カテゴリ「小説」の116件の記事 Feed

2015年5月 3日 (日)

江國香織「ホテル カクタス」

Cimg8381 江國香織のファンタジックな小説、「ホテル カクタス」を読みおえる。

 集英社文庫、2004年・刊。

 検索(管理画面で)に拠ると、僕はこれ以前に彼女の本を、10冊(すべて文庫本の筈)読んでいる。

 ただし最近は読んでいなくて、直近で2013年11月24日の記事(←リンクしてある)で紹介した小説「がらくた」である。

 「ホテル カクタス」の主人公は、「帽子」と「きゅうり」と「数字の2」である。別にあだなではなく、そのままの振る舞いなので、また「です・ます」調の語りで、ファンタジックと呼ぶ。

 これは地方から都会に出て来た、3人の青年の出会いと友情と別れの物語と、受け取れる。

 しかし振り返られた物語の常として、「ホテル カクタス」が実はアパートであるように、デフォルメされ、あるいはフィルターをかけられている。

 それでも実に懐かしい物語である。

2015年4月21日 (火)

三浦哲郎「夜の絵」

Cimg8362 三浦哲郎の短編小説集「夜の絵」を読みおえる。

 集英社文庫、1979年・刊。

 単行本としては、1970年、三笠書房・刊。

 7編の短編小説を収める。

 温泉宿の女と客など、夫婦でない男女の交情と別れを描いている。

 「三角帽子」は3組の夫婦の話だが、不倫や性病の挿話が出て来て、僕は読まずに飛ばした。

 三浦哲郎(1931年~2010年)が、なぜこのような題材を描き続けたか、わからない。

 1族の宿命を描き続けて来て、晩年の「短編集モザイク」3冊等に至る、中年期の過渡期だったのかも知れない。

2015年4月18日 (土)

岡本かの子「金魚撩乱」

 Google Play Booksより「青空文庫」発でタブレットにダウンロードし、岡本かの子の小説「金魚撩乱」を読みおえた。

 3月22日の記事(←リンクしてある)で紹介した、「雛妓」に続き、同様にして読む岡本かの子の小説の9編めである。

 金魚生産家の養子になった復一が、その家の娘と結婚もできず、金魚の新品種育成に没頭するが、最後と思われた時に、偶然に理想とする金魚を見出すという、ハッピーエンドとなっている。

 女性の美しさを、金魚になぞらえるのは、いくら華やかに描写しても、無理があるようだ。

 1937年10月・発表。

Tyurippu3

サイト「フリー素材タウン」より、チューリップの1枚。

2015年4月 3日 (金)

サローヤン「ディア・ベイビー」

Cimg8339 ウィリアム・サローヤンの短編小説集「ディア・ベイビー」を読みおえる。

 ちくま文庫、1991年・刊。21編を収める。

 ウィリアム・サローヤン(1908年~1981年)は、アルメニア系のアメリカ移民の2世である。

 「わが名はアラム」「人間喜劇」「パパ・ユーアークレイジー」などの小説が有名だが、いずれも僕は読んでいない。読み始めても、とっつきにくい文体である。

 貧乏ゆえに自室で孤独に餓死する青年を描いた、「空中ブランコに乗った若者」がデビュー作となった。

 他に若くして死ぬ青年の物語「チェサピークの舟遊び」、文無しの人々を描いた「フランス絵葉書の男」などがある。

 文庫本で3ページに収まる掌編「はるかな夜」、「親愛なるグレタ・ガルボ様」もある。

 僕にとって、ウィリアム・サローヤンはまだ、謎の作家である。

 

2015年3月24日 (火)

「O・ヘンリ短編集(三)」

Cimg8315 「O・ヘンリ短編集(三)」を読みおえる。

 先の3月20日の記事(←リンクしてある)、「同(二)」に次ぐ。

 新潮文庫、1993年52刷。15編を収める。

 O・ヘンリ(1862年~1910年)のおもな創作時期は最後の10年間で、生涯に381編の短編小説を書いたとされる。

 再婚した妻ともうまくゆかず、ニューヨークのアパートで単身活動し、肝硬変で亡くなった。

 巻頭の「最後の一葉」は、僕が読んだうちで、最高の作品だろう。創作家は、1人を救えればよい。

 この「(三)」には、メルヘン調の作品が多いようだ。

 救いの王子や、ハッピーエンドの物語が、犯罪の要素を交えたりしながら、展開される。

 これは作者が幸せであった訳ではなく、危機の表現だったろうと考えられる。

 これで新潮文庫の、この3冊シリーズのしまいである。

 

