める。
テーマ的に解きほぐそうとすると深くて、女性論、家族論、人間(個人として、類として)論にまで立ち入らないといけないので、ここでは深入りしない。
表現的には、「あとがき」の中で彼女が書いているように、(連と連との)飛躍が大きい。
また「人影」は、ストーリーはわかっても、舞台設定がわからなかった。
必死に何かを訴えようとする中で、少し力を抜いた「朝顔」などは、わかる思いがする。
これも「あとがき」で、「いつか私が見ている世界をお伝えできたらと思っています。」とあるように、時代的・世俗的・状況の移る中で、ある日ふいと彼女の作品が身近に感じられるかもしれない。
県内にお住まいの詩人、T・篤朗さんが、同人詩誌「果実」70号を送って下さった。
「果実」は教員退職者の5名を、同人とする。
詩は、F・則行「わらいがみさま」「約束」、N・明徳「山茶花」「雲」、W・本爾「父と子」「二月抄」、K・不二夫「ピカソ的な一日」「かっちゃま左義長」、T・篤朗「ひな祭り」「アジサイ」「春を待つ」「お内裏様」「流星ひとつ」、他にエッセイなど。
W・本爾「父と子」では、施設の父を訪う長男の困惑を、「二月抄」では雪景に亡くなった母を偲ぶ思いを、描いている。
T・篤朗「ひな祭」では、子らが巣立って老夫婦2人のみとなった家庭(自分たちも、僕の周囲でも、そういう家庭は多い)で、雛人形を飾るのだが、淋しいのか、家じゅうの人形も添え並べる、というストーリーである。
平凡社「世界名詩集大成(1) 古代・中世篇」(1960年・刊)より、マールティアーリス「エピグラム集」を読みおえる。
先月29日の記事(←リンクしてある)、ペルシウス「サトゥラ」に継ぐ。
「エピグラム」とは、「警句、寸鉄詩」の意味である。
マールティアーリス(40年~104年?)は、短詩1570編を14巻に収めた、「エピグラム集」を遺した。
短詩にインパクトはあるが、この本でも何十編と並べられ、個人を皮肉ったものが多いだけに、食傷してくる。
1編を引く。
貧乏 (5巻、81)
アェミリアーヌスよ、君もし貧乏なら、いつまでも貧乏でいるだろう。
当今は、金持ち以外には、富は得られないのだから。
昨日は本家で、法事があった。
午前11時よりお経をあげたあと、S魚店の離れに移り、会席。参集者19名。
拙作を1首。
つつがなく兄の差配で法事終ふ母七回忌父十三回忌
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