2015年3月22日 (日)

岡本かの子「雛妓」

 Google Playブックスより「青空文庫」発で、タブレットにダウンロードし、岡本かの子の小説「雛妓」を読みおえる。

 先の2月25日の記事で紹介した、「河明り」(←リンクしてある)に継ぎ、同様にして読む彼女の小説の、8作めである。

 「かの子」という雛妓を親しみ憐れんで、夫婦で落籍しようとまで話し合ったが、その雛妓は他の地で芸妓になってしまう。

 雛妓から「十六の若さを奥様に差し上げます」という手紙を受け取って、岡本かの子が若さと、一族の家霊を表現するため、短歌より小説執筆を決意して、1編は終わる。

Photo

フリー素材サイト「Pixabay」より、椿の1枚。

2015年3月20日 (金)

「O・ヘンリ短編集(二)」

Cimg8312 「O・ヘンリ短編集(二)」を読みおえる。

 先の3月17日の記事、「同(一)」に継ぐ。

 新潮文庫、1991年52刷。短編小説15編を収める。

 ルーとナンシーのシンデレラ物語「手入れのよいランプ」、サクセス・ストーリーとも呼べる「うしなわれた混合酒」。二十年後に約束の地で会う友人二人が、一人は追われる犯罪者、一人は警官になっていた皮肉な物語。

 国と時代が違うからか、小説が世間離れしているように思う。何もリアリズムでなくとも良いが、メルヘンと呼ぶには生々しい。

 世間のエピソードや噂話を(実際、彼は世間にまじって、題材を得る事があったそうだ)拾い上げ、脚色して作品化したようだ。

 

2015年3月17日 (火)

「O・ヘンリ短編集(一)」

Cimg8302 古くからの蔵書より、大久保康雄・訳「O・ヘンリ短編集(一)」を読みおえる。16編の短編小説を収める。

 新潮文庫、1995年57刷。全3冊。

 カバーの裏に「庶民の哀歓とユーモアを描く…」とコピーがあって、身近な題材かと思った。

 しかし多くは、浮浪者、犯罪者、ワーキング・プアの世界だった。

 ハッピーエンドの物語もあるが、それは奇跡的な邂逅というべく、あまりにも作り物めいている。

 「よみがえった改心」は、自分の運命よりも、親しい家族の娘の命を選ぶ物語で、その結末と共に感動的だった。

 その(二)、(三)を読む予定である。

2015年3月 4日 (水)

色川武大「百」

Cimg8289 色川武大の短編小説集「百」を読みおえる。

 新潮文庫、1992年2刷。

 色川武大(いろかわ・ぶだい、1929年~1989年)は、阿佐田哲也のペンネームで、ギャンブル小説も書き、僕は文庫本でそれらも少し持っていたが、本を整理した際、それらは処分した。

 彼の純文学では、同じく文庫本で「離婚」、「引越貧乏」を読んだと記憶している。

 この本の「連笑」は、二人兄弟の、弟が生まれた時から、兄33歳、弟27歳までを描いている。二人兄弟にしかない、親密さを描く。

 「ぼくの猿 ぼくの猫」は、幼い時の猿や猫の幻影につきまとわれた話である。

 「百」、「永日」は、百歳近い老父の、衰えと老耄を中心に、母、自分、弟夫婦等を描く。

 フィクションはあるだろが、このような小説も佳い。

2015年2月25日 (水)

岡本かの子「河明り」

 Google Play ブックスより「青空文庫」発でタブレットにダウンロードし、岡本かの子の小説「河明り」を読みおえる。

 同様にして読んだ彼女の小説は、1月31日の記事(←リンクしてある)で紹介した「母子叙情」に次ぎ、7作めである。

 廻船問屋の娘が、店で働く青年(許婚者)に冷たくされるが、作者が一肌脱いで青年の立ち寄るシンガポールまで娘と出掛け、青年の内心を聞き取って、二人は無事結婚する、というストーリーである。

 私小説に見せかけたフィクションとして、優れている。

 彼女の肉感的なところ、アマチュアリズム(と受け取られる)が、彼女の作品への好悪感を分けるだろう。

 蔵書1万冊とうそぶいた(今はその半分くらいか)僕が、タブレットに無料ダウンロードした本を読んでいるのだから、いかに本が流通していないか、判るものだ。

Photoフリー素材サイト「Pixabay」より、白梅の1枚。

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